第7話主との会話

結局、キノコハウスの主に見つかってしまったぼくたちは、一階の部屋にすわらされていた。

『君たち、こんなに大勢で私の家に何の用事だったんだ?』

男は冷静に言ったけど、顔は本気で怒っていた。

「あの・・・、ぼくたちキノコハウスがどんなところか気になって、突き止めにきたんです・・・」

『ここは私の家とアトリエだ、そんなことで勝手に上がり込むなんて、恥ずかしくないのか?』

「でも、表札もないしこんな変わった家なんだから、気になるのも無理ないでしょ?」

武之内が開き直ると、男は怒り出した。

「だからって、他人の家に上がり込むな!」

「ごめんなさい!」

ぼくたちは同時にあやまった、すると男は静かにため息をつくとぼくたちに言った。

『まあ、表札を出さなかったのも悪かったしな。あんまり人目につきたくなかったからそうしたが、かえって逆効果だった。何も盗んでないなら、許してあげるよ。』

「本当ですか!!ありがとうございます!」

ぼくはそれから気になっていることを一つ聞いてみた。

「あの、二階の部屋に指輪と押し花のしおりを見つけました。あれは一体なんですか?」

『あれまで見たのか!?あれは文香ふみかの大切な思い出なんだ。』

「文香って、あなたの妻ですか?」

『いや、妻になるはずだった人だ・・・、もう亡くなったんだよ。』

男は悲しげな顔になった。

『売れない画家時代だった時に、おれの作品をほめてくれた大切な人だったんだけど、急に亡くなったんだよ・・・。とても悲しくて、立ち直るのが大変だったなあ。』

男の思い出に、ぼくたちは同情するしかなかった。

キノコハウスへのワクワクは、もうすっかり失くなっていた。


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