CentOS Stream9でサーバー構築
麗玲
前書き
はじめに。CentOS Streamとは? 対象の読者。お勧めの仮想化ソフト
◇CentOS Streamとは?
Red Hat社の公式サイトによると、「Red Hat Enterprise Linux に先行して継続的に提供されるディストリビューションを開発およびテストし、貢献できる、アップストリーム・オープンソース開発プラットフォーム。」とあります。
https://www.redhat.com/ja/topics/linux/what-is-centos-stream
Fedora→CentOS Steam→Red Hat Enterprise Linuxの順で開発され、無償で提供されるRHEL系パッケージのLinux OSです。
前身のCentOSはFedora→Red Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)→CentOSの順で提供されていました。有償で実績のあるRHELのダウンストリーム版を無償で使用出来た為、広く使用されていましたが、2021年12月31日にCentOS8のサポート終了に伴い、CentOS Steamへの移行が推奨されました。
24時間起動が基本のサーバーにおいて安定稼働を求めるのであれば、RHEL、あるいは無償で済ますにはRHELのダウンストリーム版のAlma Linux*が適しているかと思いますが、RHELに先駆けて検証を行うのであればCentOS Steamでも良いかと思います。
*RHELのダウンストリーム版として、Alma Linux以外にもRocky LinuxやOracle Linux、MIRACLE LINUXという選択肢がありますが、2022年5月17日にRHEL9.0リリース開始から僅か9日後の2022年5月26日にAlma Linux9.0がリリースされました。2022年6月13日現在で他のディストリビューションが9.0Betaですらリリース出来ていない現状では、CentOSの後継者レースではAlma Linuxの一人勝ちとしか言いようがありません。
◇対象の読者
・サーバー構築を勉強したい入門者。
・サーバー構築するにはどんな準備をすればいいのか分からない。
・ITエンジニアのキャリアがあるけどブランクがあって復習したい。
・PC仮想化の方法を知りたい。
・CentOS Stream9を試したい。
・LinuC又はLPICの勉強にサーバー構築を行いたい。
・サーバーエンジニアに転職したい。
多分こんな方が向いているかと思います。因みに私は3つ目と5つ目が理由で本稿を作成しました。又、CentOS Stream9以外にもAlma Linux9.0も検証を行っており、バージョンが異なるものの、ほぼ同等に操作可能なものが多いので、AlmaLinux9.0を学習したい方にも向いているかと思います。
構築するサーバーはLinuC又はLPICの出題範囲(Level2~3)から行う予定なので、これらの資格を受験予定の方が参考になる事があるかも知れません。一応当方も一昨年にLinuC level3 304 Virtualization & High Availabilityを取得しています。
PCの仮想環境で行う為、限界もあるのでクラスタリングや複雑な構成を伴う設定は行う予定は無く、安定的な運用を目指すのではなく、簡単な設定のサーバーで簡易的なテストを行う程度ではありますが、ご了承ください。
なお、例えば「DNSとは何ぞや?」と言ったネットワークの基本用語やIPアドレスの計算方法と言った基礎知識については説明しませんので、書籍やネットで自分でお調べください。
また、基本的なコマンドや操作方法の詳細の説明も省略します。
基本用語や操作方法から学びたい方はLPIやLinuCが提供している教科書が分かりやすいかと思いますので、そちらを参考にしてください。最低限viの使い方は熟知しておいてください。
・『Linux Essentials バージョン1.6 日本語版』
https://learning.lpi.org/ja/learning-materials/010-160/
・『Linux標準教科書』
https://linuc.org/textbooks/linux/
もし、上記のテキストの勉強から始める場合でも本稿でVirtualBoxのインストールと設定、CentOS Streamのインストールを行うので参考になるかと思います。
◇サーバー検証環境の昔と今。
かつて、個人でサーバー・クライアント環境の検証を行うにはサーバー用・クライアント用の最低2台のPCが必要な上、既存のOSを潰さないで別OSをインストールするには、ハードディスクの領域を分割してインストールするなどしないと使えないという面倒くさいものでした。
ですが、仮想化技術が発展し、VMWare PlayerなどクライアントPCでも無料で仮想化できるソフトが登場し、気軽に仮想化出来るようになると、一台のPCでも仮想化すれば複数のOSをインストール出来たり、簡単にサーバー・クライアント環境を構築できるようになりました。
仮想化するにはPC本体にもそれなりのスペックが必要なのですが、近年のPCはスペックも上がって来ているので、一台のPCの中でゲストOSを複数起動させる事も可能です。
また、近年ではクラウドの使用によりPCに仮想化ソフトをインストールしなくてもサーバー構築が行えますが、個人的なテスト環境にも関わらず何時の間にか無料の容量を超えて料金が発生していたなどという事にならない様に、先ずはPCを仮想化してサーバー構築を一通り経験してからクラウドにチャレンジするのが無難かと思います。
◇おススメの仮想化ソフト
WindowsのPCを使用する場合、仮想化に必要な代表的なソフトにOracle VM Virtual BoxとVMware Workstation Playerがありますが、前者の方をお勧めします。
理由は作成した仮想マシンのクローン、つまり一度作成した仮想マシンを一からインストールせずに複製が簡単にできる事と(一応VMWare Workstation Playerでもやる方法はありますが、若干手間がかかります。)スナップショットと言うスナップショット実行時まで仮想マシンの状態を戻す機能があります。スナップショットを利用すれば、スナップショット取得時の状態までリセットする事が可能なので、設定が上手く行かなかった場合に元の状態に戻したり、設定を変えたりして何回も検証を行う事も可能です。その為、断然Oracle VM Virtual Boxの方が便利です。
ですが、KVMサーバーやVMWareESXiなどを構築する場合などで、仮想化ソフトウェア上で CPU の仮想化⽀援機能を有効化する必要があるのですが、Virtual Boxのv6.132 では Intel Core i7 第 10 世代でチェックできませんでしたので、この場合はVMWare Workstation Playerを試しましょう。
ダウンロードは以下のサイトから行います。
・Oracle VM Virtual Box
https://www.oracle.com/jp/virtualization/virtualbox/
・VMware Workstation Player
https://www.vmware.com/jp/products/workstation-player/workstation-player-evaluation.html
注意点として、VMware Workstation Playerは商用利用の場合、無料で使用される事が禁止されている為、営利企業では使用する事が出来ません。会社などで検証環境を作成する場合はOracle VM Virtual Boxを使用してください。(正し、次稿で説明予定のExtension Packは商用利用出来ませんので注意してください)
自宅で個人的な利用をする場合はどちらでも構いませんが、本稿では基本的にOracle VM Virtual Boxの利用を前提としています。
次稿ではVirtual Boxを使用して実際にサーバー構築テストラボを作成してみます。
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