第1話 朝の時間

朝のホームルーム。鐘の音と同時に先生が教室に入ってきた。


「席につけー」


「・・・・・せんせー、今時そんなこという先生いないよー」


「おだまり」


「「みずたまり」」


「脂肪のかたまり」


クラスのみんなと先生の平和な笑い声とともに今日がはじまる。


わたしは苦笑しながら、離れた席に座るクスクス笑う誠君に目が向いた。


すると、


「ゆりー」


私の隣の席に座る、サッカー部のモテない方の男子、雄哉が「筆箱忘れたー」と半泣きで私を呼ぶ。ずうずうしくも筆箱忘れたから、貸してくれと頼んできた。小学校の時からの腐れ縁。昔からちびで、男女問わずにかわいいかわいいとおだてられて今日までやってきた。

わたしからすると単なる良い子という程度だった。嫌なやつではないし、確かに万人受けするタイプ。




”雄哉は私のことが好き”というのはクラスで噂だった。




ほんとかどうかはわからないけれど、本当ならうれしいよりも複雑だった。




わたしは、、中学に入学した時から、誠君が好きだったから。



中学に入学してはじめて人を好きになった。

無口なところも、スポーツに一生懸命なとこも、たまにみせる笑顔もまぶしくて、ずっと見ていたかった。ずっとみていられると思った。


わたしが誠君を好きなことも、みんなに噂になっていた。


誰かに言ったつもりはないが、私は態度にでているらしい。


あー今日も一日、誠君を眺めていられるー。

勉強は嫌いだけど、学校は好き。だって誠君がいるから。毎日学校へ行くのが待ち遠しいくらい。夏休みなんていらないくらい。


正直なところ、雄哉とは小学校の時から一緒で一度も告白されたことがないので、私は半信半疑だった。

もし好きでいてくれるなら、思わせぶりな態度をとらないよう気を付けていた。


「あ、そう、次から気を付けて」


友達としては普通に好きだし、さすがに貸してやらないのはかわいそうなので、邪険にせず、渋々貸してあげた。


「ありがとー」犬みたいにコロコロ喜ぶ。


私が誠君を好きなのは多分雄哉もしっている。気まずくないところをみるとたいして私のことは友達として好きな程度と思っていた。





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