ニートテイマーのプラべダンジョン攻略
雪山 トオル
第一章 我が家にダンジョンが出現した
第1話 ニート木島剛士
木島剛士(きじまたけし)はニートである。
大学中退。
年齢イコール彼女無し。童貞。
中肉中背の面倒くさがり屋なダメなニートである。
ある日の昼下がり。
自宅の二階に自室を構える木島剛士は、床でゴロゴロと寝ころび、鼻くそをほじりながら漫画を読んでいた。
「ぶっひゃひゃひゃ」
誰もいないことを良いことに、汚い笑い声をあげ、寝返りを打つ。
日がな一日惰眠を貪るのが、今の剛士の仕事だ(多分違う)。
読み終えた漫画を乱雑に置き、今度は携帯ゲームでも始めようかと立ち上がった。
「剛士~~~!!!」
どこからか剛士を呼ぶ声がする。
窓を開けて家の庭を覗くと、家庭菜園の手入れをする母がこちらに手を振っていた。
「はぁ~~~」
急激に不機嫌になった剛士は顔を歪めながらも二階の自室の窓を開ける。
「なにッ!!」
思ってた以上に鋭い声が出たのに剛士自身が驚いていた。だが、母は何食わぬ顔で、おいで、おいで、と手を動かし続けていた。
「ちょっと、来て来て!! なんか変なのがあるのよ!」
「変なの???」
虫か。蛇でも出たか。
それとも見知らぬ動物のフンでもあったか。
でも、それだと変なのとは言わないか。
どうにも興奮気味に叫ぶ母を見て、仕方なくも剛士は階段を降り、外用のスリッパで庭へと向かった。
「あちぃ~~」
夏らしい日差しが燦燦と降り注ぐ。
熱風が顔面を直撃し、蝉の鳴き声が嫌に耳に響く。
家の脇にある通路を通り、他の家より多少広い庭に出る。
そこでは瑞々しいトマトとナスが剛士を出迎えた。
実ってる。
滅茶苦茶立派だ。
「剛士! こっちこっち」
剛士が家庭菜園の出来に感心していると家庭菜園の先にいた母が、草木の向こうで手を高速に振っていた。
「へいへい」
再びの母の呼びかけに気怠く答えつつ家庭菜園の中を突っ切っていった。
「ちょっと、折ったり踏みつぶしたりしないよう気を付けてね!」
「へ―い」
母の注意にめんどくさげに返事を返すと、すぐに件の場所に行き着いた。
しゃがんで何かを見ていた母の横に並んで、剛士もそっとその何かを覗いてみる。
「あっ」
そこには、雑草の生えた地面の上に渦の様な黒い闇があって、思わず声が上がった。
完全に見覚えがある。
と言うか、今や滅茶苦茶有名な代物が木島家の庭に生じていた。
「母さん、これ……ダンジョンだ」
「ダンジョン!!??」
ポツリと呟いた剛士の声に対して、母の声は、それはもう近所中に響き渡るほどの叫び声だった。
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