第100話 ラテルへ
ドルフたちだ!
警戒しているラルドさんたちへ大丈夫だと伝えるため、私は嬉しそうに鳴いたりソワソワと落ち着かない様子でうろうろしたり、彼らの元近くへ行って全身で喜びを示した。
最初は近づこうとしてラルドさんに止められてしまった。
しかし、はしゃぐ私を見たラルドさんはやがて止めなくなった。その代わりにじっと私たちを見て様子を窺っている。
近づいてきた私を見たドルフは大きな鳥から飛び降りた。
4mはあったものの、問題なく着地すると私を抱きしめてくれた。
「ラナ、無事で良かった。ウォルダムへ連れていかれたと聞いた時は驚いた」
ドルフのもふもふさが懐かしい。
私はクルクル鳴いてドルフに体を擦りつけた。
その間に大きな鳥たちが地面へ降り、他の人たちもやって来た。
「テバサキ、頑張った!」
「あぁ、ありがとなテバサキ」
ローレンさんの元へテバサキが飛んでいく。そのまま彼の差し出した腕へ着地すると頭を撫でられ、おやつをもらっていた。
「大丈夫かラナ? どっか怪我してたりしないか?」
しばらくドルフに抱きしめられた後、名残惜しくも離された私はジナルドから怪我はないかなどを調べられた。
「良かった。怪我もないし健康そうだ」
ホッとした様子で小さく息を吐いた後、彼も私を抱きしめ頭を撫でてくれた。
嬉しくてクルクル鳴く。
「もし……もしラナが野生に返っていたらどうしようかと。ラナはラナだな」
ジナルドは様々な生物に詳しい。
だからこそ不安も大きかったのかもしれない。
ガルたちだったら普通に人を襲っていた恐れもある。
実際、ギルは人間を食べてみたいって言ったことあるからね。ジナルドの不安は良く分かる。
「分けも分からず知らない場所へ1匹で放り出されても、人を助けるほどラナは優しい子だからな」
それについては持ちつ持たれつなんだよね。確かに怪我をしたバートさんを乗せて村へ送ったけど、友好的に接したら保護してもらえるかもしれないという打算もあった。
だから100%の善意で助けたみたいに言われるといたたまれない気持ちになる。
『シロ、帰ろう。おチビちゃんの家族が迎えに来たんだ』
それまでずっと私たちの様子を窺っていたラルドさんがシロさんへ言った。
シロさんはしばらく沈黙した後に了承した。
『引き留めはしません。ですが、チビさんが無事に住処へ戻るまで見届けます』
その言葉の通り、シロさんはラテルへ向かう私たちについて来るようになった。
もちろんラルドさんは止めようとしたんだけどシロさんは頷かなかった。
リオルさんがシロさんたちの会話をこっそりドルフとジナルド、エリックさんへ伝えてくれたこともあり、シロさんの好きなようにさせることとなった。
一緒に来ていた知らない人は、エドニーさんと言うゾニアーノの騎士団所属の魔法使いだった。
私たちは陸路で、ジナルドだけは空路で一足先にラテルへ戻る。
3時間ほどでゾニアーノへ到着した。
ゾニアーノにはカイルや他の騎士数名がいた。ラテルの紋章が入った鎧を着ていないからちょっと見慣れないけど、皆に会えて嬉しい。
その翌日、ローレンさんとアントンさん、アルさんがお別れの挨拶をしに来てくれた。
「飼い主に無事会えて良かったなラナ。元気に過ごすんだぞ」
そう言ってローレンさんは私の頭を撫でてくれた。
「ラナのこと、何から何までありがとうございます」
「いえ、ラナはじいちゃんを助けてくれましたから。これくらいどうってことないですよ」
その後、アントンさんからは「元気でね」と言われ、アルさんには無言で体を撫でられた。
あれ、解散する流れだけど、アントンさんはリーセディアへ来たいって言ってなかったっけ? いつかって意味で今じゃないのかな?
そして、私たちはラテルへ向かって出発した。
ラテルへの道のりはめちゃめちゃ平和だった。
そうは言っても、全く何もなかったわけじゃない。
馬車の車輪が壊れて困っている商人さんがいた。替えの車輪は用意していたのでそれを替える手伝いをするだけで馬車は動くようになった。
お礼として商品である果物や干し肉をいくつかもらった。
商人のおっちゃんには怯えられた。
次に、熊に食料を食い漁られ困っている冒険者パーティーがいた。
熊は人を襲っていた個体でその時には討伐済みだった。
お金は残っていたのでいくらか食料を売って彼らとは別れた。
冒険者たちには大層珍しがられた。
その次に顔見知りの冒険者コンビと出会った。
軽い会話をしてから別れる。
彼らには頭を撫でられた。
その間もずっとシロさんは地面を歩きながら私たちについてきていた。
付かず離れずで距離はそれなりにあったけど、まぁ目立つよね。
町が近くなるとシロさんは上空から様子を見るようになっていた。
そのおかげもあって騒ぎにならず済みそうだ。
そしてラテルへと到着した。
ジナルドやガルたちに迎え入れられる。
『いきなり消えて心配したんだぞ。その様子なら大丈夫そうだな。良かった』
『何か美味しいものはあったか?』
『どうやって一瞬で消えたの?』
ガル、ギル、グルがそれぞれ言う。
それに返事をしながら進む。
敷地内へ入ると庭で草を食べていたルナが私の方へと走ってきた。
かがんだ私の背中にルナが飛び乗る。
もふもふな感触が素晴らしい。
「おかえり、ラナ」
『ただいま!』
私は微笑むジナルドにそう答えるのだった。
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