第073話 いよいよ対面
今話し合うようなことじゃないからとシークくんとの会話は一旦終わりとなった。
一応は施設の場所を聞いたけど、このまま彼に戦わせるのは怖いからと戦闘には参加させないことに決まった。
「あれです」
森を進むと木々の隙間から1軒の石造りの家が見えた。1辺が20mくらいありそうな正方形の家だ。高さは5mくらいある。窓や扉もあって、扉は木製に見える。私たちが見えているところが正面だとすると反対側にも同じような扉があり、こっちかそちらが裏口なんだろう。左右に扉はない。
魔法が使われているような反応はない。
怪しいのは、床の1ヶ所に地下へ続く階段が隠されていることだ。地下は結構深いみたいで階段が続いて15mくらい下がってから真っすぐに通路が続いているようだ。生き物や魔法の反応はない。
通路は30mくらい続いていて、突き当たりには両開きの木製と思われる扉がある。その扉の前には石の壁があって通路から見たら行き止まりに見えるだろう。
うん、隠し扉だよね。
廊下の左側には1つの扉があり、その扉は階段を下りたすぐの場所にある。その扉の先には机と椅子、右手に扉が1つある。机の上には何枚もの書類、モニターを連想させる四角型の薄い板のような物。
そして扉の先には、中央に机が置かれて1枚の紙が置かれさらに次の部屋へと続く扉がある。それが2つ続き、最後の部屋には机と紙だけが置かれていて扉はなかった。
もしかして、ここはシーナちゃんが最初に目を覚ましたっていう部屋かな?
次に通路の右側も見てみよう。こちらには4つの扉が等間隔で並んでいてその先の部屋はそれぞれ独立している。どれも図書室のように本棚と本が大量に並んでいる。
廊下にはおかしな仕掛はなさそうだ。
通路の突き当たりにある部屋は他の部屋と違って10m四方の広さがあって高さも5mくらいある。何か置かれているというわけではなくただ広い部屋だ。
地下はこのくらいかな。
1階の区切られていない大部屋には人の反応が3つある。1人と机を挟んで2人が対面に座っている。体内に魔石がある人はいない。
1人の方は持っている魔力が多くて魔族くらいにはありそう。2人の方も魔力は多い。特に右側にいる女性の魔力は隣にいる男性より数倍は多い。
馬の反応も3つあって部屋の隅で立っている。
「準備はいいでしょうか?」
ローレンさんが返事をするとシークくんは扉に近づいてノックをした。
「シークです。お客様をお連れしました」
「入ってもらってください」
シークくんが扉を開ける。
扉の奥には机を挟んで対面に座っている1人の男性と2人の男女の姿が見えた。
コップもそれぞれの前に用意されている。中身は減っていないようで紅茶らしく見える液体が並々と入ったままだ。
まぁ、こんな状況で出された飲み物なんて飲めないよね。
「さ、どうぞ」
促されるまま私たちは建物の中へ入った。
罠がないとは言えないけど、それは建物の外にいても同じ気がする。
というか私たちも入っていいの?
何も言われてないし、馬もいるからいいんだろうけど。
床には2mくらいの正方形のタイルが敷き詰められている。
建物の中央には木製の長辺が5m、短辺が1mくらいありそうな机が置かれていて椅子も等間隔で並んでいた。長辺には5つ、短辺には1つの椅子が置かれていて、座っている人たちは長辺の中央で向かい合って座っている。
机の上には1つのポットが置かれていた。
その机から少し離れたところに食器棚や蓋がされた壺が置かれている。それ以外は特に何も置かれていない。壺には水がたっぷりと入っていた。
地下への階段は敷き詰められた1枚のタイルの下にある。パッと見た感じだと他のタイルと同じように見えるので知らないと探すのは面倒臭そうだ。
ローレンさんがシーナちゃんを私から降ろす。タタさんが近づいてきて彼女をお姫様抱っこした。ローレンさんが抱えた時と違って少し恥ずかしそうに見えた。
アントンさんに手綱を引かれて指示に従って待機する。馬も私たちの近くで待機させられていた。
テバサキは私の背中に乗った。
「疲れた顔してるな」
タタさんが2人組へ声をかける。
「やりづらい」
彼は眉間に皺を作りため息交じりに言葉を吐き出した。
20代後半くらいで鎧を着て剣を腰から下げた男性だ。程よく筋肉が付いた細マッチョという体型で橙色の短い髪に緑色の目をしている。
「考え方とか価値観が違いすぎて異界人と話してるみたい」
20代前半の緑色のローブを着た女性も男性に続いて答えた。細身だけど女性としては背が高いスレンダーな体型だ。薄い紫色のボブに紫色のたれ目をしている。
やや間延びして何だか眠そうな話し方だ。
ところで異界人って何?
宇宙人と似たような使われ方をしてるような気がするけど実在しているのか、実在している前提で未確認なのか、あり得ないとされるようなお伽噺的な存在なのかどの程度の意味があるのか気になるところだね。
もしいたら会ってみたいな。
「私なりに伝わるよう工夫しているつもりなのですが、なかなか難しいですね」
2人の対面に座っていた男性が困ったように眉尻を下げて苦笑いをした。
「改めて自己紹介をさせていただきます」
男性は椅子から立ち上がりタタさんたちの方へ向き直った。
30代前半ほどの銀髪の長髪を後ろで1つに束ねており、目は緑色だ。切れ長の目に高い鼻という非常に整った容姿だ。何を考えているか分からないミステリアスで色気のある雰囲気で白衣のような真っ白なコートを着ている。
「セオロアと申します。この施設の管理兼責任者であり、あなた方と一緒にいるシーナやシークの製作者です」
そう言って彼はお辞儀をしてからそのまま数秒ほどキープして上半身を起こした。
その流れで代橙色の髪の男性がアルバーノさんで一緒にいた薄紫色の髪をした女性がミランダさんだと名乗った。
ローレンさんたちも自己紹介を行う。
「長い話し合いとなるでしょう。どうぞお座りください」
彼の浮かべた微笑みはとても穏やかだった。
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