第038話 再会と相談と【悪魔憑き】
本日、18時に02章の番外編として「レスターとマルコス」を追加しました。
03章と直接的な関わりはないので読まなくても問題はありません。読んだら上記の2人についてもう少し分かるかな、という感じです。
なお文字数は約3,800文字とこれまでの話で最長となっております。
※このコメントはしばらくしたら削除します。
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「そのククルクという神官はなぜリステラの言葉が分かったんでしょうね」
情報を共有し終わりレスターさんとマルコスに武器が渡った。2人が試しに剣を振ったりしている時、ハウロさんは不思議そうに言った。
「そりゃあ、【悪魔憑き】だったんでしょ。それで神官って凄いよな」
「その言い方は止めろ。差別用語だ。言うなら【恩恵持ち】だ」
事もなげに言ったマルコスはその直後にレスターさんから注意されていた。
悪魔が本当に憑りついているのか、存在しないけど不吉の象徴としての悪魔なのか分からないから気になるところだ。
「あれ、そうでしたっけ? へー、そんな言い方に変わったんですね」
さっきの言い方にも悪意はなかったし、知らなかったのかもしれない。
気になったのは、【悪魔憑き】という単語をマルコスが出した時にリオルさんが小さく息を飲んだことだ。
ディナルトスって耳が良いんだよね。気になってリオルさんの方を見てみると様子は普通はそうだった。
「ええと、その【恩恵持ち】っていうのは?」
「どういう理屈か分からないけど、多種多用な言葉を理解し話すことができるんだ。それまでに聞いたことのない言語でもね」
おっと? 何だか身に覚えがある話だね。
もしかして私って【恩恵持ち】だったのかな? いやでも、言葉は分かったとしても通じた経験はほぼないよ?
「だから神官ククルクもそうなんじゃないかってこと」
へー、とハウロさんは興味深そうに聞いていた。
コホンとドルフが咳払いをして話が戻った。
町へ入るにはリステラ症候群のリスクがある。私たちと一緒にリステラ本体を探すか、町から少し離れたところで待機してラテルを訪れようとしている人たちに事情を説明して迂回してもらうか、そのどちらかを手伝ってもらえないかとドルフは提案した。
「現状だとリステラを探すのはドルフ殿とエリック殿、リオル殿だけですか? 不確定とはいえ、3人だけで向かうのは危険かと思うのですが」
レスターさんはうーんと唸り、難しそうに眉を寄せながら言った。
「エリックさんて召喚術を除くとどれくらい戦えるんですか?」
マルコスがエリックさんに尋ねる。
召喚術士ってイメージとしては召喚獣に前衛を任せて後衛に控えながら指示を出して戦う、って感じなんだけどどうなんだろうね。
プラチナ級なら本人も強いのかな。
考えていて思い出したのは、身体強化もなくお城の3階から飛び下りて地面に着地した彼の姿だった。
うん、たぶんだけどエリックさん自身も結構戦えるんじゃないかな。
「剣と弓矢と魔法ならシルバー級、冒険者で言えば一人前くらいには動けると思います」
何だろう、勝手なイメージだけどエリックさんなら一人前以上に動けそうな気がする。
「だったら俺とハウロがドルフさんに同行するんで、レスターさんは事情説明ってことで」
ニコニコと微笑みを浮かべてマルコスが言った。
えー、マルコスがついてくるの?
「待て待て待て」
「メンバー的に魔法が使えるハウロは外せないでしょ? それから指揮に慣れてるレスターさんがラテルに残る方が何かあった時にはいいと思ったんですが、おかしいですか? ディナルトスの空き的にも同行できて2人ですよね?」
レスターさんが止めようとするもマルコスは平然と言った。
何でマルコスが言い出したのかは分からないけど、理由自体は納得できるものだった。
だからか、レスターさんも反論できずにいる。
「じゃ、そういうことでお願いします」
「レスター殿?」
最終確認のためとドルフがレスターさんに問いかける。
レスターさんは少しの沈黙の後で頷いた。
んー? 何かマルコスの行動が少し変?
自己紹介のテキトーな感じはマルコスらしい。でも、上司であるレスターさんがいる状況でどう動くかを提案するようなイメージはない。上司を上司と思ってなさそうな態度はそれっぽいけど。
護送任務の時も自分から何かを提案するっていうことはなかったような気がする。まぁ、あの時より人数も少ないし状況も違うからそれが理由かもしれない。
そんなことを考えていると、誰がどのディナルトスに乗るのかという話になった。
「ガルはプライドが高く、気に入らない騎手を振り落とすことがあります。ギルは気まぐれで気分によって振り落とそうとすることがありますが、ギルの場合は食べることが好きなので餌である程度は宥めることができます」
ドルフとリオルさんは私とグルで変更なしだ。というのも、ドルフは相変わらず他のディナルトスから苦手がられているし、非戦闘員のリオルさんは振り落とされたら受け身もとれずに大怪我をしてしまうかもしれないからだ。
私が彼らを振り落とされないように言えば、ガルたちはそうしてくれるかもしれない。でも、ガルたちにとっては自分たちにどういったアプローチをするか、力量を見る機会にもなっているからあまり言いたくないんだよね。
ディナルトスがどうかは分からないけど、人間だったら命令で仲良くするように言われても反発したくなるものだろうから。
信頼を築くための1歩として、彼らのやり方に任せよう。
「だったら俺がガルに乗ります」
話し合いの結果、マルコスがガルにハウロさんがギルに乗ることとなった。
ハウロさんはドルフからの助言も受け、ご褒美用の餌を使って騎乗することができた。
問題はガルの方だったんだけど、マルコスがガッツを見せて暴れるガルにしがみついていた。暴れることを止めたガルを少し走らせ、力量も認められたようだった。
その後はひとまず合格だと言わんばかりの態度を見せつつガルは言うことを聞いていた。
前に私が乗せた時は微妙な腕前だったんだけど何だったんだろうね。見ていただけだから気のせいかもしれないけど、試乗会で私に乗った時よりも明らかに手綱の扱いや体重移動なんかが上手く見える。
「いやー、ほんとプライド高いですね、この子」
苦笑いしながらマルコスはガルの首付近を撫でた。
ガルは気安く触るな、と言うようにグルルルルと低く鳴いた。
マルコスが慌てて撫でるのを止めて「ごめんごめん」と軽く謝罪をする。
「それじゃあ行ってきますね」
それぞれのディナルトスに乗り終わってからマルコスはそう言ってレスターさんに手を振った。
魔力節約のため範囲は狭めて探知魔法を発動させる。
「ラナ、頼むぞ」
「ククッ」
ドルフの言葉に返事をしてから私は走り出した。
地平線の向こうへと消える太い魔糸を辿るように。
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