第004話 襲撃者確保

 向かってくる魔物を結界に閉じ込めながら廊下を駆ける。


「わ、私たちどこへ連れて行かれるんでしょうか」

「分かりません。ですが彼らから敵意を感じません。魔物に襲われないのも恐らく彼らのおかげ。ジナルドさんが大切にしている彼らのことを信じましょう」


 不安そうなメイドさんと彼女を元気づける騎士さん。

 この信頼にはしっかりと答えたい。


 ようやく姿の見えたドルフは槍で魔物と戦っていた。人よりも大きな体格で人型、肌の色は緑色だ。手には大きな棍棒を持っている。

 まだ距離があり結界を張れる位置に彼は居ない。一直線だったこともあり私は全力で走った。


 魔物がドルフに向かって棍棒を振り下ろす。私はドルフを結界で覆った。ドゴンという鈍いがして棍棒が結界のある場所で止まった。

 うん、この攻撃ならずっと叩かれても大丈夫そうだ。


 ドルフは後方に跳んで棍棒の攻撃範囲から外れていた。

 結界の意味は無かったけど彼が無事ならそれでいい。


 勢いあまって魔物を通りすぎて魔物の背中側にいた私は魔物の注意を引きつけるように大きな声で鳴いた。


 魔物は私の方を振り返ろうとしてすぐにドルフへ向き直ってしまったが、ドルフにとっては十分だった。

 一瞬ではあっても見せた隙を突いてドルフは魔物を仕留めた。ドルフが倒れた魔物の横を通って私たちと合流する。私の上に乗せたいところだけどすでに騎士と少年、ルナがいて定員オーバーだ。

 それを察したギルは物凄く嫌そうにしながらもククッと短く鳴いてさっさと乗れとドルフに近づいた。ドルフにも身体強化と硬化をかけておく。


 ドルフが魔物の棍棒を弾いた魔法にお礼を言うも、騎士とメイドさんは自分たちではないと言った。


「今のはラナがやったのか?」


 メイドさんに断りを入れて彼女の後ろに乗ったドルフがそう尋ねてくるが私は何も答えない。


 ワタシ、ドウブツ。コトバ、ワカラナイ。


 というわけで急ごう!


 魔物の大群が向かっている場所へ騎士らしき人も集まっている。しかし魔物の量からすると不安がある。


 お偉いさんがいると思われる場所は4階。ここは1階。

 私は一旦、城の外へと出た。


 やったことはない。高いところは怖いから。

 でも、やるしかない。


 私は空中にいくつかの結界を作った。透明だと自分でも分かりにくい上、ギルが踏み外してしまう可能性もあるので薄緑色にしてガラスのように視認できるようにした。それを足場にして飛び移りながら4階のバルコニーに飛び乗った。


 メイドさんの怯えたような声が聞こえる。それでも彼女は堪えているのかくぐもった声を上げながらも大きな声は出さなかった。

 ギルが私の隣に着地した時、片腕でドルフに支えられたメイドさんの顔色は青かった。


 もう少しだと思うから頑張って!


 私はメイドさんにエールを送ってからバルコニーのガラスを割って適当な部屋に入った。扉も体当たりで突き破り急いでお偉いさんが居ると思われる場所へ向かう。


 身体強化を発動していることもあり魔物たちよりも速く到着できそうだ。

 でも安心するのはまだ早い。何か起こる前に急がなきゃ。


 私たちは頑丈そうな両開きの扉の前に到着した。ドルフがギルから降りて扉をノックし名乗る。

 少しのやり取りの後、扉は開いて私たちは中へと入れてもらえた。


 私に乗っていた騎士が少年と共に降りる。


「パパ!」


 騎士に抱えられた少年がお偉いさんに抱き着く。

 お偉いさんは少年を抱きしめた。


 少ししてからドルフが騎士に囲まれたお偉いさんに現状の説明を行った。


 どうやら近くにあるダンジョンから魔物が外へ溢れてくるスタンビートなる現象が起こっているという。そのスタンビートのタイミングと同時に邪神信仰の組織が動いて町を攻撃しているのだとか。

 彼らは上位の魔物を召喚したりしているらしいという話も聞こえた。


 そこへ魔物を率いた組織団員らしきローブの人物がやってきた。扉を破壊して部屋へと乗り込んでくる。


「皆殺しにしろ!」


 前口上は不要とばかりに魔物に指示を出す。声的に男だろう。


 とりあえず結界をかけておこうと自分たち以外の魔物が入れないように条件を指定して結界を張る。

 見えないと何が起こっているか分からないため今回も結界に色を付けた。


 魔物たちは広がっていく薄緑色の結界に弾かれて部屋の外へと押し出される。が、設定した条件が魔物だったためローブの男が残ってしまった。


 うっかりうっかりと結界の条件を変える。

 条件に『ローブを着た人物を結界内に入れない』を追加した。


 ローブの男が結界の外へと弾き出された。


 とりあえず逃げられないようにローブの男を結界に閉じ込めておく。


 ローブの男が炎の玉を結界にぶつけたり、魔物が私たちを覆っている結界へと攻撃してくるが結界はびくともしない。

 どうやって彼らを無力化すると考えていると結界の中にいる騎士たちが何人か魔物へと向かって行く。


 じゃあ彼らに任せるかと身体強化や硬化をかける。


 ドルフはお偉いさんの近くで護衛をしている。


 魔物は倒され数を減らしていき、逃げようとするローブの男も結界に閉じ込めた。


 城の内部にはまだ魔物は残っているが、他の騎士によって数を減らされている。桁違いの魔物がいきなり現れたりしない限りはこの結界の中にいたら大丈夫なはず。


「この結界はどれくらい持つものなんだ? どうやって張った?」


 お偉いさんがドルフに問いかけている。


 き、気になりますよねぇ。うわどうしよう。

 ……あ、いや何もしなくていいのか。どうせ喋れないし。

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