第11話 本業編 近くて遠い機械化
地獄のモンブランから二日後。
時刻は6:17。
ヒカリは山陽自動車道を走っていた。
行き先は兵庫県たつの市。
「神戸と名古屋の港ってどこが違うんだろ…。」
ピンとこないかもしれないが兵庫県姫路市の隣で有名な素麺の産地。名古屋から3時間弱で新名神高速道路神戸北JCTから岡山方面に向かう。標高が高い山が多いが神戸からトラックが走りやすい広い道路が広がっており、播磨JCTが平行して通っている山陽自動車道と中国自動車道を、中国縦断自動車道姫路鳥取線(播磨自動車道)で繋いでいる。
今日はそのたつの市の工務店に納品だ。
荷物は500キロのパレット3枚。名古屋港から輸入した鉄柵をツクモ工務店で加工・検品した物。荷受けがフォークリフトで卸してくれるので、やることは雨避けのシートを被せることと運転だけである。運転距離もそこそこなのでドライバーに美味しい仕事だ。
「私はありがたいけど…。」
基本的に輸入品は輸入した直後が1番安価であり、倉庫や運送会社、時間と距離を隔てるほど余分な経費がかかる。輸入→消費者までの最短かつ最少の手順でいくのが理想だ。他の運送会社が間に入らなければ取次の手数料も無い。
「そろそろコーヒー飲みたいかも…。」
運転を始めて2時間半、喉の乾きとともに脳味噌が糖分を欲しがりだした。
今日は荷降ろしは倉庫スタッフがやってくれるので今日のヒカリの仕事は運転だけで気楽なものだ。
この気楽な仕事も、昨日の食品工場と同じように、いつか無人の自動運転になると心配されるている業界だ。
しかし、改めて自分で運転していると、現場の事情が簡単には赦してくれない職種だと痛感する。
主要な高速道路は老朽化して何かしら工事や通行止をしているし、蛇行運転やながらスマホもちらほらいる。特に最近はウインカーのタイミング滅茶苦茶な車も多い。
下道を走ればこちらも老朽化の工事やら通学路やらノーヘル自転車やら電動キックボードやら…。
ぶっちゃけAIに人間の行動予測は早い。最先端のAIも斜め横断やルール無用の奇行まで判断はできない。
AIが本気出す前に人間に説明書(法律)が要る。
「なぜそこに乗用車…。」
コーヒー休憩のために入った淡河PA。
神戸市より先へ行く車中泊ドライバーに人気の施設が充実した大型PAだ。深夜から早朝のこの時間は車中泊している車やや時間まで待機しているトラック満杯である。
当然駐車レーンが足りなくなってくると通路に止める車も出てくる。
狭い通路を歩行者と死角に注意して徐行しながら空いている駐車レーンを探す。このとき、駐車場から出る最中のトラック鼻っ柱に自分から衝突しに行くカタチなのでとても気を使う。
そして空いていると思ったトラック駐車レーンにいきなり駐車してはいけない。
ハンドルを切ったら最後、そこに乗用車が停車していたら普段から危険な後方移動が、歩行者と後続車と通路に停車した車に神経を擦り減らしながら回避しなければらないのだ。
これを徐々に機械化して解決すんの?
案の定、トラック駐車レーンに乗用車が止まっていた。ここまで酷いとわざと死角に入ってるのではと思う。
ヒカリは仕方無く、ハザードを点けて駐車レーンの後ろの通路に停車し、急いでお手洗いとコーヒーの自販機に向かった。
ホントスミマセン、スミマセン…。バックで出る人にはごめんなさい。
トラックと荷物に問題が無いのを確認し、再びエンジンをかける。
昨今は「明文化されてないルールは守らなくていい!」「分かりにくいルールは無いも同然」とメディアで騒がれる機会も多くなったがこの場合、ルールが無いからモラルが育つのか、モラルがあればルール無用なのか。
どちらにせよ、あらゆる仕事には役割と区切り、そして終わりがあってようやく利益になる。
昨日の工場はファンタジー食品がマネジメントして人材育成と教育をしたら解決するだろう。ルールを守らない人を切り捨てることだってできる。
でもトラックは?
きっと、運送会社だけじゃ無理だ。
トラックを買い替え、スケジュールを換え、取引先と連携して………。むしろ真っ先にしわ寄せが来る側だ。積込み予定時間から3時間遅刻されても残業代出ない業界だ。
まさに豊橋さんの言葉通り、『昔より機械化が進んだとはいえ、それは工場も同じ。環境がアップデートしても人も同じようにアップデートしないと社会がまわらないの。仮にヒカリちゃんの作業を機械化したら、その前後の作業も機械化するか増員して…あと、材料の手配と配送トラックの手配も変えないとね。』である。
私達の仕事からどこかの会社やネットワークのアップデートに繋がると信じて今日も安全運転である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます