第5話 日常編 文明は偉大

 9月初旬。アルバイト面接から数日。

 採用されたはいいものの、実際に給料が入ってくるのは10月からだ。

 それまでは手元の資金でやり繰りしなければならない。最悪の場合、来月分も減る可能性もある。

 まずは現状を把握。


☆必ず現金で確保しなければいけない項目

『家賃・駐車場』 ¥34,500

『光熱費』¥15,000

『通信費』¥10,000

『ジム』 ¥8,500

『クレカの引き落とし』¥48,500

・合計 ¥108,000

・今月の手取り¥129,401


☆『雑費』『小遣い』『その他』

¥129,401-¥108,000=¥214,01

※保険料は年払いなので除く。








8月26日夕方。

「ほぼ使いきり…(冷汗)。」

 無駄遣いしすぎ、というわけではないと思う。思いたい!(泣)。

 クレカは車のガソリンや米などの食費、日用品、雑費などを必要なモノはしか買ってない。

 普段の手取りなら貯金もできるのに!(泣)。

「強いて言えば…惣菜や仕事先でのコンビニ利用が多いくらい?仕事柄、普通の人より多いけど。毎日菓子パンってわけにもいかないしなあ…。」

 できるだけスーパーで調達するようにしているが、利便性でコンビニに頼りがちだ。特に惣菜パンは圧勝。

「でも現金無しで仕事するのもなぁ…。」

 はぁ~と、ペンを机に放り投げる。

 時代に逆行する話だが、『ドライバー』という職業は現金必須だ。未だ全国各地に現金支払いのみの有料道路、自販機もキャッシュレス非対応が存在する。

 しかも地方で自分の銀行カードが対応しているとも限らない。仕方なく仕事中は持ち歩いているという状態だ。

 なんにせよ、次の給料日までこの『2万円』は仕事と有事の時のために『現金』で残さなければならい…。

 『お金は使うと無くなります。』

 当たり前のことである。が、実際にキメ台詞にした漫画がある。経済の根本的理論。

 むしろよく2万も残ったな!!

 現金は使えない、かといって給料が減っている以上、クレジット決裁の割合も減らす必要がある。

 とにかく働いた日に使わなければ、1日の収支はプラスになる

 まずやるべきことはノーマネーデー!

「そうなってくると、削れるのはコンビニと惣菜か~。全部は無理でも少しくらいは…!」

 ガタンっと勢いよく立ち上がりキッチンに向かう。

「米びつは~?半分?後で冷凍ごはんにしようかな。冷蔵庫はこの間買ったから10日間は大丈夫なはず。冷凍は…、開封済みのホウレン草とネギだけか。あとはパックごはんと、乾燥わかめと椎茸あるっと…。」

 ガバっと冷蔵庫を開けて献立を練る。

 料理の時間を割けないときのために買ったチルドハンバーグやパック煮豆。不足しがちな野菜も袋入りサラダでバッチリ。

 こいつらはできるだけ温存して賞味期限が短いミニ豆腐と卵を消化しなければ…。

 豆腐サラダと卵かけご飯にして、残りは冷凍煎り卵にしよう。

「今さらだけどw買いすぎ(笑)。」

 タイムセールで買った大量のタマネギとニンジン。薄く切ってポリ袋に入れてレンチン→そのまま冷凍が我が家のやり方。切るのは大変だが、過熱してから冷凍すると青臭さが消えるうえに調理時間も短くなるのでお勧め。

 場所もとるのでこちらも早く使おう。

 買い置きのルゥがあったはず!!

 ガサガサと引き出しから出てきたのは10人前のカレールゥ。献立の万能選手!

「あとは肉とジャガイモか…。」

 普段なら期限切れを防ぐため冷凍肉をストックしているが、今日はない。ジャガイモも芽が出るので同様。

「イモ以外の食材…。」

 ふと目についたのはパック煮豆。


「私天才…。」

 出来上がった鍋を見ながらヒカリは感動で震えた。

 割引の挽き肉とミックスビーンズのパウチを買い足して作った『キーマカレー』。なんとジャガイモより安上がりな上に冷凍保存可能という…!

 10人前作っても保存できる~♪

 自分で言うのもなんだが、本当に便利だ。

 毎日カレー!なんて言う人もいるが、1日1回10日間も食べた作者的にも、ほんっとうッに助かる…。


 カレールゥは偉大。


 美味しいパウチを作った工場は神。


 技術の進歩と文明の利器に感謝。


「全身筋肉痛は想定外だった…。」

 初出勤の翌日、こんなカタチで作りおきストックに助けられるとは思わなかったヒカリであった。


 その後3日、筋肉痛に悩まされた…。

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