驚愕




「ランチメニューが1種類だけ?」

 昼に食堂へ行くと、いつもならその日のおススメと常にある2種と、少し豪華な特別食の4種類はあるメニューが、常にあるメニューのしかなかった。

「嫌なら食べなくて良いよ!いつもの仕入れ業者から急に『もう取引出来ない』って、突然連絡が来たんだ。違約金も振り込まれちまったから、明日からは汁一杯だって出せないからね。ったく、誰だい?お偉いさんを怒らせた馬鹿は」


 食堂内に居た生徒の視線がウィッキーとミリアムに集中した。

「ま、良いけどね。私達は今月末まで契約があるから、厨房ここに来るだけで金は貰えるんだ。食材を仕入れるのは学園だから、私らに責任は無いからね」

 フンッと鼻から息を吐き出した配膳係は、「受け取ったら退いてくれ」と二人を追い払うように手を振った。




 翌日登校すると、更に生徒数が減っていた。

「人数が少ないから、どこの教室でも使い放題だよ。1年の端から使ってくかい?」

 教室に入って来た教師がハッハッハと大袈裟に笑いながら、そんな事を言い出した。

 これが自棄糞ヤケクソという状態なのだと、生徒達は冷めた目で教師を見ていた。


「伝統ある王立学園が!」

「なんじゃこりゃ!!」

「え?生徒はどこですか?」

 で、各学年に分かれて授業を受けていると、見るからに偉そうな三人組が出入り口に立っていた。


「オリヴィア様が本気だ」

「親馬鹿公爵が王家の後ろ盾を外れるとか言い出したのも、本気なのか!」

「王太子を公爵家に婿入りさせて、王女が国王になるとかどうかな?」


 顔面蒼白の三人は、生徒達には構わず話し合っていた。

 ウィッキーは首を傾げた。

 オリヴィア様とは、自分の婚約者の事ではないか。オリヴィだと思っていたが、どうやら違ったらしい、と。

 それにしても、このいかにも偉そうな男達は、なぜ婚約者である自分を無視して公爵家の婿入りの話をしているのかと。


「ねぇ、オリヴィアってウィッキーの婚約者のオリヴィの事?」

 ウィッキーからの情報しか知らないミリアムが、間違った名前を口にした。



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