08-02 ヘロン出陣

 帝国歴一〇七九年十一月十一日、ヘロン帝国軍主力はカゲシンに向けて出陣した。

 出陣前の騒動は、控えめに言っても大変な物だった。

 まず揉めたのは、誰がヘロンに残り、誰がカゲシンに向うのか、と言う問題。

 諸将の動静は様々だった。

 主要な貴族はカゲシン進撃を望んでいる。

 ケイマン残党の掃討を強く主張していたゴルデッジ侯爵も結局はカゲシン進撃を希望した。

 自分の目が届かない所で次期宗主が決まるのは耐えられないのだろう。

 レトコウ連隊も、一部は報告のためレトコウに戻るが、主力はそのままカゲシンに向う事を希望する。

 最も注目されたのは、例のトエナ大隊だが、大隊長であるトエナ公爵の甥はきっぱりとバャハーンギールに忠誠を誓った。

 彼はケイマンやフロンクハイトとの密約どころかクチュクンジの即位すら知らされていなかったらしい。

 捨て駒だったのだろう。

 そりゃ、本人も怒るわな。

「トエナ公爵討伐の暁には自分を次期トエナ家当主に」とさりげなく売り込んでいたのは流石貴族である。


 ヘロンの支配はガーベラ家が担う事となり、留守居はクトゥルグ老、ではなくて、ガーベラ・レザーハミドが務めることとなった。

 例の新ヘロン伯爵ことミズラ・インブローヒム僧都は、結局ヘロン伯爵位を返上してカゲシンに戻ることを選択した。

 まあ、賢明だろう。

 彼の権力はバャハーンギールの腰巾着に由来する。

 ヘロンに残ったとして、彼の能力では近辺の治安を担うどころかヘロン市自体の維持すら危うい。

 最初から立候補するなと言いたいが、遅くても自覚したのは悪い話ではないだろう。

 オレ的には旧ヘロン伯爵家の誰かにと思うのだが、それはバャハーンギールとしては認められない。

 なので、ガーベラ家となった。

 ちなみに会戦の正式名称は『一〇七九年ヘロン会戦』とされたが、ガーベラ家は『ガーベラ会戦』と勝手に呼んでいて、なし崩しにみんなそう呼び始めている。

 バフラヴィーとオレも賛同したことになっているらしい、

 まあ、これについては意見を言う気力はない。


 ヘロンからの主力はバフラヴィーが率いて、カゲサトからカゲシンへのカゲシン峠経由で進撃する。

 ガーベラ師団もこちらだ。

 アナトリス侯爵を主将とする別動隊はアナトリス峠でカゲシン山脈を越え、南方からカゲシンを目指す形だ。

 所謂、分進合撃である。

 別動隊は南方系諸侯が多いが、タルフォート伯爵はアナトリス侯爵軍ではなく、バフラヴィーの旗下に留まる。

 タルフォート伯爵は、元はクテンゲカイ侯爵閥であり、アナトリス侯爵との関係は親密とは言い難い。

 そんなこんなで、色々と問題は有るのだが、帝国軍は進発した。

 この場合、速度が大事だから正しい判断だろう。




 個人的な事に話を移すと、ネディーアール殿下はすっかりオレの第一正夫人を気取っている。

 各所と色々交渉していて、それは、それなりに有意義なのは認めざるを得ないのだが、同時にとっても大変なのは既に書いたと思う。

 おかげで行軍が開始されてから毎日、朝夕とセックス三昧。

 強制的にセックス三昧。

 ケイマン軍捕虜とあちこちの貴族から提供された女性たちで、ノルマは毎日一〇人。

 誰が決めたんだよ!

 おかげで睡眠時間は大きく削られた。

 いや、確かに毎日これぐらいこなして行かないと終わらない数ではある。

 こなさないと各方面から不平が出るし、こなせば称賛され、社会的にも経済的にも見返りは大きい。

 だが、いささか多すぎる。

 実際、各所から体は大丈夫かと心配された。

 なのに、「全く問題ない!」と言い切る自称第一正夫人。

 どーしよう、この娘。


 当初は、色々とバタバタしたのだが、数日たつとそれでもパターンは確立してきた。

 一日に相手をする女性は基本一〇人。

 うち、六名は比較的魔力量の高い女性。

 女性は侍女たちが『前処置』して適当に『濡れた』状態にしておく。

 基本はスルターグナ方式で、オレはまずネディーアールの中に出して、精液が付いた状態で女たちに突っ込み腰を振る。

 しばらくすると女性が失神するので、そうしたらまたネディーアールの中に入り、と繰り返す。

 オレがネディーアールの中に出すのはとっても『濃い』ので、それの残滓だけで上級魔導士クラスでも失神できる。

 こんなんでいいのかと思うが女性たちは満足だから充分とアシックネールは力説していた。

 ネディーアール殿下も不満ない、らしい。

 個人的感覚としては、一〇分程ネディーアールの相手をして、一時間ほどボブ・〇ップの相手をして、という所。

 中断時間が長すぎるのではと思ったのだが、侍女の実測によれば、ネディーアールの相手は二〇~三〇分で、アーノルド・シュ〇ルツェネッガーの相手は五分未満らしい。

 なんというか相対性理論は正しいってことだろう。

 ネディーアール自身は中断している感覚はほぼないという。

 合間時間にアシックネールやハトンが『奉仕』しているのもあるが。

 いいのかね?

 いいんだろうな。


 そんで、二名前後は比較的魔力量の低い女性、正魔導士の下から従魔導士で、アシックネールを使用してのスルターグナ方式。

 ちなみに体格はブルース・ウ〇リスぐらい。

 最後に二名前後、オレが普通にヤレる女性が入る。

 これは、各貴族家から提供された女性。

 ネディーアール=アシックネールの交渉で選抜された筋肉の少なめの女性たちだ。

 例えば、ベーグム家、じゃなくて、ガーベラ家から当初押し込まれた、じゃなくて、提供された女性は例の猪体型だったのだが、ロリコンご用達の幼女体型に変更されている。

 ガーベラ家の女性は元からの筋肉信仰と前当主の趣味で、猪体型とツルペタ幼女体型の二択である。

 オレはロリコンではないのだが、この二択だとツルペタを選ぶしかない。

 世間からは幼女趣味と陰口を叩かれるが、ガーベラ家のツルペタはそれなりに美形なのでヤッてヤレないことはない。

 これはとても重要だ。


 そして、一日の最後には、ネディーアールに二回連続で中出しして、逆流した精液を注射器で吸い取り、妊娠予定の女性に注入するという儀式がある。

 注射器はガラス製で、オレが製作した。

 ケイ素は比較的多くの土地で存在している素材であり、例の『トリセツ』に魔法でのガラス製法があったのだ。

 これで吸い取って、失神した女性に注入する。

 勿論、本人には普通に中出ししたと話しているが、これで妊娠するかは未知数だ。

 つーか、妊娠しないとオレが大変なのでなんとか妊娠させねばならない。

 研究が必要だろう。




 こんな形で、取りあえずルーチンはできたが、問題が無い訳では無い。

 最大の問題はネディーアールの負担。

 最初、調子に乗ってやり過ぎたのは明らか。

 魔力量的にアシックネールの二倍は許容量が有るから、二倍ぐらい濃いのを出しても大丈夫。

 許容量が二倍あるから、一回の量が二倍でも大丈夫。

 一日の回数が二倍でもなんとかなる。

 二倍、二倍、二倍、・・・アレ?

 次の日にちょっと蒼くなった。

 つーことで、減らそうとしたのだがネディーアール本人が絶対にダメだと聞かない。

 アシックネールと二人で懸命に説得したが聞く耳を持たない。

 むしろ、もっと増やせと。

 本人の状態は、正直宜しくない。

 日常の活動に支障はないが、なんつーか、目付きがおかしい。

 傍から見ても発情しているのが分かるぐらいトローンとしている。

 事あるごとにオレにくっ付いては卑猥な言葉を口ずさむ。


 ちなみにセンフルールのシノさんは『ネディーアールの調教に参加したい』と強固に申し入れてきた。


「調教は最初がかんじんなのですよ!

 私に任せてもらえれば、どんなプレイでも喜んで受け入れてアヘ顔ダブルピースを決められる肉奴隷に仕上げて見せます!」


 誰が誰を調教していると?

 これ、どーやって言い聞かせようかと悩んでいたら、ハトンの一言であっさりと収まった。


「シノ様、ネディーアール様は既にアヘ顔ダブルピースを決めておられます」


 ハトンの言葉に何故か満面の笑みで勝ち誇るネディーアール殿下。


「キョウスケ、感服しました。

 私はあなたの能力を過小評価していたようです」


 あっさりと引き下がる黒髪の変態美女。


「なんなの、この会話!」


「もはやシャールフ殿下のことをとやかく言えないわねぇ」


 その後ろではシマと、そしてアシックネールがゲッソリとしている。


 巨乳赤毛娘リタも嫁入り希望で、『花嫁修業の成果』を披露したいと言ってきた。


「花嫁修業って何をやったんだ?

 お茶にお花とか?

 あるいは、炊事、洗濯、料理?」


「お茶にお花ってなに?」


 言われてみればこちらでは意味不明だ。


「炊事、洗濯、料理は既にできるけど、侍女の仕事だよ」


 そー言えば、こいつも結構な貴族なんだっけ。


「じゃあ、何を覚えたんだ?」


「亀甲縛り!」


 どーしてオレに言い寄ってくる女はこんなのばっかしなんだろう?


「僕、本を見なくても亀甲縛りが出来るようになったんだよね」


 何故、これを誇れる?


「それは、花嫁修業なのか?」


「勿論だよ」


「違うだろ」


「えー、キョウスケ、ネディーアールの亀甲縛り見たくないの?

 亀甲縛りのネディーアールとヤリたくないの?」


「それは、・・・」


 勿論と言いかけて、すんでの所で止めたオレを評価して欲しい。

 オレも進歩しているのだ。

 でなければ、リタと一緒にシマにコークスクリューをきめられていただろう。

 こーゆー時のシマは容赦ない。

 リタは頭を抱えて呻いている。


「キッコーシバリとはなんだ?」


「ああ、それは、ですねぇ、・・・」


「知らなくていいですから」


「教えなくていいから」


 その後ろではネディーアール殿下が素朴な疑問を呈し、それにシノさんが答えようとしてアシックネールとシマに止められていた。

 しかし、アシックネールのつっこみが定着するとはね。

 シマは前から突っ込みだが、そうは言いながらこいつは毎日オレの血を吸っている。

 シノさんや、他のメイドたちも。

 人の体液を搾り取るという意味では似たり寄ったりだ。


「何故、私は見学出来ないのでしょう!」


 その横で血の涙を流すスルターグナ。

 これは、どーでもいいな。


 話を戻すと、ネディーアールは正直、このまま行くと色々と拙い気がする。

 その『転化』とかしちゃわないかとか。

 転化しなくても、際限なく淫乱になりそうな。

 しかし、短期的には対策が思いつかない。

 取りあえず、夜にまとめて七回だったのを朝三回、夕四回に分けたのだが、気休めだろう。


「キョウスケがネディーの誘惑に乗らなければそれで終わりなんですが」


 アシックネール君、男としては分かっていても抵抗できない時があるのですよ。




 もう一つの問題は一日の回数が増えた事。

 ネディーアールだけで一日七回、アシックネールに三回。

 ハトンは朝夕二回飲む。

 他にサムルとか侍女のケイトとレイラとか、アシックネールの侍女もいる。

 あとスルターグナと最初からいた侍女。

 侍女たちは数日に一回だが、まとめて平均すれば一日三回前後になる。

 一日の合計はこれだけで十五回以上。


 更に困ったことに、また婚約者が増えた。

 モーラン家はオレの夫人枠を諦めなかったのだ。

 第一第二正夫人は無理とのことで、モーラン家直系の女性は妊娠させるだけとなっている。

 しかし、序列は低くても牙族の女性を夫人にとの要望は断り切れなかった。

 で、モーラン直系以外、捕虜からでも良いとのことで、一人選ぶことに。

 これも色々とあったのだが、最終的にオレが選んだのはケイマン・ナユタという十二歳の少女である。

 オレがケイマン総司令部に突入した時に最初に下着をプレゼントしてくれた、パンツだらけになるきっかけを作った女の子だ。

 ケイマンの直系なので、牙族の名門から嫁を入れたとの話になる。

 第三、あるいはそれ以下の序列になるが、スラウフ=モーラン系列ではないので問題ない。

 政治的に折り合いが良かったのだ。


 彼女はケイマン族、つまり、タイガー系列だが、体毛が黒い。

 いわゆる黒色変異、突然変異で体毛が黒いのだが、ケイマン族では最終皇帝の血を濃く受け継ぐ存在と神聖視されていたという。

 最終皇帝、ケイマン族にも子種をばらまいてたんだな。

 ご苦労なことだ。

 ナユタ嬢だが、モーランとしては扱いに困る存在だった。

 黒い体毛は神秘的だが、同時に忌避される存在。

 彼女はケイマン族で戦巫女とかいう偶像をやっていたそうで、粗略には扱えないが、引き受ける男性もいないという。

 であるから、オレが引き受けると色々と都合が良いらしい。

 オレとしては黒い体毛は別に苦ではない。

 そして、この娘は見た目が良く魔力量も多い。

 多いと言っても牙族基準、しかも十二歳だから、かろうじて上級魔導士程度。

 だが、無いよりはましである。

 何より牙族としては華奢、つまり筋肉量が少ない。

 このまま手元で育てれば充分オレ好みの美人に育ってくれるだろう。


 彼女自身にも確かめたが感触も良い。

 彼女はオライダイの姪だが、実の父親を彼に殺されている。

 オレがオライダイを殺したことには何の恨みもないという。

 妻に成れるなら、むしろ光栄だと。

 また、ナユタの侍女として配下も一緒に採用した。

 ナユタの侍女というか、彼女は筆頭巫女なので配下の巫女となる。

 特筆すべきは全員魔力多めで細めの美人ということだ!

 聞けば、ケイマン族で巫女は魔力が高く筋肉量が少ない女性が成るという。

 巫女は儀式で宗教魔道具を光らせる必要があり魔力量が必要。

 だが、魔力量が高く筋肉量が多い者は戦士に成るのが優先。

 必然的に巫女は魔力量が高く筋肉量が少ない者となる。

 で、ケイマン総司令部の巫女となると見た目も重視されるので、美人で魔力量が高く華奢な体型の女性となるわけだ。

 マリセアの正しき精霊に感謝したくなる話である。

 ちなみに、配下の巫女四人、ナユタの侍女として採用したいと言ったら、泣いて感激された。

 ナユタは十二歳、侍女は上から、十五歳、十四歳、十三歳、十二歳と並んでいる。

 ナユタはハトンに倣って、朝夕『飲む』ことになった。

 やはり、全く何もしないのはダメだという。

 侍女のうち下二人は三日に一回程度『飲む』だけ。

 上二人は、一応、ヤッた。

 今後は三~四日ごとにすることになるのだろう。

 ちなみに、十五歳だけオライダイのお手付きだったが、ナユタを含めて残り四人は『膜』が残っていた。

 勿論、勝手に処理しないようにきつく言い渡している。


 話を戻すと、ナユタたちが加わった結果、オレが一日に出す回数は二〇回に達した。

 こちらの男性は一日一〇回ぐらい可能らしいが、そんな世界でも一日二〇回は普通ではない。

 つーか、対外的には捕虜たちにも中出ししている建前だから三〇回近くになってしまう。

 オレは驚異的な精豪、淫蕩、有体に言えば好き者、色キチガイと言われているとかいないとか。

 もう、諦めた。




 最後に書いておくべきは龍神教の斎女殿の件だろう。

 バフラヴィーとオレで話し合ったが、結論を出せず、ヌーファリーンとアシックネールの姉妹に事情を明かして相談した。

 スタンバトア姉御はクロスハウゼン直系でないので事情を明かす訳にはいかず、ファラディーバーはこーゆー相談には不向き、ネディーアールにはショックが大きい、とのことでこの人選となっている。

 で、しばらく、つまり十年以上は龍神教で奥巫女をやっていて欲しいとお願いすることになった。


 実は斎女殿、戦後はけっこうはっちゃけていた。

 彼女が今まで世捨て人に近い生活を送っていたのは、フロンクハイトのウルホ・アハティサーリ枢機卿がいたからである。

 下手に所在を明かせば彼の奴隷に戻されかねない。

 それを恐れていたわけだ。

 だが、今や彼は消えた。

 二百年近く頭の上に乗っかっていた重しが取り除かれたわけで、浮かれるのも無理はない。

 本人はシャールフと毎日ヤリまくる気まんまん、もとい、『シャールフの後見役』をやる気まんまん。

 だが、現在の帝国は月の民を敵視している。

 月の民となった彼女を帝国が受け入れるとは思えない。

 少なくともカゲシン上層部は否だろう。

 密かにクロスハウゼン家に迎え入れるとしても、序列をどうするかとの問題がある。

 何より、誰が彼女を抑えるのかは大きな問題だろう。

 彼女の戦闘能力、軍事能力、政治能力は極めて高い、のだろう。

 だが、その性癖は正直不味い。

 シャールフ、ジャニベグとは毎日ヤリまくっていて、更に、シャールフが他の男や女と交わるのも許容している。推奨している気配すらある。

 ちなみに、オレとバフラヴィーはその件で彼女から説教された。


「シャールフが其方らともっと親密になりたいが、其方らが拒否していると聞いた。

 それは、真か?」


「特に疎遠にしているつもりはありませんが」


 バフラヴィーの返答に彼女は訝し気な顔になった。


「だが、マナを互いに注ぎ合うのは拒否したと聞いたぞ」


 頭の痛すぎる話を始める国母。


「バフラヴィー、カンナギ、其方らとシャールフの三人はこれからのクロスハウゼンを支える中核であろう。

 現在の政治状況から鑑みれば、今後も試練が続くのは必定。

 もっと頻繁にマナの交流を行い、親密になっておく必要がある」


 凝固するオレとバフラヴィー。


「昔の私の護衛騎士団もそうであった。

 男性同士が長期間仲違いせずに結束を維持するには、定期的にマナの交流を行い体と心のつながりを深めるのが欠かせぬ。

 護衛騎士団の者たちには、私に奉仕するだけでなく、互いに奉仕を行い、マナを注ぎ注がれ、結束を深めるよう指導していた。

 私の目の前で多くの団員たちが交じり合う光景は有意義であり、感動的であったぞ」


 光景を思い出したのか、恍惚とした表情になる二〇〇歳。


「月に二回は二四名の団員全員で輪になって団結を深める儀式を行っていた。

 私の掛け声で一斉にマナを放出し、全員が同時に気をやる情景は筆舌に尽くしがたい」


 その儀式、ちょっと前に聞いた覚えが有るのですが。

 つーか、あんたが元凶かよ!


「カゲシンの坊主どもは、この効用を頑なに認めようとしなかった。

 マリセアの正しき教えとの整合性だの、一般社会常識だの、屁理屈を言い募っていたが、効果は明らかだ」


 以前はカゲシンの宗教貴族がニフナニクスに嫉妬して蔑ろにしたと考えていたが、・・・うん、なんか、色々とあったんだろうな。


「そのような事で、其方らは早急にシャールフと交流を深めよ。

 良ければ、私が立ち会おう!」


 この辺りで、バフラヴィーの顔がけいれんし始めた。

 オレはバフラヴィーの体調が悪いことを理由に彼女の前から逃げるように退出したのである。




「もし、あの方を恒常的にクロスハウゼンにお迎えするとしたら、バフラヴィー様とキョウスケは定期的に『輪』に繋がる覚悟が必要ですね」


 ヌーファリーンがしみじみと話した。


「当時のニフナニクス様の絶大なる功績と権威をもってしても、カゲシン首脳との軋轢が避けられなかったってことなんでしょう。

 ニフナニクス崇拝者のネディーアール様が聞いたら卒倒しそうですね」


 アシックネールもしみじみとしている。

 知っちゃいけない真実ってあるよね。


「私は無理だ。

 そもそも、こんなことを定期的に行っていれば世間に露見するのは時間の問題であろう。

 そうなれば、クロスハウゼンが帝国から排除される以前に、クロスハウゼンその物が崩壊しかねん」


 バフラヴィーが憔悴しきった顔で答える。


「シャールフ殿下と毎日ヤってるのも問題ですねー。

 月の民の女性が人族の男性と交わっても転化する事は少ないとは聞きますが、性的に『魅了』されるって話はあります。

 シャールフ殿下が月の民の精液奴隷になっていると噂されるのもちょっと」


 赤毛の姉の方が物憂げな顔で付け加える。


「やっぱり、あの方にはしばらくは世間から距離を取って頂くしかないでしょう。

 少なくとも一〇年、できれば五〇年」


 妹も同意のようだ。


「五〇年でいいのか?」


「五〇年後には私は死んでますから」


 斯くしてオレたちは彼女にしばらく引き籠りを続けて欲しいと懇願する事となった。

 え、最初から結論は決まっていただろうって?

 オレもバフラヴィーも背中を押してほしかったんだと思う。


 オレたちは、「世間に対する影響が大きい」、「一〇年ぐらいの間にバフラヴィーががんばって環境を整える」、「それまでは影の相談役として助けて欲しい」との路線で、何とか彼女を説得した。

 こうして、なんとか、斎女殿は龍神教の本拠に戻っていったのである。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・疲れた。




 余談だが、レザーワーリがやっていた、あそこに花を挿して魔力を増大させる手法だが、ニフナニクス様が開発した由緒正しい効果抜群の方法だという。

 ただ、前提としてあそこに花を挿してもらうという行為に『心の底からの感謝と喜び』を覚えるようになっている必要があるという。

 つまり、ドМ限定だ。


「崇拝する女性に踏んでもらって、それだけで絶頂出来るようになるのが第一歩だ」


 バフラヴィーは諦めた。

 道のりが長すぎる、いや、永遠に無理だと。

 ちなみにオレは最初から興味が無かった。

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