05-25 あっけらかんとした真実を知ってしまう必要はある? (二)
翌日、昨日と同様に『奥書庫』に向かう。
従者はハトンとスルターグナ。
スルターグナはルカイヤ僧都家の娘でシャイフの孫。
十七歳の才媛という触れ込みだが、身長、体重共にハトンよりも小さい。
小学生で通るだろう。
昨日、オレが奥書庫の一角で歴史書と格闘していた頃、ハトンは実に充実した時間を過ごしたらしい。
そうして、写した本を一冊『借りて』きた。
『写本』は我が家の女性陣で回し読みされ、そしてスルターグナが『目覚めた』らしい。
そのまま、お隣に侵攻してリタと決戦し、友好を育んだとか。
朝になったら、ハトンと共に『奥書庫』に行く事になっていた。
そして今、二人は嬉々として作業に没入している。
スルターグナって、こっち方面は興味が薄いって言ってたんだが、・・・どーしてこーなった?
スルターグナは絵心が有るらしく、挿絵模写に回っている。
「流石はキョウスケ、素晴らしい戦力です」
シノさんは目を細めたが。
「キョウスケの嫁はおかしなのばっかりニャ」とフト。
「変態は変態を呼ぶのです」とフキ。
「クソ真面目なタージョッが愛想をつかす筈よね」とシマ。
君たちさぁ、オレに恨みでもあるの?
「キョウスケ自身も、早めに参加するのが望ましいですね。
将来、センフルールに住むのなら必須の技術です」
・・・センフルールに行く気力が二七パーセント程低下する話だな。
「ほら、あんた、歴史資料をさがすんでしょ」
詰まっていたらシマが助けてくれた。
良い奴だな。
オレの中でのシマ株が爆上がりだよ。
お礼に名誉Bカップとして認定してあげよう。
奥書庫に於いて、多少妨げもあったが、オレは順調に知識を吸収した。
シマは、小っちゃくて、狂暴で、美形で、お尻は小さく形が良くて弾力もあり、触り心地は最高だが、客観的に見て賢い部類に入る。
その資料選択は適切であり、かなりの時間節約に、・・・いや、彼女がいなかったら途方に暮れていただろう。
予想はしていたが、『奥書庫』にある歴史資料とカゲシン学問所の歴史教科書、かなり内容が異なる。
旧帝国時代の歴史書は、事前知識が無ければ理解不能だ。
カゲシンの歴史家が書いた解説本もあるが、はっきり言って意味不明。
「カゲシンの歴史解説本は、現在の価値基準での『正しい旧帝国』を、現実の資料に当てはめてんのよ。
古い資料から答えを探るんじゃなくて、既に決まった答えを資料に無理やり結び付けてる、ってとこかな」
助言に従い、解説本は無視して、一から、シマの教えを乞う事にした。
古い資料が難解な理由、最大の問題は、言葉の定義が違うことだろう。
第一帝政の時代は『第一帝政』とは呼ばれていなかった。
『帝国』でもなかったのだ。
当時は、単に『テルミナス』と首都の名前で呼ばれていたらしい。
『ローマ帝国』が『ローマ』と呼ばれていたのに似ている。
更に、『皇帝』もいなかった。
この辺り、教えて貰わなければ相当悩んだだろう。
「でも、言語は『帝国語』なんだよな?」
「『帝国語』は厳密には、大昔の『フロンクハイト帝国』の言葉なんだよ。
始祖様は、地域化が進んで分裂してたのを整理・統合、標準化して、普及したわけ。
始祖様が『帝国語』を作ったとされるのは、そーゆーこと」
フランス語とドイツ語と英語を統一したって感じらしい。
繰り返すが、『テルミナス』国は『帝国』ではなかったから、皇帝はいなかった。
シマによれば『帝国』は『始祖様』、通称『最終皇帝』の『指導』で建国された。
だが、建国の英雄は、建国と同時に政権を放り出す。
彼は『国』を作ったが、『皇帝』どころか『王様』すら作らなかった。
普通選挙は出来なかったものの、地域代表からなる『帝国議会』を設立し、その代表に政治を任せたのである。
議会代表は『主任発言者』と呼ばれ、補佐役を議会議員から選抜して政府を運営したという。
間接選挙だから、大統領よりは首相と内閣に近い形式である。
当たり前だが『主任発言者』は世襲では無かった。
では、『始祖様』は何をしたのかと言えば、『最終助言者』という地位についていた。
やっていた内容からすると、終身最高裁長官という感じである。
建国後、政治の一線には立たなかったが、建国を指導したのは彼だ。
権威は最高で、その最後までかなりの影響力を保持していた事が窺える。
自ら先頭に立って国を作っておきながら、建国したらトップからは引いてしまう。
始祖様は恐らくは地球の先進国出身。
先進国知識人らしい欺瞞だが、オレも同じ立場なら、同じ事をしたかもしれない。
偽善的なポリコレに浸食されている身としては、選挙の洗礼なしに首相とか大統領とかは気が引ける。
『始祖様』が『無限監獄』に籠った後、『主任発言者』は世襲となり、後に『皇帝』と呼ばれるようになったという。
正式に皇帝と呼ばれたのは第二帝政末期だ。
『最終助言者』を『最終皇帝』と歴史家が呼び変えたのは第三帝政に入ってかららしい。
第一、第二、という分類も第三帝政時代に始まったという。
カゲシンの『表の歴史書』は第一帝政の『主任発言者』を歴代皇帝として記載している。
ちなみに、当然ながら『始祖様』、『最終皇帝』も後世の呼び名だ。
本人は、その生涯で多くの名前を使用した。
出世に伴い名前が変わったのだが、『帝国』建国後は『KFC』と署名していたという。
「フライドチキンの店でも開きたかったのか?」と聞いたら、シマに変な顔をされた。
『KFC』の由来、何の略かは不明だという。
本人は、はぐらかして答えなかったそうだ。
「なんかね、ある時、部下が『KFCは何の略ですか』って尋ねたら、『将来は田舎でフライドチキンの店でもやりたい』って答えたらしいの。
確かな資料には載ってないけどね」
話を戻すと、驚いたことに、現在のカゲシンの統治機構は、極めて歪に見えるが、法律的には間違っていないらしい。
現在、帝国公文書に使用されている通称『皇帝玉璽』は、元は帝国議会の『主任発言者』が使用した物であり、これが捺されていれば帝国文書として正式なのだ。
現在の帝国に皇帝はいないが、元々、皇帝なんて存在しなかったのだから、統治機構として間違いではない。
カゲシン統治機構の雛型を作ったのは国母ニフナニクスらしいが、大した人である。
「マリセア正教宗主による帝国支配は、法律上の理論武装はされてるんだな」
「大事なのは、帝国宰相の地位だね。
それと、『玉璽尚書』。
帝国玉璽を保管するという、ただそれだけの地位なんだけど、これは現在、宗主が世襲している」
『玉璽』がないと書類が作れないので、これを持っていることで権力が確保されているという。
「ニフナニクスは、かなり研究してカゲシンの統治機構を作ったみたいだよ」
『国母』と言われても違和感のないすごい人なのは確かだ。
シマは椅子に座って足をぶらぶらさせている。
こうしていると、こいつはとても可愛い。
話は変わるが、歴史書を調べて気付いたことが幾つかある。
最大の疑問はニフナニクスの個人資料がほとんど無いことだ。
カゲシン建国時の資料は有るには有るのだが、ニフナニクス関係だけがすっぽりと抜け落ちている。
特に同時代資料が無い。
ニフナニクスが行った事の資料や伝説の類はたくさんあるが、所謂『一次資料』は皆無だ。
彼女がどのような意図で、どのように政治機構を作ったか知りたくても、結果から推測するしかない。
そして、もう一つ、不思議な欠損が有る。
「マリセア正教に関する規定が無いんだが?」
「始祖様が作った『帝国』にはちゃんとあるよ。
ほら、『信教の自由』と『政教分離』の規定があるでしょ」
地球の先進国出身者が主導すればそーなるのは不思議ではない。
「過去は兎も角、現在の規定も見当たらないんだが?」
カゲシン建国時にマリセア正教がどの程度の貢献をしたのか、どのように位置づけられていたのか、全く記録が無い。
「教導院学問所の教科書では第一項にマリセア正教を国教にするって書いてあるんだがな」
「その規定、確か、第三帝政の皇帝の誰かが個人的に発布したやつだよ」
「帝国の正式な法令には成っていないのか?」
「私が知る限りではね」
「ニフナニクスは、その辺りはどうやったんだ?」
「さあ、知らない。
彼女は、どう考えてたんだろうね。
噂では、ニフナニクス関係の資料はカゲシン宗主の個人書庫にあるらしいよ」
「それだけの秘密ってことか」
シマの言葉に驚く。
一体、どーなってるんだ?
「センフルールにはニフナニクスについての資料とか言い伝えは残っていないのか?」
「残っていないことは無いとは思うんだけど」
金髪の愛玩動物は首を捻る。
「彼女自身が秘密主義だったんだよ。
交際があった人も秘密にするように言ってたらしいの。
だから、私も詳しくは知らない」
これだけの偉人で、これだけ資料が無いのも珍しい。
出所不明の伝説の類はものすごくあるが、それが独り歩きしている。
まるで徳川家康みたいだ。
「カゲシンがニフナニクスの個人資料を隠匿している最大の理由は、カゲシン宗家に彼女の血が入っていないからでしょう」
気付いたら、シノさんが立っていた。
驚いて辺りを見回す。
「慌てなくても、私たちの他には誰もいません」
ハトンたちが作業をしているのは閲覧室であり、ここは政治資料の書架だ。
司書もいない。
「シノちゃん、今の話、・・・」
「考えてみてください。
当時のカゲシン宗家は全く魔力が無かったのです。
なのに、膨大な魔力量を誇ったニフナニクスと結婚して子供が出来たことになっています」
「魔力量の低い男性が、高い女性を妊娠させるのは極めて困難という話ですね」
「マリセアの精霊の奇跡となっていますが、現実にはカゲシン宗家の子供をニフナニクスが生んだことにしただけなのです」
凄い話だが、信憑性はある。
「だから、彼女の個人情報を隠したと」
「彼女の正確な外見が残っていれば、歴代宗主の誰とも似ていない事実が明らかになります。
行動の詳細が分かれば、時の宗主と同行していた期間が皆無な事も分かるでしょう」
「カゲシン宗家は、帝国を継承するために、彼女の政治遺産を継承するために、彼女との婚姻をでっちあげたというわけですか?」
「厳密に言えば、都合の良い所だけ継承するため、でしょう。
私が聞いたところでは、ニフナニクスは帝国再編に当たってマリセア正教を国教にはしなかったようなのです。
カゲシン宗主の地位についても有力な宗教のトップというだけで、法律的な地位は規定しませんでした。
当時の政治情勢ではマリセア正教を強化するよりも帝国を再編して政治的安定を作ることが優先されたのでしょう」
「ちょっと、待ってください。
それだと、現在のマリセア宗家の絶対的立場は根拠が無い事になりますよ」
「故に、『玉璽尚書』が重要になります。
カゲシン宗主はマリセア正教のトップだから権力を持っているわけではないのです。
単に『帝国玉璽』を確保しているだけです」
「えーと、カゲシン宗主が帝国玉璽を保有する根拠はあるのですか?」
「ありません。
世襲している、だけです。
強いて言えば、帝国で最も信者が多いマリセア正教の代表である事、帝国を再統一した国母ニフナニクスの子孫である事、一応、この二つが根拠です」
「その二つの根拠の内、二つ目は嘘って話ですか」
「現実には、カゲシンと宗家が巨大な軍事力を抱えている事が一番でしょう。
他は、建前です」
取り繕ってはいるが、軍事独裁政権ってことか。
まあ、絶対王政なんてどこもそんな物だが。
「今の話が本当だとすると、学問所の教科書は嘘ばかりになりますね」
「そうなります。
カゲシン初期政体においてマリセア正教が必ずしも主導権を持っていなかった事実は、帝国内諸侯の代表が帝国宰相を務めていたことからも分かります。
当時、帝国宰相はカゲシンに常在していなかったのです。
その後、カゲシンの宗教貴族が勢力を強めて現在に至ります。
あの騒ぎの日にクテンゲカイの者が言っていた通りです」
マルクス史観の歴史本なんか、共産党のあるべき姿が過去に適応されて、無茶苦茶になってるからな。
ピールハンマドなんかも、自分たちが作り出した架空のニフナニクスを信仰し、自分たちに都合の良い歴史を信じているのだろう。
「シノちゃん、今の話」
「当然、他言無用ですよ、シマ」
シマも知らない話か。
情報源は、センフルールの古老辺りだろうか。
シノさんはにこやかな笑みを崩さない。
それにしてもこの人、ほんとあっけらかんと重要な事を話すな。
カゲシン首脳にとって、ニフナニクスは尊崇すべき存在だが、同時に厄介な存在ってことか。
「先日、クテンゲカイ侯爵継嗣が、千日行と帝国宰相についての話を公にしました。
クテンゲカイ家がどこまで意図したかは分かりませんが、あれは現在の政治形態を根本的に破壊する意味が有ります。
帝国宰相就任に、千日行が関係ないとなれば、その存在意義は大幅に低下します。
それだけではなく、全ての修行の意味が霧散するのです」
現在のカゲシンでは、官僚になるには僧侶資格が必要である。
僧侶資格を取るには教導院学問所の上級宗教講義に入るのが近道だ。
月の半分ぐらい、宗教修行、聖典の写本とか聖歌・お経の練習を行えば五年程度で僧侶資格、『正黄』のストアが取れる。
「千日行に意味が無いのなら、それ以下の修行も無意味。
官僚になるにも修行は関係ないって話になりますね」
「問題は、現在の帝国には他に官僚の登用基準が無いことです。
算用所はありますが、人員が少なすぎますから」
シノさんによると現在のカゲシンの官僚登用は完全に無意味ではないという。
現在の帝国官僚は第三帝政時代に比べると、腐敗は著しく少ないのだ。
官僚としての能力も低いが。
「衝撃の話ですね。
しかし、そうなると、カゲシン巷のニフナニクス信仰は滑稽ですね。
ニクスズ派なんてのもありますが、ネディーアール様も非常に熱心ですし」
「カゲシン宗家との関係は別として、ニフナニクスはカゲシンの偉人ではあります。
ですから、おかしなことも無いでしょう。
あと、ネディーアールについてなら、正当です。
彼女は正しくニフナニクスの子孫ですから」
何を言い出したんだ、この人?
「ニフナニクスにはウィンター・リチャードという股肱の臣がいました。
大変優秀で魔力も多く、後に初代ウィントップ公爵になった人物です。
この二人は愛人関係で、子供が二人、男子一名、女子一名がいました。
女子は当時のクテンゲカイ侯爵家に嫁ぎ、男子はクロスハウゼン家の初代になりました。
二人とも、便宜上、他家の養子になっていますが、事実です」
オレが読んだ所ではクロスハウゼン家初代はカゲシン宗教貴族の分家の出で、たまたま魔力量が多く、ニフナニクス後の第一軍団司令官に就任となっていた。
「それもカゲシンが隠したかった事実ですか」
「でしょうね。
下手に知られれば、カゲシン宗家よりもクロスハウゼン家が正統だと言われかねません」
カゲシン宗家とニフナニクスの間には何があったのだろう?
シノさんを窺うが、どうも、これ以上の情報は無理そうだ。
何となくだが、最近、彼女の魔力というか波長が分かるようになった、・・・気がする。
意図的に幾つか大事な情報を伏せられている気もするが。
話を変えよう。
「今、魔力量と子供の話が有りました。
この際だから聞いてしまいますが、ネディーアール様についての話を最近聞きました。
彼女が、正確に言うと彼女と弟が、共に宗主の子供ではないという噂です。
シノさんはどう思いますか?」
「そんな当たり前の話をされても、・・・ああ、一応、秘密でしたね」
「シノちゃん、・・・まあ、いいけど」
当たり前、か。
緊張して聞いて損した。
「ネディーアールにカゲシン宗主の要素はゼロでは無いですか。
見た目も中身も宗主に似た所は皆無です」
「外見だけ、ではないですよね?」
「それはそうです。親戚は分かりますから」
「はい?」
「我々血族は遺伝的に近い者は会えば何となくわかるのです。
血が濃ければ濃い程分かります」
「シノちゃーーーーん」
シマがまた頭を抱える。
「キョウスケはこの手の事には口が堅いですから」
「あのー」
「シノちゃん、本当にいいの?」
「キョウスケには色々と情報を教えて、ズブズブの関係になった方が良いと考えます。
私達との関係を深めて逃れられないようにすべきかと。
性格的に身内認定した相手は見捨てられないようですし」
計算づくというか、信頼されていると言うべきか、・・・この人って、よー分からん。
「少し前の話ですが、クロスハウゼン家からセンフルールに一人の女性が提供されました。
魔力の多い、赤毛の美しい女性で、彼女は私の父の女になりました」
「当時のセンフルール族長の側夫人になったということですね」
「人族の女性を転化させる方法として、最も使われる方法は性交です。
性交を繰り返すことにより徐々に女性の体を変化させていきます。
単純に血を与える方法に比べると時間は十倍以上ですが、確実性が高く、安全で能力も高くなるとされます。
その転化の過程において妊娠する場合も少なくありませんが、転化途中で生まれた子供は人族となります。
この方法で生まれた子供は魔力量が高めになる事が知られています」
「ひょっとして、それを狙って、クロスハウゼンは娘を提供したという事ですか?」
「当然、そうです。
彼女は転化の過程において二人の女子を産み、この二人はクロスハウゼンに戻されました。
二人は当時のクロスハウゼン家当主と結婚し、生まれた一人が現クロスハウゼン当主カラカーニーです」
「ちょっと待ってください。
えーと、シノさんの異母姉がカラカーニー殿の母親ということですか?
つまり、シノさんはカラカーニー殿の叔母になると」
「ちなみに、件の女性が完全に転化してから産んだのがリタになります。
こちらに留学するにあたって未成年だったリタを強引に連れてきた理由がこれです」
リタは肛門メイス閣下の同母の叔母に当たるわけだ。
「ネディーアールが宗主の子供でしたら、血の濃さは母親の半分の筈です。
ですが、彼女には母親と同程度の血の濃さを感じます。
優性遺伝ぐらいでは説明が付かない濃さです」
「つまり、ネディーアールの父親は、母親と同様にシノさんのお父さんの血を受け継いだ者である、と」
「言っとくけど、厳重機密情報だから。
カラカーニー殿の母親はちゃんと然るべき所の養子に入って偽装してるから。
そこんとこ、よろしくね!」
『奥書庫』からの帰り道、歩きながら考えた。
国母ニフナニクスが基礎を作った現在の帝国統治機構はそれなりに優れている。
問題は、ニフナニクスの想定以上に宗教勢力が強くなってしまった事だろう。
だが、強くなり過ぎた宗教勢力を取り除くのは、手遅れだ。
現在の帝国は良くも悪くも『マリセア正教』が中心であり、排除すれば本体が空洞になってしまう。
宗教化が進行した結果として、帝国の統治機構は歪んでいる。
官僚は宗教的能力だけが選定基準であり、清廉ではあるが能力は乏しい。
帝国の官僚機能は衰退し、統治機構も弱体化し、治安は悪化した。
社会インフラの再整備は行われず、生産能力は徐々に低下している。
しかし、これ、どうすべきなんだろう?
能力は低いが清廉な官僚組織というのは、第三帝政の腐敗の反省だという。
だが、宗教組織自体が肥大化し、僧侶官僚は合法的に贅沢が出来るから、もはや利点とも言い難い。
その意味では龍神教の斎女様が言っていたように、一回、完全に潰した方が早いのかもしれない。
だが、革命というのは褒められた手段ではない。
犠牲が大きすぎるからだ。
世の中、ソフト・ランディングが出来るのなら、それに越したことはない。
問題は、そうは言っても、手段が分からないことだ。
そもそも、現状でそんな将来展望がある政治家が帝国に存在しているのだろうか?
いたとして、それを助けるべきなのだろうか?
そう言えば、肛門メイス・カラカーニー閣下やバフラヴィーはどのように考えているのだろう?
デュケルアールの子供二人は宗家の血を引いていない。
だが、逆に言えば二人はクロスハウゼンの直系だ。
クロスハウゼン家はあの二人をどうするのだろう?
その夜、お隣から『ニフナニクス物の写本』が届けられた。
シノさんによると、『カゲシンで独自に発展した数少ない新たなジャンル』の一つ、だという。
内容は、・・・ハキム・ニフナニクスが美少年を侍らせて、色々としちゃう物で、・・・多人数美少年調教物兼乱交物だそうで、・・・そりゃ、ニフナニクスでオレが読んでいない資料が有ったら貸して欲しいとは言ったけどさ、・・・エロ本って資料に入るのか?
シノさんって時々、いや、しばしば、完璧にずれるよな。
「美少年と年増美人も良いですね!」
「これは、流石にアウトです。不敬過ぎます」
スルターグナは喜んでいたが、『所持しているだけで問題になる内容』とのアシックネールの指摘により、『ニフナニクス物』は即日、返却された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます