04-17 取りあえず行ってみよう
マザコン猪を振り切って部隊に戻って、しばらくして命令が来た。
部隊の配置転換と新たな陣地の場所についてだ。
まあ、移動することは分かっていたから問題はない。
問題は移動先だ。
うちの部隊の新たな配備先は、・・・最前線だった。
元の陣地から真っ直ぐに南下した所で、旧川床の『分断点』の真ん前、五~六〇〇メートルという所だ。
問題は、両脇の部隊より前に配置されてるってことだ。
明らかに、明確に、間違いなく、前だ。
ベーグム師団の戦列の中央部から突出している、二〇〇メートルぐらい。
一応、確認したのだが、ここで間違いないという。
『分断点』から敵が攻めてきたら、真っ先に蹂躙されるだろう。
「明らかに撒き餌、トラップだな」
トゥルーミシュも顔がこわばっている。
「敵が攻めてくれば、我々が真っ先に戦闘状態に入る。
ベーグムはそれを助けるという名目で戦闘に参加する。
最初に戦争を始めた責任はクロスハウゼンということか」
「予想はしていたんだろう?」
オレの問いにクロスハウゼンのイケメンオトコの娘、いや、本人は女だって自覚しているらしいから、・・・めんどくさいな、・・・今すぐ大河ドラマで若殿役が務まりそうな、そんなサッカー部熱血キャプテンは、苦悩の表情を見せた。
あー、言葉遣いに関してだがトゥルーミシュとの間では面倒なので互いに敬語は使用しないことになった。
一応、オレが上司だし。
「ある程度予想はしていたが、ここまで露骨に前だとは思わなかった」
「まあ、仕方がないだろう。取りあえず、穴掘りを手伝えよ」
唸っているトゥルーミシュを無視して部隊に陣地作成を命じる。
一応、半円形だ。
全周陣地にすべきか迷ったけど、後ろは空けた。
実際に見てみると、全周陣地って逃げ辛いんだよね。
つーか、うちの部隊、二個中隊規模とはいえ騎兵もいる。
こんな所に騎兵を置いとく意味ってないよね。
騎兵だけでも後方に移動させたいって言ったけど拒否された。
「クロスハウゼン大隊に所属する兵士は全員、ここより前にいろと言う命令だ」
拒否したのは連絡士官としてベーグム師団から派遣されたおっさんだ。
三〇代半ばぐらいで階級は代坊官。
少佐ってところか。
連絡部隊に連絡士官ってーのも変な話だが、実質監視役なのだろう。
オレやトゥルーミシュよりも階級が上だから部隊の指揮権も自分にあると言い出したが、それは断固として拒否した。
「心配しなくとも、明日の夜明け前に我が方の偵察部隊が龍神教陣地に出向くことになっている。
彼らを追って敵が来るだろうから、それを出迎えてやればよい」
それ、どーゆー予定だよ。
なんだかんだで、既に夕暮れ時だ。
急造陣地に潜り込んで、早目の夕食を取る。
取るのだが、・・・。
何か、・・・・・・・・ヤバイ。
まずは、後ろ。
ベーグム師団の陣地線構築が半端ない。
ものすごく厳重。
今現在も建設進行中だ。
恐らくは最初の陣地で構築した塀とか柵とかをそのまま移動したのだろう。
蟻の這い出る隙間もないって奴だ。
特にオレ達の後ろが厳重、・・・堀まであります。
えーと、ですね。
敵が来たとするよね。
すると最前線のオレたちがまず戦うことになるが、どう考えても支え切れるとは思えない。
そうなると、後退するしかない訳だが、・・・これって後退出来るんだろうか?
この堀と柵、越えさせる気がないだろ。
そして、前。
こっちも何か変だ。
トゥルーミシュを呼び寄せて相談する。
「今夜、敵が攻めて来るって話は聞いてるな?」
「うむ、聞いている。
ベーグム師団の偵察部隊が敵を誘導するという話だな。
だが、龍神教が引っかかるのかは疑問だろう。
成功確率は三分も無いと思う」
こいつ、身振り手振りが大げさ何だよな。
まるでヅカの男役みたいだ。
「オレはかなりの確率で来ると思う。
そう、八割ぐらい」
「その根拠は?」
「あちらを見ろ」
旧川床を指す。
旧川床は二〇メートル以上高い。
その上には龍神教が陣地線を築いていた。
「兵士が、・・・減っているのか?」
トゥルーミシュは望遠鏡を取り出すと子細に観察を始める。
「確かに兵が減っている。
残っているのは旗だけだな」
「全く兵士がいなくなった訳では無さそうだが、かなり減っているのは間違いない。
多分、十分の一以下だ」
「ここだけか?」
「いや、見える範囲全部だ。
恐らく、全戦線で引いたんじゃないかと思う」
「何時からだ?」
「オレが気付いたのは一時間ほど前からだ。
昼にはまだ兵士がいた」
「よく気が付いたな」
感心されてしまった。
「問題は、減った兵士がどこへ行ったのか、ということだろう」
「兵士を集結させて、・・・攻撃の準備か?」
「普通はそうだろうな」
「待て、龍神教はこちらに合わせて攻撃準備に入ったというのか?偶然か?」
「そんなわけが無いだろう」
大げさに否定してやる。
「これだけ大規模に配置転換しているんだぞ。
あちらだって、こちらを見張っている」
「だが、それだけでベーグムが攻勢を行うという確証は持てない筈だ」
「恐らくはもう一つ情報源がある」
「まさか、内通者か?」
ヅカの男役トップがまた大げさに驚く。
「その可能性もある」
軽く頷く。
「だが、もっと確実な情報源が有ったと思う。レトコウ伯爵だ」
トゥルーミシュの目が真ん丸になる。
「あくまでもオレの推測だが、レトコウ伯爵は既に龍神教と水面下で交渉を行っている」
「それは、裏切り行為ではないか!」
こいつ、結構、真っ直ぐだな。
ナディア姫なら真逆の答えになりそうだ。
「それは、何を以て裏切りと見做すかって話になるな。
レトコウ伯爵から見れば、何が何でも戦いに持っていきたいベーグムの方が裏切者かもしれん。
カゲシン宗家からは『穏便』にと命令されていたわけだからな」
「ベーグムは命令違反だから、と、」
「レトコウ伯爵の立場で、今回の騒動を自分に不利益にならないように収めるにはどうしたら良いと思う?」
「それは、こちらが勝利するのが最善、・・・ではないと言いたいのか?」
うん、こいつもそんなに馬鹿じゃない。
「四〇年前に十万の軍を投入しても龍神教には勝ちきれなかったんだ。
レトコウ伯爵は最初から勝利して事を収めるという選択肢は捨てていたと思う」
「だからクロスハウゼンの仲裁を求めたのだな」
「その通りだ。
だが、ベーグムの戦闘欲求は予想以上に強かった。
では、レトコウ伯爵はどうすればいいのか」
「戦って勝つしかなかろう。勝ちきれないかもしれんが、負けるよりはマシだ」
「ベーグムだけ負けてもらう、というのはどうだ?」
トゥルーミシュが息をのんだ。
「レトコウ伯爵軍は戦わないと事前に龍神教と交渉したというのか?
だが、それでは、白龍川の水利権はどうなる?」
「幸か不幸か、オレが水を掘り当てたからな。
伯爵にとってはもう済んだ話なんだ。
後は面子の問題だけだ。
ある意味、ベーグムが負けてくれれば、自然な形で龍神教に譲歩できる」
「だから、龍神教に通じて、ベーグムの攻勢計画を知らせたと?」
「いくら何でも、龍神教の対応が早すぎる。
こちらの部隊の配置転換だけで、旧川床の警戒部隊を全部引き上げるのは無いだろう」
サッカー部のイケメンキャプテンが悩む。
「其方、レトコウ伯爵の事、分かっていたのならバフラヴィー様にも言っておくべきだったのではないか?」
「すまんな。オレも今さっき気が付いた」
喉が渇く。
ハトンにコップを貰うと自分で水を出して飲んだ。
「問題は、龍神教が何をするか、だ」
「ベーグムの先手をとって攻めて来るとかか?」
「可能性は色々とあるが、問題はこの場所で戦いが始まる可能性が高いという事だ。
そして、その場合、この地形でこの兵力ではどう考えても守り切れん。
だが、後方は、アレだ」
トゥルーミシュが後ろを振り返る。
「ベーグムのあれか。
笑い事では無いな。
我らをどうやっても後退させないようにしている」
「トゥルーミシュ、真面目な話、クロスハウゼンとベーグムの関係からは、お前の命はどの程度の価値なんだ?
お前を戦死させたら、ベーグムは政治的にまずいことになるのか?」
「いや、あざ笑うだろう」
ヅカのトップスターは不敵に笑う。
「噂では、ベーグム家では先代のベーグム師団長の戦死はクロスハウゼン家の所為という事になっているらしい。
私が死んだら喜ぶだろう。
この部隊が全滅しても気にしないだろうな」
おい、バフラヴィー、ものすごい遺恨を出し惜しみするなよ。
マザコン猪の嫉妬どころじゃないじゃないか。
遺恨あり過ぎて麻痺してるのかもしれんが。
「ベーグムの連絡士官殿は我らが後退するのは絶対に認めないそうだ」
「では、どうする。我らはここで死ぬのか?」
何の気負いも無く尋ねてくるのは凄いな。
「お前は、何時でも死ぬ覚悟ができてるみたいだが、生憎、オレは生粋の軍人じゃないんでね。
策を弄そうと思う」
「ほう」
うれしそうな顔だ。
振り向くと、ハナとハトンが笑っていた。
隊長たちを集める。
歩兵小隊長四人、魔導小隊長二人、騎兵小隊長二人。
八人を前に説明する。
「恐らく、明日の朝までにここは戦場になる。
だが、ベーグム師団司令部は我らの後退を認めないらしい」
状況を説明の上で作戦を説明する。
「そういうことで、連絡将校殿から『偵察行動』の許可を取った。
前に出る分には問題ないそうだ」
「前に出るって、龍神教に突撃するわけじゃないよね」
説明の途中からゲレト・タイジは真っ青だ。
ちなみに、ここ五分ほどの間に七回マリモになった。
新記録だな。
「逃げるわけには行かないの?」
「逃げるにしても名目がいる。
そういうことで、偵察行動だ」
「それ、誰が行くの?」
「二個中隊規模で行いたいと思う」
「二個中隊って、僕たち、八個小隊しかいないよ」
オレは笑って続けた。
「そうだ。
全軍で偵察行動を行う。
直ちに準備しろ。
オレたちは生き残るぞ」
柄にもなくカッコつけたが、預かった以上部下の命はオレの責任なのだ。
仕方がないだろう。
白龍川の旧川床は、この辺りでは周囲より二〇メートル以上高くなっている。
警戒線を配置するには最適な地形と言える。
両側は急勾配で、登れないことは無いが、かなり大変だ。
頂上部は陣地が作られていて、上部側面は圧縮レンガの壁になっている。
簡易版の万里の長城といった趣だ。
その坂というか壁を、今現在、オレは登っている。
登っている場所は『分断点』から西側に一キロ程の所。
分断点の両脇は流石に兵士が多かったのと、勾配が急すぎるので諦めた。
分断点から離れたところでは兵士も少ないし、レンガの壁も低い。
登っているのはオレとハナとハトン。
オレが先頭で、隠蔽魔法を展開して要所にロープを引っかけながら登る。
最初は、オレとハナだけで登ろうと考えたのだが、ハトンがどうしても付いてくると聞かないのでこうなった。
だが、意外と登れている。
ハトンの最近の身体能力の向上は素晴らしい物がある。
鍛えてるのはオレだけどね。
頂上について、見張りの兵士の横に滑り込み、そのまま昏倒させる。
物理的な打撃で昏倒させる場合、結構な確率で後遺症が残るらしいが、致し方ないよね。
殺されるよりはマシと納得して頂こう。
手筈通りにハナとハトンが猿轡をかませて縛り上げる。
更に、近くにいた二人を拘束。
下に合図を送ると第二陣が上がって来た。
「聞いてよ、トゥルーミシュさん、酷いんだよ。
行かなかったらどーなるか分かるな、とか言うんだよ」
タイジは蚊の鳴くような声で訴える。
トゥルーミシュが相当脅したらしい。
隠蔽魔法を使えるのがオレとハナとタイジだけだったのでこの順番になったのだが、・・・失敗だったかね。
でも、タイジの魔法は必要なのだ。
更に、数分経つと、トゥルーミシュが上がって来た。
その場をトゥルーミシュに任せてオレは西側に突進した。
隠蔽魔法で、音と光と振動、そしてマナを遮断して疾走する。
兵士に近づいては殴って昏倒させ、ハナとハトンに任せる。
縛り終わったら、そのまま放置して次に向かう。
十人程拘束したところで、最初の拠点に撤収。
捕虜をタイジたちに任せて、今度は東側に向かう。
小一時間ほどで分断点までの敵軍を制圧した。
合計、四〇人ちょっとの捕虜をとった。
まあ、ほとんどが平の兵士だ。
上級士官は一人だけ。
トゥルーミシュに任せたら嬉々として『服従の首輪』をはめていた。
部隊、四個歩兵小隊と二個魔導小隊が高地の上に登るのには二時間以上かかった。
付近の敵兵士は拘束したし、最初の拠点ではタイジが隠蔽魔法を展開していたから、ある程度の時間は稼げたとは思うが、・・・露見していないと考えるのは甘いだろう。
だが、オレたちにとっては幸運な事に、敵も大変だったようだ。
旧川床の南側、ベーグム師団側からみて死角になる場所では、部隊の大移動が展開されていたのだ。
夜間にたいまつを掲げての大移動だ。
基本的に西側から東側に部隊が移動している。
上流の白龍川分岐点あたりにいた敵主力が東側に、焦点となる旧川床高地の分断点に向かっているらしい。
夜間の部隊移動だ。
少なからぬ混乱が起きているようで、どうやらオレたちは無視されている感じだ。
オレの計画はうまくいったのだろう。
高みの見物、と言ったら怒られるかな。
オレたちは現在、分断点の西側の高地上にいる。
分断点を上から見下ろす拠点で、結構堅固な砦になっている。
残された物資からすると、中隊規模の部隊が駐屯していたのだろう。
砦自体は二個中隊ぐらい余裕な大きさだ。
中隊が引き上げて、二個分隊、二〇人程が見張りとして残っていたらしい。
中央部には屋根付きの寝泊まりが可能な建物もあるし、トイレ用の小屋と穴もあった。
予想以上に立派な砦だが、それでも十分ではない。
崖になっている東側、元から斜面で帝国側と相対していた北側はそれなりに堅固だが、同じ斜面でも南側は大した設備は無い。
更に、高地が続く西側には申し訳程度の区切りだけだ。
オレたちが立て籠もる拠点としては不十分もいい所だろう。
全員で物資を運び込んだら砦の修築と強化を始める。
魔導士が圧縮レンガを作り、歩兵がそれを積み上げて固定する。
西側だが、簡易だが堀切を入れることにした。
流石に根元まで堀切を入れるのは時間的に、構造的に、そして情報秘匿の面からも不可能なため、とりあえず五メートルほど掘り下げた。
勿論、やったのはオレだ。
隠蔽魔法をかけつつ、土を圧縮して壁面を固める作業はオレしかできない。
下から見たら、音も無く高地が削れていくようになっていただろう。
それでか、どうかは分からないが、削っている途中で敵に動きが有った。
定時連絡なのか不審と思ったのかは定かではないが、下の方で松明を動かしている。
松明を大きく時計回りにグルグル回すヤツだ。
捕虜にした士官に聞いて、同じように時計回りで松明を回して返答した。
異常なしの合図らしいが正しかったようで、その後の動きは無かった。
士官を『威圧』しといたのが良かったのだろう。
便利だよね、『威圧』って。
気が付けば夜の十二時を回っていた。
夕方から準備して、暗くなると同時に出発。
斜面を登って分断点西側の拠点を奇襲制圧。
恐らく、今頃、『偵察行動』から帰ってこないオレ達にベーグムの連絡士官は慌てているだろう。
だが、彼らが出来ることは少ない。
偵察予定の場所はおおまかにしか伝えていない。
騎兵部隊は最初の登坂地点近くに待機させているが、せいぜい彼らを見つけるぐらいだ。
見つかったら、逃げてバフラヴィーに合流するように命令してある。
だが、恐らく、何もしないだろう。
少なくとも夜明けまでは。
部隊を探すといっても暗いうちは無理だ。
龍神教も静かになった。
日付が変わったら音を立てずに待機という話かもしれない。
ベーグム師団偵察部隊の挑発行動は夜明け前の予定だ。
龍神教はそれを静かに待っている。
砦中央に兵士を集める。
「手筈通りに、ここに立て籠もる。
朝まで何もなければ、旗を立ててここを占拠したことを両軍に知らせる。
色々と言われるかもしれないが、偵察行動の許可は取っている。
最悪の場合でも、オレが隊長として責任をとるからお前たちは安心してていい」
小隊長たちが神妙に頷く。
「だが、恐らくは、朝までに戦いが始まるだろう。
ベーグム師団が優勢で、旧川床の分断点から南側に拠点を確保するようなら、我々は何もしない。
朝になったら報告するだけだ。
問題はベーグムが劣勢の場合だ。
その場合、この砦にオレたちがいる事は遅かれ早かれ敵軍に露見するだろう。
そうなれば、ここは龍神教の攻撃の矢面になる可能性が高い。
つまり、ある程度の時間、オレたちは独力でこの砦を守り抜く必要が有る。
ここから退却など不可能に近いからな」
「まあ、平地の陣地で敵の矢面になって蹂躙されるよりはマシだろう」
トゥルーミシュの言葉に周りの小隊長たちが頷く。
オレが最初にこの作戦を説明した時に使った理屈だ。
「戦いがどのように推移するかは分からん。
恐らく、最終的にはベーグム師団が勝つと思うが、途中、苦戦する可能性も少なくない。
よって、可能な限りの防御を整えて欲しい」
「予測としては、ベーグム師団が龍神教にある程度攻めさせて、引き込んで、そして魔導大隊を投入して一気に反撃。
そのまま、南側に突破、ってところか」
最年長の第四魔導小隊長が私見を披露する。
「だが、龍神教側も油断していないようだぞ。
部隊の配置転換も行っていたしな」
「そもそも、龍神教は本当に突っ込んでくるのか?」
「部隊を集結させているのだから来るんじゃないか」
「だが、ベーグムは龍神教に攻めさせての反撃を狙っている。
そこに突撃するのは馬鹿だ」
「龍神教は戦士としては侮れないと聞く。
罠だと分かっていて突進するのであれば話は別だ。
ベーグムの想定以上の突進が見られるかもしれん」
「ベーグムの陣地が突破されるというのか?」
「可能性は有るだろう。
龍神教が突進するとしたら、そう考えての事だ」
「だが、それでも最終的な勝利はベーグムだろう。
魔導大隊の火力に堪えられるとは思えん。
そして魔導大隊に支援された帝国歩兵部隊の突進にもな」
小隊長たちの議論が続くが、・・・魔導大隊の信頼すげーな。
皆の言うところでは、対魔導部隊用の訓練を行っていない歩兵部隊はファイアーボールの一斉投擲でだいたい崩壊するのだという。
確かに、大隊単位のファイアーボール一斉投擲は壮観だろう。
見たこと無いけど。
カゲシンでの訓練では歩兵側の勝利が多いって話だったが、それだけ訓練の有無は大きいのだろうな。
ホントにベーグムが勝ってくれるのなら楽でいいのだが。
取りあえず士気が高いのは悪い事ではない。
「これから全員で食事をとる。
食後は不寝番を残して睡眠を取れ。
魔導士は全員睡眠だ」
会議を解散して、建物に入る。
オレも魔導士だから睡眠だ。
ホントは睡眠の必要は無いのだが、睡眠をとっているというポーズは必要だろう。
だが、隊長用の部屋に入る前にヅカの男役に捕まった。
「ここだけの話だ」
トゥルーミシュはそう前置きして話し始めた。
「其方、ベーグムが勝つとは考えていないのだな?」
ここからはこいつの能力は必要になる。
嘘は言わない方が良いだろう。
「勝つ確率は、・・・そうだな、二割程度だろう」
息を呑まれてしまった。
「そこまで低いと?」
「クテンの魔道具店で会ったのを覚えているか?」
「うむ」
「お前が去った後にクテン侯爵家の魔導士が店に来ていた。
『服従の首輪』を買うためにだ。
あの首輪は数か月しか持たない。
どこで使うんだろうな。
他に戦いがあるのか?」
再び息を呑むイケメン。
「まさか、ここに来るとでも?
クテン侯爵家が魔導部隊を派遣しているとでも言うのか?」
「勿論、秘密裏に、だろう」
「もし、そうなら、ここは・・・・・・・・・」
「誰にも言うなよ。士気が落ちる」
絶句する彼女に一言囁いてオレは部屋に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます