02-01S プロローグ

 ━━━いわゆる第四帝政期は政治的に異彩を放つ。即ち、対外的には帝国と名乗りながら皇帝が存在しなかった。━━中略━━勿論、実質的な皇帝は存在した。マリセア正教の宗主である。━━中略━━マリセア正教は、諸説あるが、第一帝政期以前から帝国内外で広く信仰されていた精霊信仰宗派の一派、マリセア教の分派という説が有力である。マリセア正教宗家に伝わるところでは、宗祖とされる『カゲトラ』は第二帝政中期の人とされ、帝都テルミナスでマリセア教から分派し、マリセア正教を立ち上げたとされる。しかしながら、一次資料で『カゲトラ』の存在は確認されておらず、その実在は疑問視されている。━━中略━━残された僅かな資料、信徒の人種、分布などから推察される所では、マリセア正教は第二帝政期かそれ以前より帝国アナトリス地区で信仰されていた土着宗教だったと思われる。第三帝政を確立したサンゼン家が帰依した所から、第三帝政期に広く信仰されるようになる。━━中略━━マリセア正教が帝国の国教とされた時期は厳密には不明である。正確に言えばマリセア正教を帝国国教とするという勅令は発布されていない。サンゼン・ナフリヌイの治世中に事実上の国教としての扱いを受け、以後、慣例化したものと考えられる。━━中略━━第三帝政末期には、マリセア正教はその聖地カゲシンを中心に在地領主としての地位を固めていた。それを率いたのがカゲトラの男系直系子孫を自称するマリセア宗家である。━━中略━━帝国歴八四六年事実上最後のサンゼン家出身皇帝ポグリヌイが死去する。以後、帝国は皇帝が乱立。帝国歴八五一年、皇帝候補の全てを失った帝国将軍ヌビア・ハリフは保持していた帝国帝冠、並びに帝国玉璽をカゲシンのマリセア宗家に委託。その助力を得てアナトリス伯爵を名乗る。━━中略━━帝国帝冠と玉璽を得たマリセア宗家であるが、自ら帝位に登ることは無く、しかして、アナトリス皇帝家の血統の者を皇帝に推戴することも無かった。マリセア宗家は帝国帝冠と玉璽を『預かった』のである。━━中略━━当時のカゲシンを中心とする地域、後のマリセア教導国はマリセア正教の寺領という名目であり、建前として軍隊を保有していなかった。『自護院』と呼ばれる『警備組織』は存在していたが、その軍隊としての実力は諸侯内でも上位とは言い難かった。故に、時のマリセア宗家は皇帝を名乗らなかったのである。だが、手に入れた帝冠と玉璽を手放すほど無欲でもなかった。━━中略━━そこに、救世主が登場する。ハキム・ニフナニクス。この女傑の前半生は伝説に包まれており、その最後も同様である。しかしながら、彼女は存在したのであり、彼女の卓越した能力により帝国は再統一を果たす。そして、マリセア宗家は事実上の帝国皇帝としての地位を確立する事となる。━━━

『ゴルダナ帝国衰亡記』連邦歴2022年6月22日発行より抜粋




 マリセア正教本山、聖地カゲシン、その領域は広い。

 帝国内のそして帝国外の一般人にとってのカゲシンは、三〇万人の人口を擁する超巨大都市である。

 帝国内外を合わせ、カナンの大地でこれ程の人口を誇る都市は他に存在しない。

 しかしながら、そのカゲシンの中枢部に位置する者たちにとってのカゲシンは少々小さい。

 厳密に言えば、世間一般に三〇万カゲシンと言われる住民の大半は、カゲシンそのものではなく、カゲシン本山の門前町であるカゲシト、そして二つの衛星都市、カゲクロとカゲサトに居住する。

 カゲシン本山に居住が許されているのはマリセア宗家と最上級貴族、及びその使用人に限られ、総人口は一万に満たない。

 それでも、帝国内では有数の規模ではあるが。


 そのカゲシンの一角に、施薬院がある。

 施薬院、カゲシンにおいて医療、医療行政、医療教育を一手に担う組織である。

 地球的視点からすれば、厚生労働省と総合大学医学部、大学病院を併せた組織と言える。

 尤も、施薬院学問所は教導院との共同運営で有り、医療行政では『提言』するだけの存在ではあるが。

 施薬院の運営は主任医療魔導士の合議である。

 主任医療魔導士でも施薬科の地位が高く、薬術科は最も低い。

 施術科はその中間だ。

 施薬科の医療魔導士は基本的に施術科と薬術科も修める。

 施術科の魔導士も薬術科の資格を兼備するのが大半。

 薬術科はそれだけ。

 故に、施薬科の主任医療魔導士の地位が高い。

 施薬科の主任医療魔導士は、現在は十四名。

 その中で、現在の会議に出席しているのは八名だ。

 主任医療魔導士が同じ『教室』に所属している場合は、代表だけが出席する。

 施薬院で最大の勢力を有するシャイフ教室も出席しているのはトクタミッシュだけである。


「定例の議題はこれで終わりですが、本日はもう一つ議題が有ります」


 議長役を務めるトクタミッシュの言葉に、残り七人のメンバーが訝し気な顔になった。

 トクタミッシュは、いわば代理だ。

 本来、この席を仕切るのはトクタミッシュの父親であるソユルガトミシュ施薬院主席医療魔導士である。

 だが、ソユルガトミシュは施薬院の代表者、マリセア宗主の主治医でもあり、この日もマリセア本山に呼ばれていた。

 故にシャイフ教室の次席で息子であるトクタミッシュが臨時議長を務めている。

 主席医療魔導士が出席しない会議では、定例の事案と緊急の事案のみが扱われるのが暗黙の了解となっていた。


「昨日、持ち込まれた事案です。

 クロスハウゼン家より、一人の在野の医師を推薦されました。

 施薬院入講試験への便宜を図って欲しいとのことです」


「クロスハウゼン家の推薦であれば受験資格は問題なかろう。

 トクタミッシュ殿がわざわざこの場で話すと言う事は、特例で施薬院入講を確約せよとの話か」


 一人が半ば呆れたように首を振り、他も追随する。


「また、田舎の自称『名医』のごり押しか。

 どうせ、入講試験に全く届かない学力なのであろう」


 帝国内で医者を名乗るのに特別な資格はいらない。

 このため、地方には『自称名医』が掃いて捨てるほどいる。

 だが、帝国内で一流の医師として認められるのはカゲシン施薬院で学んだ者だけだ。

 地方である程度成功した『医者』はカゲシン施薬院の医師資格を求めるが、多くの場合、入講試験にすら受からない。

 自力で試験に受からない者が、有力貴族のコネで入講資格を得ようとする例は少なくない。


「困ったものだ。クロスハウゼン家はその辺りには良識のある家だと思っていたのだが」


「いえ、本当に、入講試験の受験資格だけのようです。

 対象者は完全な平民、十五歳の男性です。

 通常であれば入講試験受験資格を持たない平民ですがクロスハウゼン家が経済的に保証人になるとの事です」


 今度は、全員が怪訝な顔になった。

 施薬院学問所は、マリセアの正しき精霊の前では人は平等という建前から、初級講義の授業料は極めて安く設定されている。

 中級講義も正業のある平民子弟なら十分に払える額に収められている。

 だが、上級講義は別だ。

 特に施薬院の講義はほぼ全てが上級であり、授業料はかなりの額になる。

 故に、基本、貴族階級しか受験資格がない。

 平民では一部豪商の子弟ぐらいだろう。

 その費用をクロスハウゼン家が持つという。


「何科の希望なのだ?」


「全て、です。施薬院施薬科、施術科、薬術科の三科全てに入講希望です」


「つまり、その者は魔力があるということか」


 一般人は、魔力を持たない者が大半だ。

 だが、稀に魔力がほとんどない両親から高い魔力を持つ子供が生まれることがある。

 薬術科だけであれば魔力は必要ないが他の二科は魔法が必須だ。


「話は理解したが、まじめに試験を受けるのであれば、この場での報告はいらぬと思うが?」


 質問者の言葉に他の六人が同意するように頷く。

 真面目に学問をしたいという優秀な若者であれば、何も問題は無い。

 施薬院の指導部が恐れるのは、施薬院の質と品位を低下させる痴れ者の入学依頼だ。


「その者ですが、推薦者によると、既に高い医療技術を保有しているそうです。

 特に、彼が作った薬は月の民が作った物と遜色ない出来とのことです」


 一気に場が緊張した。


「月の民と同等の薬だと!それは、真か?」


「話によれば、その者は月の民の女に養育され、その秘術を伝授されているとか」


「月の民が秘密を漏らしたというのか!」


 月の民、吸血鬼は医療技術、医療薬の情報を秘匿し、人族に対する武器としている。

 帝国内最高峰と自負するカゲシン施薬院にとっては腹立たしい事実だ。

 勿論、公式には、カゲシン施薬院は帝国最高とされているが。


「月の民が何の見返りも無く秘密を漏らすなどあり得ん!」


「紹介者の見間違いではないのか?

 紹介者はクロスハウゼンの誰だ?」


「クロイトノット大僧都家の第一正夫人ナイキアスール殿です。

 ナイキアスール夫人は銀色ですが施薬院徽章をお持ちです」


 質問者たちの緊張が更に一段階上がる。


「クロイトノット夫人、確かクロスハウゼン・カラカーニー権僧正閣下の同腹妹だったな」


「事実上、カラカーニー閣下の要請、というわけか。無下には出来ぬ。

 では、その、月の民の秘術とやらも、・・・」


 施薬院のカゲシン内での地位は決して高くはない。

 施薬院トップのシャイフ家でも位階は大僧都、諸侯で言えば伯爵クラスである。

 対して、クロスハウゼン家はカゲシン軍閥の一つであり、少僧正家、侯爵クラスだ。

 現在のクロスハウゼン当主カラカーニーは特に功績が大きく、権僧正、つまり名誉公爵格の位階を持つ。


「ナイキアスール殿も魔導には卓越していた筈。信憑性は高いか」


「本当に月の民の技術を持っているのか?」


「だが、検証は必要であろう」


「一概に月の民の技術といっても色々とありますからな」


「問題は、・・・この者をどこの教室で引き受けるのか、という話ですな」


 話の流れが変わる。

 どこの教室にも所属していない卓越した技術を持つ者がいる。

 奪い合いは必至だ。


「ですが、少し問題が有ります。

 この者、世間と隔絶して育てられ、いささか常識に欠ける所があるのです」


「ほう、具体的には?」


「まず以て、従者がいません」


「・・・先程、十五歳の男性と言っていたが?」


「はい、成人の儀も済ませた、性的能力も十分にある男性、とのことです。

 ですが、従者は一人もいないそうです。

 クロイトノット夫人が従者候補として女性を二〇名ほど紹介したそうですが、全員断られたとのことです」


「あー、よく理解できぬのだが、従者が一人もいないのでは、施薬院での勉学など不可能だろう。

 そもそも、普段の生活にも差支えがあると思うが、・・・」


「女性の好みが極端に偏っているようです。

 いわゆる、上位貴族系の、家事や荷物持ちが出来ない力のない女性が好みだとか。

 それ以外では、行為が出来ないと言い張っているようです」


 何とも言えない空気が漂う。

 呆れた、何言ってんだ、身の程知らず、などの呟きが漏れる。


「確かに、そのような女性は憧れではあるが、成人したての平民男子が望むのは身の程知らずであろう。

 そもそも、一人も従者がいないのでは日々の『精』はどのようにしているのだ?」


「それが、好みでない女性相手では、興奮できない。

 自分で処理した方がましだと。

 むしろ、自分で処理するのが好きだと大勢の前で断言したそうです」


 トクタミッシュの言葉に全員が驚愕した。

 それぞれの主任医療魔導士だけでなく、発言を禁じられている従者たちまでもが、悲鳴とも怒号とも言い難い絶叫を発している。

 成人した男性が、その精を女性に注がず、無駄に捨てる。

 極めて非道徳的な行為、最大の禁忌だ。

 まして、それを公言するなど、極め付きの変態行為である。

 出席者が騒ぎ立てるだけ騒いだところで、トクタミッシュは話を再開した。


「皆さんのご指摘通り、仮に彼が卓越した技術を持っていたとしても、このままではとても表には出せません。

 少なくとも、ある程度性癖を直さないと話にもならないでしょう。

 それで、彼をどこが引き受けるか、ですが」


 誰も手を挙げない。

 予想通りの展開にトクタミッシュは苦笑した。


「実は、この件に関しては、我が教室のソユルガトミシュも悩んでおります。

 今回、この件を私が取り扱う事になったのも、正式な議事録に載せる事を躊躇したためです。

 ソユルガトミシュは施薬院主席医療魔導士の責務として、彼を管理し、彼が『常識』を身に着けたならば、世間に出すと考えております」


「それは、その者をシャイフ教室に入れるという事か?」


「いえ、当面は『管理』するだけです。

 皆さまご存じのように、施薬院学生は最初の二年間は『教室』に入らないのが普通です。

 当座は、シャイフ教室の管理下に置くだけです」


「それが良かろう。

 栄えあるカゲシン施薬院の教室が、そのような痴れ者の入局を認めるなど有り得ん!」


 最年長のアフザル教室代表が、安堵したように頷く。

 施薬院で『教室』への『入局』を許されるのは、施薬院学生の中でも少数。

 施薬院入講後、それなりの力量と人格を認められた者だけが『入局』を許される。

 施薬院の『教室』に所属する事は、帝国内で最高峰の医師の証なのだ。


「しかし、十五歳にしてそこまで歪んでいる者の矯正は可能なのか?

 バフシュ・アフルーズのようになるのではないか?」


 バフシュ・アフルーズはシャイフ教室に所属する医師である。

 その医学知識と技能は施薬院でも最高峰とされるが、極めて素行が悪く、マリセアの正しき教えに対する信仰心が欠如している事で知られる。


「それは、何とも。

 第二のバフシュにならぬように、これから努力するとしか言いようが有りません」


「もしも、仮にだ。その者が月の民の秘薬を作れるとして、だ。

 その技術だけを吸い出すことは出来ぬか?

 魔法の呪文とコツだけ、吐き出させれば、その者自身には用は無いであろう」


「それは、我らも考えております。

 可能であれば、そのように努力するとお約束いたします。

 ただ、確実にとは、今の段階ではお約束できません」


「確かに、その者にとっても大事な飯のタネだ。

 簡単には教えぬであろうな」


 納得する質問者にトクタミッシュは曖昧な笑顔を返す。

 今の所うまく行っている。

 シャイフ教室で彼を『やむなく』管理することの許可も取れた。

 勿論、トクタミッシュはどのような手段を使ってでも『技術』を手に入れるつもりだ。

 そして、その技術をシャイフ教室で独占する。

 月の民の技術を手に入れられれば、次の施薬院主席医療魔導士もシャイフ教室の者、つまりトクタミッシュになるだろう。


「目の前で、何度か薬を作らせれば、呪文は勿論、コツもつかめるのではないか」


「その者自身はともかく、技術は貴重だ。

 場合によっては、金をつかませることも検討すべきだろう」


「その者は平民であろう。

 金など出さなくても、圧力をかける方法はいくらでもある」


「最悪、牢に放り込んで拷問すれば良かろう。

 そこまでいかなくても、それを匂わせれば十分だろう」


 話が変な方向に行っている。

 トクタミッシュは慌てて、声を上げた。


「かの者は平民では有りますが、クロスハウゼン家の推薦です。

 あまり無体なことは出来ないでしょう」


「そうかも知れぬが、クロスハウゼン家の身内ではない。

『説得』ならば協力するぞ」


「シャイフ教室で、どうしてもだめでしたら、ご協力いただくかも知れません」


「最初からでも構わんぞ」


「そこまで言われるのでしたら、彼の管理からお願いしたいのですが」


「ああ、それは、・・・まあ、それに付いては、バフシュという問題児のノウハウがあるシャイフ教室に任せよう」


 慌てて、引き下がる発言者に、トクタミッシュは冷ややかな視線で応じた。

 変態の管理だけ押し付けて、利益だけかすめ取ろうなど許されるはずが無い。


「それでは、そのような事で、・・・」


「お待ちを!」


 トクタミッシュが話をまとめようとしたところで、小柄な中年男性、ヌーシュ教室代表が手を挙げた。


「その者をシャイフ教室が管理することに異存は有りませんが、利益は施薬院全体で共有すべきです。

 この話、アーガー家の御曹司に使えるのでは有りませんか?」


 ヌーシュの発言にトクタミッシュは顔を顰めた。

 彼だけではなく複数の教室代表が不快な表情を示している。

 アーガー家はカゲシンでも四つしかない『僧正家』の一つだ。

 諸侯で言えば『公爵』に当たる。

 マリセア宗家の傍流で、過去には帝国宰相も輩出している。

 だが、今代の当主はあまり評判が良くない。

 更に悪いのがその嫡子である。

 アーガー家の嫡子となれば当然、高僧を目指して幼少時より宗教修行に入る。

 だが、この男、宗教修行など性に合わぬと、修行を拒否、そして、自護院に入る。

 自護院、一般に言う所の軍士官学校だが、ここも訓練は厳しい。

 自護院も数年で落第した彼は、何故か、施薬院に入ることになった。

 何故に施薬院に入ることになったのか?

 これには、施薬院側の思惑も絡んでいる。

 上述のようにカゲシン内での施薬院の立場は高い方ではない。

 これは、帝国内随一の学識を自負する施薬院関係者にとっては絶対に改善すべき課題であった。

 そこで、アーガー家である。

 アーガー家の嫡子を施薬院に入れ、然るべき資格を取らせ、施薬院の代表にしようというのだ。

 アーガー家は元々僧正家。

 施薬院で十分な業績が有ったことにすれば、僧正までの出世は堅い。

 そうすれば、施薬院の代表が僧正、諸侯での公爵になり、施薬院の格が上がる、という話である。


 この計画は、その当初から紛糾した。

 八名の教室代表者のうち、二名が積極推進、三名が反対、そして残りの三名が中間派だった。

 議論は紛糾したが、最終的に中間派三名が賛成に転じ、アーガー家嫡子は施薬院入講を認められる。

 だが、シャイフ教室など反対派が危惧した通り、アーガー家嫡子は、全く講義について行けなかった。

 座学は勿論、本人が得意だと自負していた魔法技術も合格にはほど遠い。

 流石に素人同然の者を施薬院代表にすることは無理だ。

 こうして、この話は自然消滅していたのである。

 だが、アーガー家嫡子はそのまま施薬院に在籍していた。

 そして、積極推進派であるヌーシュ教室が彼の面倒を見ていたのである。


「アーガー・シャーフダグ殿ですが、基本の薬剤製作は既に可能です。

 月の民の秘薬作製方法を最初に覚えてもらい、その功績を持って金色徽章を授与するのはどうでしょう?」


「おお、それは、名案だ!」


 積極推進派の二人が、手を叩いて盛り上がる。


「月の民の薬だけで、金色徽章は流石に無理であろう」


 流石に異論が入る。


「その通りだが、アーガー家嫡子を『最初のメンバー』に入れるのは悪くない。

 アーガー家に対する貸になるし、こちらに損はない。

 シャーフダグ殿を施薬院主席にするかは別として、アーガー家を施薬院に取り込むのは政治的に重要であろう」


 トクタミッシュは呆然と議論を聞いていた。

 なんで、こんな話になる?

 頭の痛い話になった。

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