勝鯉のために

雪蘭

開幕

 真っ赤に染まるタケダスタジアム。熱気と声援に包まれるダイヤモンド。少し冷たい夜風が私達の応援の保冷剤になる事はない。

 まだ幼かった当時の私は、仲良くしようとする上瞼と下瞼を無情にも引き離すことに必死になっていた。

      —あの、瞬間までは。 

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