117.デートとヒミツのお買い物~絡み絡まれ~

まえがき


いつもありがとうございます。


自分の中で3章の終わりまでは組み立てました。

4章は……まだ考え中です。

だーれーにーしーよーうーかーなー?()


と言いつつ、同時進行で更新予定の新作も書き進めてます。

ある程度ストックができたら公開予定です。

早く公開したい気もしますが、ストックがないままだと更新の間が空きそうなので……どちらがいいのでしょうね?

公開したらこちらでもお知らせしますので、よろしくお願いします。

今度のイチャラブハーレムの舞台は宇宙だ……!(やっぱりイチャラブ)

あと、主人公は男の娘です。絵面の百合感は死守!(やっぱり趣味全開)


余談が過ぎましたが、今話もお楽しみください。

逆シチュな回。

――――――――――――――――――――――――――――――――






「んっ……ペロっ……ちゅっ、ズズッ……」


「レロッ……んふふっ……とぉっても……んっ、ちゅるっ……濃厚で……おいしいわね♡」


「……ソ、ソウデスネ」


 ……広場のベンチで両隣に座ったおふたりが……ただを食べているだけの音ですよ?


 食べ慣れないのか、食べ方がわからないのか……口の周りが白くベタつくもので汚れていたりするけれど、正真正銘のソフトクリームです。


 まあソフトクリームと言ってもそれっぽい冷たくて甘いお菓子だけれど、牛乳を使っているようだし……だいたいソフトクリームだ。


 孤児院を後にした僕らは、東区の商店街まで戻ってきて春が過ぎたことで新しく出したという屋台を偶然見つけ、午後のおやつ代わりの買い食いと洒落込んでいた。


「……おふたりとも、お口が……」


「んっ……あらありがとう、ユエさん」


「ん~! ユエくん、わたしもー!」


「あはは……はい、どうぞ。キレイになりましたよ」


「うふふっ、ありがとうユエくんっ」


 お昼にレストランでもデザートをいっぱい食べたというのに、ふたりともペロッと平らげてしまった。

 この細い腰のどこに入っていくのか……女の子にとって甘いものは別腹というのは本当なのだろうか?

 まぁソフトクリームは水分が多いから……って、そういう夢のないことまで考えてしまうのは野暮だよね。


「……あっ、ユエさんごめんなさい。ちょっと買い忘れたものがあって、マリアナさんと一緒に買いに行ってきてもいいかしら?」


 3人の手からソフトクリームが無くなり、僕がハンカチを肩掛けバッグへしまったタイミングで、アイネさんが思い出したようにそう言った。


「ふぇ? 私……? うん、いいわよ」


「ええ、もちろんですが……それなら僕も行きましょうか?」


「いっ、いえその……ユエさんはここにいてくれるかしら?」


 せっかく3人でいるし、今の僕は女の子だから一緒に行けない店とかも無いと思うのだけれど……と思って尋ねた僕だったが、アイネさんが恥ずかしそうに指し示した店を見てその考えが間違っていたことを知った。


「その……薬局で、生理用品を……」


「あ……あぁっ!? な、なるほど……。待ってます、はい……」


 そうだよね……同じ女の子でも偽物の僕は生理用品とは縁がないけど、女の子には大事なアイテムだよね……。


「ごめんなさい。じゃあ、マリアナさん……いきましょう?」


「アイネちゃん……? うん、わかったわ」


 なんだかアイネさんがマリアナさんにアイコンタクト――輝光術ではなく普通の――を送っていた気がするけれど……まぁいいか。


 ただ生理用品を買うにしては恥ずかしそうなアイネさんの様子も気になったけれど……僕はそのまま広場のベンチで大人しく留守番をすることにしたのだった。



****



 大人しく留守番をしていた……のだけれど。


「ヒュー! キミ、めっちゃカワイイねぇ? もしかしてあの女学院のコ? 文通やってるー?」


「うっわー、マジやべーっすわ。美人すぎて俺のハートがビートでバクバクっつーか? てかマブすぎて目ん玉つぶれそうっつーか?」


「…………」


「ウェイウェーイ! なぁカノジョ、こんなところでヒマしてるより、もう俺たちと一緒に遊んだほうが楽しいっしょ!」


「デイからナイトまでエンジョイしようぜっつーか? ラブをメイクっちゃうっつーか?」


「…………はぁ……」


 どこからともなく湧いて出てきた冒険者っぽい格好をした若い男2人に絡まれて……簡単に言うとナンパされていた。

 僕が無視していてもお構い無しだし、どう考えたらそんな誘い文句で女性が自分たちについてくると思えるのだろうか……そもそも僕は男だけれど。


 今の僕は広場のベンチに1人。

 相変わらず注目されているのは分かっていたけれど、こういう輩にまで注目されてしまうのは考えものかもしれない……。


 だいたいさぁ……。

 こういうのってさ、待たされてるカノジョのほうが絡まれていて、それを戻ってきたカレシが助けるっていうのがお約束だよね……?

 それなのに、実際に絡まれてるのは僕って……はぁ……。


「お、おい誰か助けろよ……あんな綺麗な娘、きっと貴族家のお嬢様とかだぜ……?」


「いやよ……アレ、冒険者でしょう……? 冒険者って……なんだか怖いもの……」


 僕が内心でガックリと膝を折っている間にもチャラ男2人の口はペラペラとよく回り、何も言わない僕が困っているように見えたらしい通行人たちが遠巻きで話している声が聞こえてきた。


 この男どもは腰に剣をさしているし、薄汚くてみすぼらしいが一応冒険者として基本になる装備を揃えている。

 一般的な冒険者のイメージの例に漏れず、ぱっと見るだけなら粗野で強面で近寄りがたい雰囲気があるのも確かだ。


 まだ王都の冒険者ギルドには数回しか行っていないけれど、こんなイキってる奴らなんていたっけなぁ……?

 少なくとも僕が見たのは……ライブラのファンということは置いておいても、自分たちが世間に持たれている印象を理解した上で仕事に誇りを持っているような人ばかりだと思えたんだけど……。


 孤児院のことが片付いたら、今度は冒険者のことへのテコ入れが必要なのか……?


「ッスッぞコラッ!? 聞いてんのかコラッ!?」


「聞いていません」


「あ゛あ゛ぁぁんっ?」


 あ、しまった。

 つい事実を答えてしまった……もう、面倒くさすぎるよコレ……。


 衆目の中で派手なことはしたくないということと、貴族のお嬢様という立場と、こんなのでもこの国の国民かもしれないと思うと本当の立場から考えても手は出したくないし、ここで冒険者が成敗される場面なんて展開されたら余計に冒険者に対する印象が悪くなるから……どうしたものか……。


 ――そんな、物事を考え込みすぎるという僕の悪い癖が、さらに悪い方向に働いたのだろうか……。


「ごめんなさいルナさん! お待たせ――――あら? ……くすっ」


「ごめんねルナちゃーん! ――ぅっ……」


 小さな紙袋をそれぞれ手にしたアイネさんとマリアナさんが、このタイミングで買い物が終わって戻ってきてしまった。


 この光景をみた2人の反応は対照的で、アイネさんは状況を把握すると『ユエさんなら仕方ないわね』と言わんばかりに微笑みを漏らしていて、マリアナさんは粗野な風貌でおまけに慣れない大人の男性2人からの視線を受けて、少し怯えたように足を止めていた。


「っんだコラッ!? ……おおっ!? ヒュー! キミたちもめちゃカワイイじゃーん! わかった! キミらも俺たちと遊んでくれるってことっしょ!」


「うわー、こりゃヤベーっすわ。こんな美人ちゃんたちが3人もいるっつーことは、俺たち腰がブレイクしちゃいそうっつーか?」


 当然と言うかなんというか、もはやどういう思考回路をしているのかわからないこの俗物どもの目が、新たに現れた美人なアイネさんとマリアナさんにも向いてしまった。


「ウェイウェーイ! 俺らチョーラッキーじゃーん! あっ、何買ったのー? そっちは……服ー? ギャハハッ、どうせ服なんてすぐ脱ぐんだからさー、そんなのポイしちゃおうぜポイ?」


 …………おい?


「……近寄らないでください。そのほうが貴方たちの身のためですよ」


「ハァー? ンだよそれ意味分からないっつーか? 俺らボーケンシャだぞっ? 世界の平和を守ってるってことっしょ? わかるっしょ?」


「ッ……だから寄らないでっ!」


 ……………………おい。


「っべー、っつーか、あの女のデカパイ、ありゃヤベーってレベルじゃないくらいっべーつーか?」


「っ……こ、こないでっ……!」


 ………………………………おい、


……」


「ウェイッ!?」「ッベー!?」


 人が手を出さないからって良い気になりやがって……。


 僕らが幸せを分かち合った……いずれ良い思い出になるであろうとプレゼントしあった服を捨てろだ……?


 世間の評判をなんとかしようと頑張っている人たちもいるのに、衆人環境でこんな低俗な行為を働きながらわざわざ冒険者の名前を出しやがって……。


 何より、2人に……僕のアイネさんとマリアナさんに、そんな下卑た目を向けて薄汚い身で近づいただけでなく……。


 ふたりを、怖がらせたな……?


『な、なんだ……? なんだか背筋が寒くなってきた――』


『風が止んだぞ――』


『あの娘、なんだか光って――』


 周囲のざわめきが、どこか遠くに聞こえる。


「「…………」」


 どうした?


 ネズミ滑車のようによく回っていた口はどうした?

 僕はただ貴様らの背中を睨んでいるだけだぞ?

 それくらいで回らなくなるなんて、やはりこういう輩はネズミ以下の存在なのか?


 自分たちがしようとしたことの結果だというのに、何を今更になってガクガクと震えている?

 漏らした程度で許されるとでも思っているのか?


 僕の大切な人たちに、この国の人達に迷惑をかけるような奴らは……消したほうが――。


「「ヒッ――!? ……………………」」


 かつて無いほど暗く熱い感情が僕を突き動かし、その考えを行動に移そうと手をかざした途端……その手が温かなものに包まれた。


「……ルナさん、落ち着いて。私たちは大丈夫だから……」


「…………アイネ、さん……?」


「ええ。もう彼らは……立ったまま気を失ってるわ」


「うぅっ、こわかったよぉ……ルナちゃぁん……」


「マリアナさん………………………………ハァ……」


 いつの間にか手を握ってくれていたアイネさんと、男たちの視線が無くなって安心したのか僕を抱きしめるマリアナさんの温もりを感じて……僕は大きく息を吐いて暗い感情を吐き出した。


 ぶつけていた『威圧』を解除すると、白目をむいて泡を吹き股間を濡らしていた……余計に見ていられなくなったチャラ男2人が地面に転がった。


 僕は背を向けてそれを視界に入れないようにすると、意識して微笑みを作ってから涙目になっているマリアナさんの頭を撫でた。


「すみません、怖がらせてしまいましたか……?」


「ううん……怖かったのはあの男の人達のいやらしい目で……。ルナちゃんは、とってもカッコよかったよ……?」


「くすっ、そうね。私たちのために怒ってくれたんだもの、とても嬉しいわ……。私はむしろ、あの2人の心配をしてたくらいよ」


「そうですか……それなら良かったです……」


 今になって『やらかした』という後悔が沸々と湧いてくるけれども……2人の笑顔を見て、その後悔も薄れていった。

 結果としてちゃんとふたりを助けられたわけだし……。


「戻ってきたらルナさんが殿方から声をかけられていて驚いたけれど……ふふっ、こうして私たちのために怒って助けてくれるなんて――」


 『やっぱりユエさんは殿方で、私たちのカレシさんなのね』なんて。

 嬉しそうに頬を染めながら耳元で言われてしまった。


「ア、アイネさぁん……」


 言われてることは僕も嬉しいけれど、そんなわざわざ僕が男であることを再認識したように言われるとちょっと悲しいです……。ぐすん……。


「ユエくんがあんなに怒ったところは初めて見たかも……ふふっ、うふふっ……」


 あ、あのマリアナさん……?

 喜んでもらえてるのは良いですけれど、そんな抱きついたままでのスキンシップは……周りの目がですね……。


 一連の騒動をハラハラとしながら見守っていたらしい通行人達は、急に女の子同士でイチャイチャし始めた僕らを見て……さぞや目を丸くしているだろう。


「なんだなんだ、今のバカでかい輝光力は……ん?」


 と、思って目を向けてみたら、人混みの中からこちらに歩み出てくる人影があった。

 見た目は冒険者で、もしかしてこいつらの仲間か……と一瞬身構えたが、目が合ったその顔には見覚えがった。


「貴方は、たしか……」


「おぉ、あんたは! この前、ギルドに依頼に来てた貴族の嬢ちゃんたちか!」


 そう、ゴルドさんへの手紙を出すために冒険者ギルドに行ったときに二階の酒場スペースで豪快に笑いながら『ライ姉』について語っていた、あの強面のオジサマだった。

 僕が貴族というのは……受付のお姉さんから聞いたのだろうか。


「はい。お久しぶりです」


「そっちの嬢ちゃんも、また会ったな。今日はあのちびっ子はいないのか?」


「ええ、今日は彼女はいません。先日は、その……失礼いたしました」


「んん? あぁ、良いってことよ。冒険者ってのが世間でどう思われてるのかは知ってるし、嬢ちゃんたちからすると俺みたいなオッサンはそれだけで怖ぇと思われても仕方ねぇからな。ガッハッハ!」


「っ……」


「おっと、そっちのおっ――あ、青髪の嬢ちゃんは初めてだな」


 いま、マリアナさんを見て『おっぱいのデカい嬢ちゃん』とか下品な代名詞を言おうとしてましたね?

 マリアナさんがビクッとして僕に隠れたので、思わず睨んじゃいましたよ?


「それで、見たところこの騒ぎの中心にいたのが嬢ちゃん達っぽいが……」


「ええ、それがですね――」


 マリアナさんのソコから視線が離れたのを見た僕は、それ以上睨んだりすることはせずに騒動の経緯をオジサマに話した。


「なるほどなぁ……そりゃ、俺たち冒険者が悪いことをした。すまん」


「いえ……貴方が悪いわけではありませんので」


「まぁそうだが……俺の気持ちの問題だ。あぁ、謝っておいてこういうと責任逃れみたいでカッコ悪いかもしれないが、ソイツらはうちの……この国の冒険者じゃねぇな。おおかた田舎から出てきたとかで、でっけぇ王都に来たもんだから浮かれてたんだろうよ。馬鹿な奴らだ」


「そう、ですか……」


 僕も一応冒険者をしていたとはいえ、ここのところは世界的にも目まぐるしく情勢が動いているだろうから外の冒険者のことはわからないし、この国の冒険者のことならこの国で冒険者をしているオジサマのほうが確実に詳しい。

 そのオジサマがそう言うならそうなのだろう。


「おいお前ら……うわくっせぇ!? ハァ……こんなところで放置はできんし、こんなの綺麗な嬢ちゃんたちに触らせるわけにはいかんよな……しゃぁねぇ」


 僕が言われたことを頭の中で反芻していると、オジサマはそう言って地面に倒れていたチャラ男冒険者2人の首根っこを掴んだ。


「じゃぁな嬢ちゃん達、こいつらは俺が連れて行ってきっちり話をしておくから、嬢ちゃんたちは帰りな」


「よろしいのですか?」


「あぁ。その代わり、また依頼でも持ってきてくれ」


「……アハハ、分かりました。ありがとうございます」


「おう! じゃあな」


 そう言ってものすごく似合わないウインクを残して、オジサマはズルズルと引きずりながらどこかに行ってしまった。

 人混みがものすごい勢いで割れていっている……臭いからだろうなぁ。

 ただ、悪さをした冒険者を冒険者が片付けているという光景を多くの人が目にすることになったので、あの気のいいオジサマのためにも少しは風評が改善することを期待したいところだ。


 オジサマを見送った僕は、同じように見送っていたアイネさんとマリアナさんの方に向き直った。


「さて……騒ぎも収まりましたし、行きましょうか」


「そうね。色々あったけれど……楽しく過ごせて、目的のものも買えたし――」


「…………」


「――帰りましょうか」


「うんっ……」


「はい」


 そう言ってアイネさんが僕の左腕を取ると、マリアナさんもそっと右腕を取って寄り添ってきて、僕らは自然と微笑み合う。


 3人でくっつく前に、アイネさんがまたマリアナさんにアイコンタクトをしていて、マリアナさんはほんのりと頬を染めて……なんだか大人しくなっているのがちょっと気になったけれども。


 わざわざどうしたのかと聞き出すようなことはせず、今はこの温かさを堪能しようと……僕らはゆっくりと学園へ向かって歩き出すのだった。







――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

お読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「性癖に刺さった(刺さりそう)」「おもしろかった」「続きはよ」と思っていただけたのでしたら、「フォロー」「レビュー評価」をよろしくお願いいたします。

皆様からいただく応援が筆者の励みと活力になります!


次回、「嫁と嫁との共同作戦~ペロッ、これは……!?~」

愛の異物混入事件?

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