第2話初めての出会い2




「やっと死ねるんだ...。」

僕は今廃ビルの上に立っている。


今までは死にたくても怖いと思ってしまっていたから

今まで何度かここに来たことはあったけど飛び降りようとすると

足が動かなくなってしまっていた。


でも、何故か今はとても足が軽く感じる。

やっと楽になれる。


「誰か僕が死んで気付く人はいるのかな?」



「いるわけないか」



「一度でいいから誰かに愛されてみたかったな...」





僕はそこから足を一歩踏み出した。



確実に僕の身体は下へと落ちていった...。




が、何故か急に身体が凄い勢いで浮き上がった。



僕は何が起こったのか理解できなかった。


確かに飛び降りたはずなのに。


何故....。


「君は何をしているんだ!!」


ビクッ


えっ、



…その声はなんと自分の下から聞こえてきた。

僕はこの人を下敷きにしていた。


ど、どうしよう。



「だ、大丈夫ですか…?」



その人は僕のことをまっすぐな目で見てくる。


そんなに僕を見ないでくれ...。


「え、ちょっ」




僕の目の前はそのまま暗く沈んでいってしまった。








「この子、軽すぎないか」

その男、清水秋久は綾を取り敢えず自分の家に連れて行くために

綾をお姫様抱っこをしたのだが、軽すぎて驚いてしまった。


「この子、痣が酷い。」


「親か?」


可哀想に....。


「……あ、もしもし俺だけど••••区の廃ビルに居るんだけど

 迎えに来てくれない?」


「……5分位ね。 分かった…。よろしく」


さて、まずはこの子をちゃんとベットに寝かせないと。


年はいくつ位なんだろう?



………。







「此処はどこだろうか…?」


知らない天井だ。


ガチャっ



「あ、起きた?!」


ビクッ


「あ、怖がらなくて大丈夫だから。」



僕は怖くて急いで壁の端まで逃げた。


「あ、地味に傷つく...。」


「……秋人様。」


「何だよ…。拓海」


「あなたが急に大きな声を出されたので怖がられております。」


「早く言ってよ…。」


「あ、あの」


「どうしたの?」


「僕、帰ってもいいですか。」


「ねぇ君、虐待されてるよね?」


えっ

何でバレてるんだ?

でも母親に言うなって言われてるし……。


「が、学校の人です。」


「そうか。」


嘘は言っていない。

母親にも叩かれるけど学校でも叩かれているし。



「じゃあ送って行こう。」



「ほら、乗って」


………。



「着いたよ。」


「あ、ありがとうございました」


……聞こえただろうか?


「良いんだよ! じゃあまたね!!」


「う、うん。」


小さく手を振る。


もう会うことはないだろう。


僕は、音を立てないように静かに自分の部屋へと戻る。


あぁ、今日は色々なことがありすぎて疲れたな。


結局死ねなかった……。


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