黒井鋼治

 黒井鋼治は大共通点因子であり、同時に赤木鳩美にとって対となる人物である。ここで言う「対となる人物」とは鳩美の恋人役や夫役という意味ではない。確かに鋼治と鳩美は恋人や夫婦関係である場合は多いが、必ずしもそうとは限らない。

 鋼治と鳩美の関係は単純な男と女のそれではない。より広義的な、人生で最も影響を与える他人という意味での「対となる人物」だ。時には好敵手同士の関係もあれば、擬似的な親子関係や師弟関係な時もある。


 鋼治は概ね実直な性格であることが多く、また自らの個人的感情を切り分けて行動する傾向にある。不愉快に思う相手でも、そうするのが「正しい」のであれば迷わず救いの手を差し伸べるのが黒井鋼治という存在だ。

 一方で、個人的感情をコントロールしすぎてしまう欠点も持っており、人間関係に人情を持ち込まないが故に、かえって他人から信頼されなかったり敵意を持たれる事がしばしばある。


 ただし、鳩美が相手の場合は異なる。良くも悪くも彼女に対しては普段より感情の起伏が大きくなる。それ故に、鋼治は時に鳩美と愛し合い、時に好敵手として争う。

 無論、上記のことはあくまで黒井鋼治という男の”基本的”性格であるので、軽薄な振る舞いをしたり、直情的な行動をしがちな黒井鋼治も存在する。


 とはいえ、どのような性格の鋼治であっても、一貫して良心を持っているという性質は鳩美と共通している。少なくとも現時点で悪の黒井鋼治は観測されていない。


●ライゼンダー

 ライゼンダーは第2並行世界の黒井鋼治である。トラベラー同様、彼も並行世界調査機関の調査員として活動していた。

 彼も大共通点因子なので並行世界調査機関から要観測対象とされ、生まれた直後から常に生活を見張られていた。

 彼も調査員としての活躍を期待されていたが、当時の彼は断固としてを拒否していた。理由は鳩美がすでに並行世界調査機関に所属していたためである。彼はすでに自分が大共通点因子であり、他の並行世界での自分と鳩美は常に何らかの特別な関係にあると知っていた。

 

 鋼治は鳩美との接触を恐れていた。彼女と出会えば、それがどんな関係であるにせよ、自分の人生と接続されてしまうと考えた。鋼治は、運命というべき超自然の”何か”の思惑で自分の人生を好き勝手に操られたく無かったのだ。

 並行世界調査機関の圧力によりしかたなく調査員となった後も、彼は鳩美トラベラーと距離をとり続けていた。


 その後、彼はいくつかの経験を経て、自分が良いと思えることは良いと受け入れると考えを改めて、鳩美との交際を始めた。

 

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