樹上多次元世界

●樹上多次元世界とは

 世界は単一の物ではなく、無数の並行世界が存在する。既存の並行世界から新しい並行世界が枝分かれして発生することから、樹上多次元世界と呼ばれる。


 新しい並行世界の発生にはフォースエナジーと呼ばれる超自然エネルギーによって行われる。

 このフォースエナジーは想像力を現実化する性質を持つ。

 既存の並行世界に住む人々(ここでの人とは知性を持つ存在全てを指す)の想像力とフォースエナジーが結びつくことで新しい並行世界が発生するのだ。


 あくまで人の想像力がベースとなるため、人が想像不可能な世界観を持つ並行世界は発生しない。


●作られる過去と未来

 5分前に発生したばかりの並行世界があるとする。あなたがその並行世界へ行ってみると、すでに数万年分の歴史を有する文明が存在しているだろう。

 もしタイムマシンを使えるのなら、その並行世界が発生した5分前よりも過去へ移動することが可能だ。


 原初の並行世界である第1並行世界の歴史は、現在21世紀の時間点と思われる。だが、第1並行世界よりも後に発生したにもかかわらず、西暦30世紀以上の歴史を有する並行世界が無数に存在する。

 

 このように並行世界は発生したその時点で、既存の並行世界と同等かそれ以上の時間量を有している。

 並行世界の発生とは空間だけでなく過去と未来すらも生成されるのだ。

 

●共通点因子

 並行世界は隣接する並行世界と共通点を必ず有している。

 例えばファンタジーの世界観を持つ並行世界とその隣にSFの世界観を持つ並行世界があるとする。一見すると全く無関係の世界観を持つこの二つの並行世界であるが、同じ名前を持つ国が存在するという共通点を持っている。

 これを共通点因子と呼ぶ。

 通常、共通点因子とは隣接する並行世界同士にのみ存在する共通点だが、これ以外に全ての並行世界の共通点となる大共通点因子も存在する。


 共通点因子も大共通点因子は、多くの場合、人物や地名、国家などの組織が該当するが、中には命名規則や文化といった概念的な共通点も含まれる。

 これら共通点因子がなぜ存在するのかは、全ての並行世界が樹上多次元世界としてひとまとまりになるための連結器の役割を持っていると推測される。


●並行世界の分類

 他の並行世界を観測している第2並行世界では、並行世界を創作1種型、創作2種型、IF型、特殊型の4種類に分類している。


 創作1種型は主に創作物が現実化した並行世界である。初期の創作1種型の並行世界は主に宗教の天国や地獄、あるいは各地域の神話が現実化した世界が多い。後期になると、知名度の高い小説、映画、マンガ、ゲームなどが現実化した並行世界も多数観測されている。


 創作2種型は創作物が現実化したという点では創作1種型と同じだが、こちらは特定の作品ではなく、物語類型もしくは作品ジャンル、あるいは空想上の産物が現実化した並行世界となっている。魔法や超能力が実在する世界。人型兵器が運用されている世界などがあげられる。

 

 IF型は異なる歴史を持つ並行世界を指す。もしもローマ帝国が滅亡しなかったら、もしも第2次世界大戦で枢軸国が勝利したら。そういった歴史上のもしもが現実化した並行世界だ。


 最後の特殊型は上記の3種にいずれも該当しない並行世界が当てはまる。主に何者かの思考実験が現実化したような並行世界が多く、例えば男女の立場が逆転した世界、鉄よりも金が多い世界などがある。


 また、並行世界は上記の分類の複合型も存在する。例えば、架空戦記が現実化した並行世界は創作1種型およびIF型の複合型と分類される。


●中立空間

 中立空間とはどの並行世界にも属していない、いわば時空の狭間である。

 この空間は重力が存在せず、宇宙空間に似ているが、しかし真空ではなく、宇宙服などの装備を必要とせず生命が存在可能となっている。陸上生物も海中生物も中立空間では等しく生存するため、通常の物理法則とは全く異なる事象が働いていると思われる。


 また、中立空間では金色に輝く巨大な樹木が観測される。これは樹上多次元世界を抽象化したものと思われる。この巨大黄金樹の枝や葉の一つ一つが並行世界であり、これに観測者が触れるとその並行世界へと転移する。


●第1並行世界

 第1並行世界は樹上多次元世界において最初に発生した世界であり、全ての並行世界の根源である。中間世界で観測する巨大黄金樹では木の幹に該当し、第1並行世界を幹世界、それ以外の並行世界を枝世界と呼称する事もある。


 第1並行世界がどのような世界であるのかは一切の謎に包まれている。よほどのことがなければ第1並行世界に足を踏み入れるどころか、内部を観測することすら出来ない。

 他の並行世界の世界観から統計的かつ間接的に推察するに、おそらく第1並行世界の「現在」は21世紀前半の地球であると思われるがそれ以上の事は不明である。


 ある並行世界研究者は、「第1並行世界とはいわば読者の世界である。第2以降の並行世界に生きる我々はフィクションの存在に過ぎず、それ故に第1並行世界を観測できないのだ」と日記に書き残していた。それが真実かどうかすらも不明だが、いずれにせよ第1並行世界は不可侵の領域であるには間違いない。

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