第135話 楽しいリスター祭
2030年11月5日 7時45分
「エリリン! それ履いたらダメでしょ!」
ミーシャがエリーのショートパンツを指して言う。Sクラスはすでに教室に全員集まっており、男は執事服、女はメイド服を着ている。
メイド服のスカートは制服のスカートより短く、だいたい日本のイケイケJKの制服のミニスカートくらいだ。が、エリーだけはいつものようにスカートの下にショートパンツを履いているのだ。
「クラリスがいつも言っているでしょ!? 絶対領域は大切だって!」
いつもって……何の話をしているんだよ……ちらっとクラリスの方を見ると目が合ってしまった。クラリスはとっさに俺から目線を外した。
そーいえばこっちの世界にメイド喫茶と言う言葉なんてないよな? メイド喫茶と言う言葉を知っているのは俺とクラリスだけ……当然俺はメイド喫茶という単語をこっちの世界で使ったことがない。なのにミーシャがメイド喫茶を知っているという事は……【黎明】女子部屋でどんな会話をしているんだよ……
「……短すぎる……私のはマルスだけ……他人には見せない……」
エリーが言うとミーシャが
「それは分かるんだけどさぁ。見えそうで見えないようにするのがいいんじゃん……ねぇマルス? マルスもそう思うでしょ?」
おい! なんて話題を振りやがる! こんなの何と答えても変態の一言で済まされてしまうじゃないか……
「う……うん……どうだろう……もっとなんかこう……」
俺が言葉を濁そうとするとミーシャが
「え!? もっと? さすがにこれ以上は私でも恥ずかしいよ……ほらエリリン! マルスもこう言っているんだから脱いで!」
ミーシャが強引にエリーのショートパンツを脱がせた。いくらショートパンツとは言え、スカートの中の物を脱がせるのって……エ……エ……自重しておこう。
メイド喫茶の会場は昨日と同じSクラスの教室でやる。昨日までの教訓を生かして?リーガン公爵はある提案をしてくれた。1年Sクラスのメイド喫茶の入場券を全て抽選にしようと。抽選は無料で席代もとらない……いたって普通のメイド喫茶になった。
リーガン公爵が握手会は学校主導でやったが、メイド喫茶は学生主導でやらせるとの事だった。
だがこの抽選券制度は少し失敗だった……どこの世界にも転売ヤーていうものがいる……そして異常に値上がったチケットを買えるような人はごく限られた人たちなわけで……
8時になりメイド喫茶がオープンした。最初の客が30名入ってくる。俺たちは8人で接客を始めた。
日本のメイド喫茶と違う所は「おかえりなさいませ。ご主人様」とか言わないし、メイドとして立ち振る舞わない事だ。ただメイド服のコスプレをした美少女たちと楽しい夢のようなひと時を過ごしてもらうというコンセプトだ。
それに俺たち男も女性客をもてなすから本当はメイド喫茶とは言わないのかもしれない……
最初はしっかりとメイドキャラでやろうとしていたのだが、どうもエリーとカレンが苦手なようで諦めたのだ。エリーは私のご主人様は1人しかいないと言うしカレンは……
メイドキャラじゃなくても客たちは大いに喜んでいた。まぁそれもそうだろう。近くに超絶美少女が座るのだ。不満があるわけが無い……
お代は豆とジュース一杯で鉄貨1枚、日本円にして1000円というかなり良心的な価格だと思う。まぁ日本の文化祭に比べれば高いかもしれないが。
クラリス、ミーシャ、ミネルバが座った付近はとても盛り上がっていた。3人とも男を乗せるのが上手いらしい。ミーシャとミネルバはなんとなく接客とか得意かなと思ったが、クラリスは意外だった。
後でクラリスに言うと「コンビニ店員を舐めるな」と言われてしまった。エリーとカレンはなんとかこなしているようだが、ただ隣に座ってくれているだけでもありがたいのだろう。
近くの客は喜んでいたし、口下手なエリーとカレンの近くにはミーシャとミネルバがおり、うまく2人をフォローしていた。
女性客も満足してくれているようで、バロンも女性と話すのは得意のようだ。
「どこから来たの?」「いつまでリーガンにいるの?」「普段何してるの?」……ナンパか? 俺とドミニクもバロンに倣って一生懸命女性たちに話しかける。
1時間が経つとアイクと眼鏡っ子先輩が従業員として来てくれ、予想外のサプライズに客たちも大盛り上がりだ。アイクの人気は言うまでもないが眼鏡っ子先輩も人気があったなんて……
10時になり休憩時間となった。今日だけは10時〜13時まで3時間の休憩を入れている。
だって昨日、一昨日とずっと握手ばっかりしていて、リスター祭を全く満喫できていなかったからここぞとばかりに一気に休憩時間を取ったのだ。
ちなみに明日からは1人1人バラバラで休憩をとることになっているが、俺はアイクが来たら休憩、クラリスは眼鏡っ子先輩が来たら休憩としている。
全員で着替えて学校内を散策する。ちなみに全員制服に着替えている。さすがにメイド服でうろつきたくないとの事だ。俺たち男性陣もそれに倣って制服だ。またアイクと眼鏡っ子先輩は自分たちの出し物の所に戻っていった。
俺たちは5年生の棟へ向かった。
棟の近くによると「キャー!」とか「ワー!」とか叫び声や悲鳴が聞こえる……もしかしてこれって……
急いで近くまで行くとなんとジェットコースターだった。もちろんレールとかはない……なんと動力は風魔法だった! どうやら4、5年生の風魔法使いがみんなでジェットコースターを動かしているらしい。
「す、すげぇー……風魔法でこんなことできるんだ……」
俺があっけにとれているとカレンが
「え? マルス知らなかったの? リスター祭の名物よ? あと水魔法で作られた激流を上ったり下ったりするのもあるわよ?」
や、やってみたい……でも今は色々な所を見るのが優先だ。このジェットコースターに目を輝かせているのは俺とクラリスだけだった。他のみんなは知っていたのか……これは1人で来た時に乗ろう。
5年生の教室がある棟に入るとそこは異世界だった……生暖かい風が吹いてくると生首が話しかけてくる。
「ようこそ……学校の墓場へ……何名様ですか……?」
急に生気のない首に話しかけられて俺の腰は見事に砕けた。男子では俺だけだった……ちなみに女子もクラリスだけ腰を抜かしている。
「こ、これも定番なの……?」
俺がカレンに聞くとカレンが
「そうよ。でも安心して。これは誰もが腰を抜かすから。私も初めて来たときは……粗相を……」
恥ずかしそうにカレンが言うとミーシャも
「え!? カレンも? 私も思いっきり漏らしてお母さんに怒られたよ」
と笑いながら言う。女の子が漏らしたことを大声で笑いながら喋るなんて……お化け屋敷も4、5年生が合同で開催していた。
お化け側の4、5年生もみんな楽しそうだ。結局お化け屋敷には入らなかった。1棟まるまる使うお化け屋敷は時間が掛かってしまうからこれも時間があったら1人でこよう……
こうしてみると出し物はクラス毎でも学年毎でもない。みんなで良くするために他学級や他学年と協力してリスター祭を盛り上げている事が分かった。
今年はイザーク辺境伯領に行っていた為準備ができなかったが、来年は他学級や他学年と一緒に盛り上げてもっといい出し物をしよう。こういうのってちゃんと参加するといい思い出になるしね。
俺たちはお化け屋敷を後にして次の目的地に向かうことにした。俺はまだ知らなかった……俺たちがお化け屋敷を離れた後すぐにお化け屋敷の中から失神して運びだされたソフィアとアリスの事を。
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