7章 少年期 ~リスター帝国学校 1年生 イザーク領編~
第109話 序列戦
2030年9月1日
今日からSクラスの授業が始まる。
昨日はメサリウス伯爵やキザールの事で色々忙しかった。
キザールはフレスバルド公爵家から奴隷教育担当が来るまでは、ダメーズが教育をすることになった。まぁそれはさておき久しぶりの学校だ。
俺はいつものように3時に起きてランニングから始めようとすると、カレンとミーシャが俺を外で待っていた。
「ど、どうしたの? こんな朝早くに……」
俺が2人に向かってそう言うと
「少しでも早く追いつけるように私たちも今日からマルスと一緒に朝トレしたいの。最初のうちは追い付けないと思うけどいい?」
ミーシャが可愛く言ってきた。ミーシャはともかくカレンはこういうのやらないと思うのだが
「私もこのままでは一生マルスとクラリスとエリーに守られてばかりだわ。自分の事は自分で守れるくらいにはなりたいから一緒にやらせて。鞭を振るだけでも実は結構疲れるからさすがにそれではダメかなって」
一緒にやらせてって……ヤバい……俺の頭が朝から暴走しそうだ。
「ああ。分かった。じゃあ一緒にトレーニングしよう。さすがに筋トレは一緒には出来ないけどまずはランニングからだ」
俺はいつものペースでランニングをした。
カレンはとても頑張ったが、最初の10分で脱落した。凄く頑張ったのだろう。体中を汗まみれにしていたが体力が持たなくて、歩き始めてしまった。ここで止まらないで歩くという事も重要だ。カレンの負けん気の強さがうかがえる。
ミーシャはというと30分くらいで脱落しそうになっていたが、途中で風魔法を使い強引についてきた。しかしそれも長くは続かなかった。
俺はへとへとになっているミーシャをおんぶしようとすると
「私汗でびしょびしょだよ? 気持ち悪いよ?」
ミーシャが少し気にするように言ってきたので
「俺もびしょびしょだよ。もし嫌じゃなかったらカレンの所までおんぶしていくから一緒に行こう」
俺がそう言うとミーシャは俺にかぶさってきた。確かにミーシャは汗びしょびしょだったが、こんなにもの美少女の汗を嫌と言う男は何人いるだろうか?
俺はカレンの所までミーシャをおぶっていくと、カレンはもう限界と言う感じだった。水魔法で水を出してカレンに飲ませると
「カレン。お姫様抱っこしてもいいのなら女子寮まで抱っこしていくけど、だけど俺は汗びしょびしょだから不快と思うのであれば断ってくれ」
俺がそう言うとカレンは躊躇なく俺に身を委ねてきた。
「嫌な訳ないじゃない。私も服がびしょびしょだけどよろしくね」
今俺は前にカレン、後ろにミーシャという美少女に挟まれている。
しかも全員汗まみれで、服がピタッと体に纏わりついているので、体のラインが正確に伝わってくる。2人ともこの半年でかなり成長してきたな。
ミーシャは俺に後ろからピタッとくっついているので、ダイレクトにミーシャの胸が俺の背中にくっついている。
半年前まではまな板だったと思ったのだが今ははっきりと膨らみが感じられる。そしてカレンも目線を向けるとかなり成長しているのが分かる。
「マルス……目が少しいやらしいわよ」
カレンが俺の目を見ながら言うとミーシャも
「私も今マルスがどこ見ているのか分かったよ。相変わらずマルスはエッチだよね」
ご、ごめんなさい……そんなつもりは……ありました。
「ご、ごめん。もう女子寮に着いたから降ろすね」
2人を降ろそうとするが2人はなかなか降りてくれない。すると2人は俺を挟み込むように同時に左右の頬にキスをしてくれて
「「ありがとう。また明日からよろしくね」」
俺の腕と背中から降りた。これがリア充か! と喜んでいると女子寮の玄関から鋭い視線を感じた。
「マルス。楽しそうね。明日から私も一緒にいいかしら?」
クラリスがいつもの笑顔を顔に張り付かせた表情で言ってくる。カレンとミーシャはクラリスの脇をそそくさとすり抜けていく。2人ともそんな体力あったの?
「も、もちろん。クラリスと一緒に朝トレ出来るなんて嬉しいよ」
と取り繕うとクラリスが頬を膨らませて
「もう。カレンとミーシャは私とエリーも認めているからいいけど、5人目は慎重に選んでよね。このままだと卒業までに何人になっているか……」
クラリスとエリーは認めていてもジークが認めてくれていないんだが……それに5人目が出来る前提で話をしてくるなんて……いつものルーティーンを済ませて俺は久しぶりに登校した。
生徒会に顔を出し、軽く挨拶を済ませてSクラスの教室に戻ると、すでにバロンとドミニクが来ていた。
「マルス。久しぶりだな。活躍聞いたぞ」
バロンが俺にそう言うとドミニクも
「大活躍だったそうじゃないか? もうD級冒険者だって? 俺等も早く【黎明】に追い付かないとな」
そう。俺たち【黎明】は全員D級冒険者に上がったのだ。いきなりC級冒険者に上げるとも言われたのだが、この特殊なパーティで急に上がるのはやはり避けたかったのでD級冒険者のDランクパーティに留めておいた。
バロンたちは上級生たちとリスター連合国の東側の貴族たちと、顔合わせばかりしていたらしい。
バロンたちはザルカム王国の人間たちと少し戦ったらしい。どうやらバルクス王国だけではなくザルカム王国もリスター連合国にちょっかいを出してきているようだ。
俺たちが話をしているとSクラスの女性陣がみんな一緒に登校してきた。エリーも同じ時間に来るのはかなり珍しい。カレンとミーシャはすでにヘトヘトだ。気持ち程度しか回復しないだろうが後でヒールでもかけてやろう。みんなでワイワイしているとローレンツが教室に入ってきた。
「さて、ホームルームを行う。みんな遠征クエストご苦労だった。今日からまた学校での授業が始まるが、武神祭の予選も行われる。そこでSクラスの序列の再確認をすることにする。自分より2つ上の序列への挑戦権を認める。下位から挑戦を始めて、上位の人間が一度負けて序列が入れ替わっても自分の番になったら同じ相手にチャレンジする事は認める。
さっそくやるがまずはミネルバからだ。誰に挑戦する?」
「ミーシャにもドミニクにも勝てそうにないからやめておきます」
ミネルバがそう言うとローレンツが
「別に挑戦するだけでも良かったのだがまぁしょうがない。次はミーシャだ。カレンかドミニクどっちに挑戦する?」
するとミーシャは躊躇う事なく
「ドミニクでお願いします!」
ミーシャが元気よくそう言うとドミニクも嬉しそうに
「久しぶりにミーシャと戦えるのか。相手にとって不足はない」
俺たちは場所を移して序列戦を始めることにした。移動している最中にミーシャとカレンにはヒールをかけておいた。そしてミーシャとドミニクの試合はあっという間だった。幻影のローブと幻影の盾の効果を使うまでもなくミーシャが圧勝した。
ドミニクがそんなバカなと言う顔をしている。ドミニクだけではない。バロンとミネルバも驚いている。
「よし、ミーシャ次挑戦するか?」
ローレンツが聞いてきたのでミーシャが
「一旦保留にしてもらえませんか?」
ミーシャの発言をローレンツが認めた。
「よし次はドミニクだ。誰に挑戦する?」
ミーシャに一方的にやられたドミニクは、もうミーシャに挑む気はないらしい。しかしだからと言って魔法使いのカレンに挑むのも何か気が引けるようだ。
「いえ、序列7位で頑張ります!」
と潔く答えた。ドミニク男だな。正直カレンに挑んでも魅了眼があるカレンに勝てないのだが……
「では次カレン!バロンかエリーに挑戦できるが?」
「では……バロンで」
カレンがそう言うとバロンがあっさり負けを認めた。
「カレンの魅了眼には太刀打ちできないからな」
そう言ってバロンが一時序列5位に落ちた。
「カレン!エリーとクラリスに挑戦できるが?」
「いえ……まだまだ勝てないから挑戦はしません」
カレンも序列4位で終わった。そしてバロンはエリーを指名して戦ったが、以前に戦った以上に相手にならなかった。すると追い打ちをかけるかのようにミーシャが
「バロンと戦ってみたいです。だけど今日はもうバロンは疲れていると思うので明日でもいいかなと」
ミーシャがそう言うとバロンが
「こんなにあっさり負けたから全く疲れていない。今やろう」
そう言ってバロン対ミーシャの戦いが始まった。
勝負の内容はというと
バロンは四大魔法を器用に使いこなしミーシャの突進を防ぐ。ミーシャはアイスランスでバロンの注意を逸らしながらバロンに徐々に近づいていく。バロンは土魔法が得意の防御型の魔法剣士だ。対してミーシャは本来であれば水魔法でバロンと同様に防御主体で戦うべきなのかもしれないが、そこは暴走エルフ、防御という事は頭から抜けているのか突進しまくっている。
バロンはミーシャに近づかれると
あっさり後ろを取られてチェックメイトとなった。
これに驚いたのはやはり3人だけ……いやローレンツも含めて4人だった。
「こんな短期間でどれだけ強くなっているんだ……」
バロンはそう言いながら項垂れた。少しバロンとドミニクが気の毒になってきたな。今度機会があれば一緒に迷宮に潜ってレベル上げでもしよう……
結局クラリスとエリーは挑戦権を使わなかった。
最終序列はこうだ。
序列1位 マルス・ブライアント
序列2位 クラリス・ランパード
序列3位 エリー・レオ
序列4位 カレン・リオネル
序列5位 ミーシャ・フェブラント
序列6位 バロン・ラインハルト
序列7位 ドミニク・アウグス
序列8位 ミネルバ・ゼビウス
上位5名が【黎明】になった。
下位3名が【創成】だ。
【創成】というのはバロンがリーダーのパーティで意味は【黎明】と同じだ。きっと一緒にやっていこうという意味だと思うのだが【黎明】女子メンバーの何たる仕打ち……バロン許してくれ……
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