第103話 豊作
2030年8月5日
「今日の目標は2層まで辿り着くことだ。できれば安全地帯まで辿り着きたいが、2層にあるとは限らない。アルメリアのように3層にあるという事もあるから、見つからなくてもめげないで頑張ろう!」
「「「「おおおぉぉぉーーー!!!」」」」
このやり取りがあったのは朝の7時ごろ。
クラリスとエリーが起きて朝ごはんを食べて1時間が経ち、これから出発しようという時に俺が檄を飛ばしたのだ。
そして30分後、俺たちは2層への階段を下っている……昨日野営した通路のすぐ先に2層へ続く大部屋があった。
ハイオークとコボルトロードが何匹かまとめて出てきたが、クラリスも参戦している今相手にもならない。
もちろんミーシャが優先で戦闘をするようにしているが。
ちょっとさっきの檄が恥ずかしい……
2層へ降りると今まで見たことのない広さの部屋だった。
100m四方はあるだろう。
50体くらいのハイオークが全員コボルトロードに騎乗しており、1匹だけ色が違うオークがいた。
【名前】-
【称号】-
【種族】オークジェネラル
【脅威】C-
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】5
【HP】67/67
【MP】1/1
【筋力】28
【敏捷】10
【魔力】1
【器用】5
【耐久】35
【運】1
【特殊能力】槍術(Lv2/G)
オークジェネラルは正直C-にしてはかなり弱い。
耐久が高いだけでただの的にしかならない。
そしてハイオークとコボルトロードの組み合わせだが、一見するとうまく連携が取れていると思うかもしれないが致命的な弱点があるのだ。
それはハイオークが重すぎて、本来スピードでかく乱してくるコボルト系の特性を台無しにしているのだ。正直騎乗しないほうが絶対にやっかいだ。相当知力が足りない魔物なのだろう……
「さすがに数が多いわね……」
カレンがそう言って後ずさりをする。
ミーシャもいつものように暴走特攻しない。
「じゃあずっと荷物持ちしかしていないから俺がやるよ」
と言って俺は無詠唱でファイアストームを発現させる。
オークやコボルトたちはびっくりして逃げ惑うがウィンドやウィンドインパルスで強制的にファイアストームの中に放り込む。
ファイアストームの中が断末魔でうるさい。
この光景を見ていたカレンが
「火と風の混合魔法……初めて見た……それに発現中に違う魔法って」
カレンは昨日今日と驚いてしかいない気がする。
倒しきったと思ったのだが、オークジェネラルがギリギリ生き残っていた。
「ミーシャ止めを頼む!」
俺がそう言うとミーシャが止めを刺した。
するとカレンが
「やったじゃないミーシャ! レベルが上がっているわよ!」
みんなが「おめでとう」と祝っていると俺も
「ご褒美はレベルだけじゃなかったらしい。ほら宝箱がある!」
俺が指さした方向に宝箱があったので今度は俺が開けた。
もちろん事前に鑑定はすませて罠が無いことは確認済みである。
【名前】
【攻撃】28
【特殊】敏捷+2
【価値】B
【詳細】ミスリル銀で作られた魔槍。槍に風魔法を
完全にミーシャ専用の武器だ。
「これはミーシャの装備だな。使ってくれ」
俺がミーシャに
「え? いいの? これ凄い高いと思うよ?」
「いいんだ。俺たちが装備している物のほとんどが迷宮で出た装備なんだ。そして出た装備は誰が一番使いこなせそうか考えてその人に装備してもらう。だからクラリスのあの豪華な装備もほとんど迷宮で出した装備なんだぞ?」
実際クラリスの装備は、ディフェンダーと偽装の腕輪以外が迷宮の宝箱から出たものだ。
「ありがとう。マルス。みんな。大事にするね」
俺は一つ気になったことがあったので、カレンに聞いた。
「カレン。カレンは人のステータスをどれだけ正確に把握できる?」
「うん? 結構正確に把握できていると思うけれども……」
「ではクラリスを鑑定してもらっていいか?」
「いいわよ。何度か見たけれど……間違いなくおかしい数値なのよね。このステータスでバロンにあっさり勝つのは不可能だもの」
カレンが俺に言ってきたステータス値はクラリスが偽装の腕輪で偽装していたステータス値だった。
俺は魔眼の上位互換の天眼を持っているから魔眼からは鑑定されない。
もしも鑑定されたとしても、偽装の腕輪でカモフラージュできるという事か。
「宝箱の罠とか鑑定できるか?」
「罠? 宝箱に罠とかあるの? やったことないから分からないわ。宝箱を見たのも初めてだったし……でも何となくだけど鑑定できなそうね」
「そうか……分かった。答えてくれてありがとう」
2層目は大部屋が多く通路も広い。
しかもずっと1本道なので順調に進んだ。
「もう完全にハイオークとコボルトロードは慣れたよ。まぁ油断するつもりはないけど、攻撃を食らわない気がする。この幻影のローブの使いかたも分かってきたし」
そう、実はミーシャはこのリスター帝国学校へ入学するときからガスターが装備していた幻影のローブを装備していたのだ。
そう言えばまだ鑑定したことは無かったな……
【名前】幻影のローブ
【防御】10
【特殊】敏捷+2
【価値】B-
【詳細】装備者の気配を察知しづらくなる。
ミーシャが使い方と言っているから、ただ装備していれば気配が察知しづらくなるわけではないのかもしれない。
サーチで察知しづらいのかもしれないので、今度ガスターと戦う時は天眼で意識して戦う事にしよう。
その後も順調に進み、なんと3層への階段も見つかった。
ちなみに魔物を倒したときに出る魔石は全て置いて来ている。
ジークに言ったら怒られるかもしれないが、俺たちに今必要なのは金ではないからな。
「本当にこのパーティにいると今までの苦労は何だったのかしら。私がこの学校に来る前にパワーレベリングをしていた時の苦労をみんなに教えてあげたいわ……どのくらいお金がかかったのかとか」
カレンがため息交じりに言うとミーシャも
「私もママと一緒に旅をしていたけど、こんなに魔物をサクサクと倒した事なんてないよ。もっと慎重に進んでいたしね」
「まぁ俺たちもアルメリア迷宮ではかなり苦戦していたから油断はできないな。アルメリア迷宮は3層の敵が強くて先に進むのが怖かったくらいだったし」
脅威度Cと脅威度Bの強さの違いは桁外れなので油断はできない。
3層に降りると1体のコボルトと10体のオークジェネラルがいた。
【名前】-
【称号】-
【種族】コボルトキング
【脅威】C
【状態】良好
【年齢】1歳
【レベル】3
【HP】38/38
【MP】1/1
【筋力】24
【敏捷】36
【魔力】1
【器用】8
【耐久】14
【運】1
キングと冠している割りにはかなり弱い気がする。
ゴブリンキングの方が厄介な特殊能力を持っていたが、こいつに関しては特に何もない。
マザーアントより速くて、脆い感じか……
「あのコボルトは今までの敵よりは速い。敏捷値はミーシャよりも上だ! 気をつけろ!」
「マルスあのコボルトは私にやらせて!」
ミーシャがそう言ったので俺たちはオークジェネラルを先に倒すことにした。
オークジェネラルは硬いだけでただの経験値だ。
倒すのに時間はかかったが、余裕だった。
そしてミーシャとコボルトキングが1対1で戦っている。
自分よりも敏捷値が高いモンスターを相手にミーシャは苦戦をしている。
しかしミーシャの表情に焦りはなかった。
「アイスランス!」
氷の槍をコボルトキングに放ち、コボルトキングが回避したところを
ちなみにミーシャのウィンドではコボルトキングの攻撃は少ししか減衰しないので自分の身体を飛ばしたほうがダメージは軽減できる。
少しでもダメージを食らったら俺がヒールで治す。
それを何度か繰り返しながら、コボルトキングを倒した。
「やったぁ! でも今度は1人で完封して見せる!」
ミーシャが喜びながら言うと、部屋の隅に宝箱を見つけた。
「今日は大豊作だな! やはり新しくできた迷宮は宝箱が出やすいのかもな!」
俺はそう言いながら宝箱を鑑定しながら宝箱を開けた。
宝箱が出てきたことに喜んでいて、カレンに鑑定してもらうのを忘れていた。
【名前】
【攻撃】28
【特殊】魔力+2
【価値】B
【詳細】ミスリル銀で作られた魔槍。
槍に火魔法を
これは完全にアイク用の武器だ。
これはアイク兄にあげるとしよう。結婚祝い……に槍はないか……
「さてもう大分進んだことだし、今日は次の部屋まで行ったら野営にしよう」
俺たちは次の部屋に進むと次の部屋の入り口が白く光っていた。
「
「やったわね! これで拠点もできたことだし狩りに集中できるわね!」
カレンがそう言うと他の3人も頷く。
俺は早速風呂釜とベッドの制作に取り掛かった。
今度は風呂釜を5つ作った。
そして土魔法でパーティションを作りプライベートの確保もした。
「まるで部屋のようだね。これだったら何日でもここに居られるね」
ミーシャが嬉しそうに言うと、カレンも
「そうね。私も最初からマルスと迷宮探索していれば迷宮嫌いではなかったかも。どうしても汗や魔物の血を浴びると洗い流したくなるもの」
他の冒険者が当分来る事は無いだろうと思い、やりたい放題カスタムした。
「他に何か欲しいものがあったら言ってくれ。出来る限り作れるものは作るから」
俺がそう言うとミーシャが
「おいしいごはん!」
と言ってきた。迷宮で一番言ってはいけない言葉な気がする……するとクラリスが
「まだ携帯食はいっぱいあるけど、さっきのオークジェネラルって食べられたりしないの? 聞いた話によるとオークって美味しいって言うじゃない? コボルトキングも頑張れば鳥に見えなくもないからもしかしたら……」
逞しい……だが俺も同じことを考えていた。
「そうだな。オークジェネラルは恐らく普通のオークよりは引き締まっているから柔らかくは無いと思うが、その分栄養価は高いかもしれないな。コボルトキングは……今度試してみるか……」
カレンとミーシャが少し嫌な顔をしていた。
まぁミーシャが言い出しっぺだから自業自得だ。
「……オーク……美味しい……」
ここにもう既にオークを食べたことがある者がいた。
みんなでエリーにオークの味を聞きながら俺たちは寝ることにした。
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