第61話 撤退戦
目が覚めるとかなり周囲が慌ただしかった。
水魔法、土魔法使いはジークを除いて全員いなかったし、マリアもいなかった。
「どうしたんですか!?」
俺は忙しそうに指揮を執っているジークに聞くとジークが
「おぉ。マルス起きたか! 土魔法で塞いでいたのが突破されて、水魔法で塞いでいる。すぐに氷も溶かされてしまうから戦闘準備に入ってくれ!」
「はい。わかりました。魔法使いの人たちはどうしたのですか?」
俺は戦闘準備に入りアイクとクラリスがスタンバイしている方に向かいながらジークに聞いた。
「MP枯渇寸前まで階段を塞いでもらっていたから、先に迷宮の外に出てもらった。もしもマルスが起きなかったら、俺たちも撤退しながら戦うつもりだった!」
俺がクラリスとアイクの所に着いたときに階段を塞いでいた氷が破壊された。
真っ先に出てきた蟻は今までと色が違った。キラーアントは黒なのだが、目の前の蟻は赤だ。
【名前】-
【称号】-
【種族】ガードアント
【脅威】D
【状態】良好
【年齢】2歳
【レベル】10
【HP】30/30
【MP】1/1
【筋力】24
【敏捷】24
【魔力】1
【器用】1
【耐久】26
【運】1
マザーアントよりは弱いが、キラーアントよりは強い。脅威度はD。やれない相手ではない。
キラーアントとガードアントがちょうど半分ずつ出てきているようだ。
「名前はガードアント脅威度はDです。やれない相手ではないので、頑張りましょう!」
俺はそう言いながらトルネードを使い階段付近の蟻たちを巻き込んだ。
それに合わせてみんなが蟻たちを倒していく。クラリスが弓を射ながら
「ガードって盾……いや盾はシールド……じゃあガードは親衛隊?……マルスもしかしてガードアントがここにいるということは、ガードアントが守るべき蟻が近くにいるということではないかしら? より一層注意をした方がいいかもしれないわね」
「そうだな。トルネードに変なのが引っ掛かったら教える」
俺たちはこのガードアントを少し見くびっていた。
ガードアントに接近して剣でとどめを刺そうとするとガードアントは口から酸のような物を吐いてきた。
俺はとっさに風纏衣(シルフィード)を展開して酸を吹き飛ばしたが、蒼の牙のリーダーのバンが酸を直接くらってしまったらしく体の一部が火傷していた。するとジークがすかさず
「マルスとクラリスでガードアントを倒してくれ! ほかの者はキラーアントだ。アイクはどちらか厳しそうな方の応援を頼む!」
その指示に従ったのは俺とクラリスとアイクだけだった。
いや厳密には、従えたのはと言った方が正しいのかもしれない。
俺とクラリスの前にキラーアントが出てきてもキラーアントを倒してからガードアントを倒しに行ける。
しかし蒼の牙、赤き翼、黒い三狼星の前にどの蟻が来てもこの3パーティは目の前の敵で精一杯なのでキラーアントを優先とか言ってられないのだ。
そのためアイクはずっと3パーティの援護をしている。それでも3パーティの苦戦は続く。
今度は瀕死状態のガードアントがネックとなった。
今までは瀕死状態の蟻は放っておいても無害だったのだが、ガードアントは酸を吐いてくる。
先ほどまでは魔法使いたちが瀕死の蟻たちを倒していたのだが、今はもうジークしかいない。
そしてさらに悪いことにマザーアント2体ともう1体また別の蟻がトルネードに引っかかるのが分かった。
この蟻を守るようにガードアントがわらわら2層から上がってくるのが分かる。
「多分ボスみたいなのが上がってきます! マザーアント2体とガードアントも大量に上がってきます!」
ボスみたいな蟻はマザーアントよりも少し大きいくらいだが、色がガードアントよりも赤い。
【名前】-
【称号】-
【種族】クイーンアント
【脅威】B-
【状態】良好
【年齢】3歳
【レベル】1
【HP】120/131
【MP】3/3
【筋力】40
【敏捷】35
【魔力】1
【器用】10
【耐久】54
【運】1
これはやばい! 脅威度B-だ!
「父上、これはまずいです! 撤退の決断を!」
これを相手するには間違いなく雷魔法じゃないと無理だ。ジークは悟ってくれたのか
「今から撤退をする! 蒼の牙、赤き翼、黒い三狼星の3パーティは目の前の敵を倒したら、即撤退だ! アイクはマルスとクラリスをサポートしながら撤退! マルスとクラリスは通路まで撤退したら一撃かましてから撤退を頼む! また道中の縛り上げている魔物は3パーティで倒しながら進んでいけ!」
俺は階段付近のトルネードを解き、3パーティの方にトルネードを発現させて撤退をスムーズにした。
「マルス助かる! 先に行ってるぞ!」
蒼の牙のリーダーのバンが俺にそう言って撤退を開始すると、赤き翼、黒い三狼星も同様に撤退し始めた。ジークはすでに通路にまで達している。
俺とクラリスとアイクも撤退を始めるが、クイーンアントが何かをまき散らしながら突っ込んでくる。
その何かに触れたガードアントは「シュー」と言った音を立てて溶けていく。
俺はクイーンアントをウィンドインパルスで遠ざけながら通路の方に逃げていく。
ウィンドインパルスで吹っ飛ばすことは出来なくても、ある程度後退させることは出来るのだ。
アイクがクイーンアントとマザーアントに向けてフレアを飛ばしながら
「俺も先に行く! あと10秒後くらいに雷魔法を頼む! 無理はするなよ!」
アイクがそう言って通路の先の方へ向かっていくと俺たちも通路の中腹くらいまで逃げることができた。
蟻たちの方を振り返ると大量の蟻たちが通路を埋め尽くすようにこっちに向かってくる。
俺は一番前にいる蟻たちをウィンドで足止めし、クイーンアントが来るのを待つ。
クイーンアントが目の前の蟻たちを跳ね除けて先頭に立つ。相変わらず口から何かをまき散らしている。
アイクのフレアが直撃しているはずなのに【HP】90/131だった。
「ライトニング!」
俺の体から金色の光がクイーンアントに直撃するとクイーンアントは涎みたいなものを垂らしながら固まった。クイーンアントを鑑定すると【HP】8/131、【状態】感電(大)となっていた。
クイーンアントの周りにいたマザーアントやガードアントは死んでいた。
「クラリス、クイーンアントに止めを刺してくれ!」
「分かったわ! でもこれで私たちの勝ちよね?」
そう言いながらクラリスはクイーンアントに止めを刺した。
もう普通の弓矢は撤退するときに邪魔になるから、魔法の弓を使って止めを刺していた。
「まだ、勝ちかは分からない、どうやらまだまだ階段から蟻たちが来ているっぽい。普通に考えて女王アリは守られる存在のはずだから、前線に来ないと思うのだが……」
俺がそう言うとクラリスもそう思ったらしく
「そうね……もしかしたらアルゼンチン蟻みたいな女王アリがたくさんいるって事もありえるわね」
「ああ。とにかく早く戻ろう」
蟻たちは最前線で死んでいるクイーンアントやマザーアント達が邪魔でなかなか追って来られないはずだ。
俺たちは急いでジーク達の後を追って迷宮から脱出した。
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