第39話 初エルフ

「マルス!大丈夫?」


 クラリスが心配そうに駆け寄ってきた。


「ああ、今のはクラリスが守ってくれたのか?」


「分からない。ただただ必死だったから。怪我は? 本当に大丈夫?」


「本当に大丈夫だよ。ただ今になって震えてきたよ」


「ごめんなさい。私が行きたいって言ったから……」


「いや、いいんだ。俺も軽い気持ちで引き受けてしまったし……そういえば女の子はどこ? 大丈夫だった?」


「ええ、馬車の中に避難してもらったわ。まだ怖がっているかもしれないから早く戻りましょう」


 俺たちは地獄の蛇ヘルスネークの魔石を回収し、すぐに馬車に戻った。


 馬車には髪が長く、髪の毛の色が緑色で耳が尖っている少女がいた。


「大丈夫かい? 怪我はないかい?」


「冒険者? 商人に言われて私を取り戻しに来たの?絶対に戻らないから!」


「確かに私たちは冒険者だけど、あなたを商人に渡したりはしないわ。あなたはどこから来たの? 私たちは西の方に向かうんだけど目的地が西だったら途中まで一緒に行く?」


「私を商人の所へ連れて行かないの? 本当に?」


「本当さ。僕たちはそんなことしない。だから教えてくれ。どこに行きたい? 可能な限り協力はする」


「あ、ありがとうございます。本当に……助けてもくれて……」


 少女は涙ながらに言った。


「私はどこに行けばいいのか分からないのです……お母さんと一緒に来たから……街でお母さんとはぐれて……商人がお母さんの居場所知っているからついておいでって言われて……」


「典型的なやつだな……お母さんとはぐれたのはいつ? どこでか分かるかい?」


「多分3日前、場所は分からないけど迷宮都市って言ってた」


「分かった。じゃあこの先の街で迷宮都市を探してみよう。俺はマルス、よろしく」


「私はクラリスっていうの。よろしくね」


「私はミーシャ。少しの間お世話になります」


 俺はミーシャを鑑定してみた。


【名前】ミーシャ・フェブラント

【称号】-

【身分】妖精族エルフ・平民

【状態】良好

【年齢】6歳

【レベル】1

【HP】5/5

【MP】12/12

【筋力】2

【敏捷】4

【魔力】3

【器用】3

【耐久】2

【運】5

【特殊能力】槍術(Lv0/B)

【特殊能力】水魔法(Lv0/C)

【特殊能力】風魔法(Lv0/D)


 エルフってもっと遠距離攻撃に秀でていると思ったんだけど、槍術が得意なのか。


 ステータスは思っていた通り敏捷が高くて筋力と耐久値が低い。


 それにしても俺らと同じ6歳か……かなり小さく見えるな。


 エルフは15歳くらいまでは人間と一緒の速度で成長すると聞いた気がするんだけど……個体差かな?


「じゃあミーシャ、早速だけど身を清めようか? 着ている服も汚れてしまっているし、クラリスの服を借りるのはどうだろう?」


 俺が言うとクラリスとミーシャが変な顔で俺を見た。


「マルス、ちょっと変なこと考えてないでしょうね?」


「マルスさんって……もう……?」


「そんなわけないだろう……し、信じてください……」


 俺はそう言って手からお湯を出した。もちろん顔は後ろを向いている。


 これからのクラリスとの円滑な関係を保つためにも間違っても前を向いてはいけない。


 ミーシャの服を脱ぐ音が聞こえる……俺は貝だ。貝になりたい……



 一通りミーシャが洗い終わって、クラリスの服に着替えた。


 少しダブダブだがおかしくはない。ちなみに服はパーカーに白いパンツだ。


 パーカーを選んだのは耳と髪の毛の色が目立たないようにだ。


 それにしてもエルフってやっぱり美形なんだな。


 こんな子を奴隷にするなんて、けしからん。商人には絶対に引き渡さないぞ。



 ミーシャの着替えが終わったらすぐに先ほどの街から西に行った街へ向かった。


 馬車の中すでに打ち解けていた。


 同じ年という事もあるだろう。また境遇も似ているのかもしれない。


 まぁ俺は御者台に座らなければならないからな。


 女の子同士の方が話も盛り上がるだろう。



 道中俺は自分の状態を知るために鑑定してみた。


 ここで強敵とか出てきたら戦うか逃げるかの判断をしないといけないしな。


【名前】マルス・ブライアント

【称号】風王/ゴブリン虐殺者

【身分】人族・ブライアント子爵家次男

【状態】良好

【年齢】6歳

【レベル】14

【HP】43/43

【MP】2100/6020

【筋力】36

【敏捷】38

【魔力】48

【器用】37

【耐久】37

【運】30

【固有能力】天賦(LvMAX)

【固有能力】天眼(Lv8)

【固有能力】雷魔法(Lv0/S)

【特殊能力】剣術(Lv6/B)

【特殊能力】火魔法(Lv2/F)

【特殊能力】水魔法(Lv1/G)

【特殊能力】土魔法(Lv1/G)

【特殊能力】風魔法(Lv8/A)

【特殊能力】神聖魔法(Lv4/B)



 なんか驚くことばかりだ。


 レベルは上がってはいなかった。魔力と敏捷が1ずつ上がっていたのはある意味予想通りだった。


 天眼がLv8、神聖魔法がLv4になった。


 天眼は何が変わったのか色々試してみよう。



 一番驚いたことが火魔法の才能がGからFに上がったことだ。


 才能が上がることはありえないはずなんだが……でも実際に俺はFに上がっていてLv2になっていた。


 努力をしたらしただけ恵まれる才能……亜神様ありがとうございます。



 あと絶対に雷魔法を習得しなければならない。


 今までは風魔法と剣術だけでなんとかなったが、脅威度Bの魔物相手には通用しない可能性がある。ただ毎日のように雷魔法を試しているが、どうにもならない。



 次にクラリスを鑑定した。



【名前】クラリス・ランパード

【称号】-

【身分】人族・ランパード男爵家長女

【状態】良好

【年齢】6歳

【レベル】16

【HP】33/33

【MP】184/245

【筋力】22

【敏捷】22

【魔力】24

【器用】22

【耐久】21

【運】20

【固有能力】結界魔法(Lv1/A)

【特殊能力】剣術(Lv4/C)

【特殊能力】弓術(Lv4/B)

【特殊能力】神聖魔法(Lv4/A)



 なんで俺のレベルが上がらなくてクラリスのレベルが上がっているのだろうか?


 まぁ小さいことは気にしない。ワカ……


 ついに結界魔法を覚えていた!あの魔法陣はクラリスの魔法だった。


 あの魔法が意図的に出来るようになればクラリスは鉄壁の防御となる。



 俺はMPがかなり減ってしまったが、脅威度Cの魔物くらいであれば戦っても問題ないだろう。耐久値が高い魔物が出現した場合は撤退を視野に入れるが……



 隣の町に行くまでに散発的に魔物と遭遇した。


 コボルトやゴブリンだったので、クラリスに倒してもらった。


 クラリスが戦闘から帰ってくるとミーシャがはしゃいでいる。


「クラリス強いね。同じ年くらいに見えるのに。私もクラリスのように強くなりたい」


「私はまだまだよ。私よりもマルスの方が強いわ。あと私は6歳よ。ミーシャは?」


「マルスが強いのはなんとなく分かってた。大きい蛇と戦っていたからね。私も6歳だよ。同じ年なのに……クラリスは本当に凄い。マルスはクラリスの従者さん?」


「違うよ、私とマルスは……友達ね。


 俺は二人の会話に耳がダンボになっていた。


 いつの間にかミーシャも俺のことを敬称なしで呼ぶようになっていた。


 そして先ほどの商人がいた隣町のガナルに着いた。

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