第38話 苦戦
冒険者ギルドを出た俺たちは馬車に向かいながら話した。
「マルスはエルフ族ってみたことある?」
「俺はないよ。クラリスは?」
「私もない。それどころか人族しか見たことない。王都や大都市、大きな迷宮都市には獣人やドワーフもいるって聞いたことあるんだけど……魔の森って次の街に行くときに近くを通る?」
「あっ、俺が最初に住んでいたアルメリアという所で獣人らしき人は見たことあるかもしれない。魔の森の近くは通らないと思うよ。なんせビートル伯爵のルートは安全第一のルートだからね」
「じゃあちょっとだけ近くを通る道にしてみない?」
「うーん……クラリスを危険にさらしたくないなぁ……」
俺たちは馬車の所に着いて馬を走らせる。
「やっぱり、少し気になるのよねぇ……少しくらい……ダメ? エルフって気になる」
正直俺もエルフを見てみたいという思いがあった。
「じゃあ少しだけ魔の森の近くを通るルートで行こうか。だけどクラリスも外を警戒してくれ」
そう言って次の街へのルートを少し変更した。
街から10km以上離れたところに来ていた。
遠くの方で魔物の気配がした。
最近風を発してなんとなくだが、人や魔物を索敵できるようになっていた。
風魔法って便利だ。
しかし魔力の風を発しているので、魔力に敏感な魔物は気づいてしまう。
まぁどこから発しているかは分からないだろうから警戒される程度だが。
1km先の森、あれが魔の森か……森に魔力のヴェールがかかっているように見える。
何かやばい予感がした。
俺はこういう時は絶対に無理はしない。最悪引き返そうと思った。
クラリスも異変に気付いたようだ。
「どうしたの?」
「遠くの森に魔物がいるかもしれない。多分魔の森だと思う。今の俺たちでは敵わない可能性がある」
「やっぱりそんなに強いの?噂以上かもしれないってことね」
「分からないけど用心はした方がいい。確実にエルフがここに来たという訳ではないんだし、エルフの件は諦めよう」
そう言ってかなり大回りをした。
人の気配はない。もしかしたらさっき依頼されていたエルフの奴隷というのはこっちには来ていないのかもしれない。
幸い魔物は俺たちに気づいてないっぽい。
難なく切り抜けたのだが、俺たちが通り過ぎた後に誰かが魔物の方に向かっている。
魔物の方にばかり気を取られていて、俺らの後方には全然気が向いていなかった。
それにしても魔物に気づいていないのか? こいつはエルフか? 危険を冒して助けに行くべきか?
もし俺が死んだらクラリスはこの先1人になってしまう。
ビートル伯爵やグレイ、エルナとの約束も違えてしまう。
俺が逡巡しているとクラリスが俺の表情を読み取ったのか質問してくる。
「もしかして、魔物の方に誰か向かっているの?」
いやそんなに俺の表情ってわかりやすいのか? 恋心なんて完全にバレているのか?
「ああ……」
「助けに行きましょう!」
「危なすぎる……」
「でも! 絶対にいかなきゃダメ! コンビニにマルスが助けに来てくれた時私は嬉しかったし、助かったもん!」
「……そうだな。ただし最大限の警戒はする。俺が先に行くからクラリスは後からついて来てくれ」
「ダメ。私も一緒に行くわ。
何を言っても付いてきそうなので俺は黙ってうなずくと、ゆっくりと魔物がいるであろう森の方に近づいた。
魔物は大きい蛇だった。
【名前】-
【称号】-
【種族】
【脅威】B-
【状態】良好
【年齢】3歳
【レベル】5
【HP】98/98
【MP】3/3
【筋力】38
【敏捷】50
【魔力】1
【器用】42
【耐久】62
【運】1
規格外の強さだ!これでB-の強さはやばい。
特殊能力は無いらしいが、間違いなく牙は猛毒だ。
小さい影が
このままではまずいと思った俺は、魔力を込めてウィンドカッターを
当たる直前で察知したのか
距離が遠かったにしてもあれを躱されるとは思わなかった。
小さい影は俺らよりも少し小さい少女だった。少女は
その固まっている少女をクラリスが助け出す。
よし、これで自分の心配をするだけで済む。
ウィンドカッターは直撃しなくても、少しずつ
ん? 血とか出ないのか? と思ってHPを見るとHPが減っていない!
こいつは脱皮した皮を意識して
まずその装備を剝がしてやる。
死闘のはじまりであった。
徐々に
トルネードが直撃し、脱皮した皮をすべて剥ぎ取り、ようやく
ダメージを受けた
何度目かの噛みつき攻撃を躱した後だった。
噛みつき攻撃を躱し、反撃に出ようとした時、
自分の何倍もの大きさの蛇の尾が直撃した俺は吹っ飛ばされた。
とっさに右手で防御したのが幸いして体にダメージはあまり無かったが、右手は相当な深手を負っている。
マルスは魔物との戦いでここまでの傷を負ったのは初めてだった。
しかしマルスは不思議と焦ってはいなかった。それはマルスの類い稀なる才能だけではなく【天賦】によるものであった。
俺はヒールをかけながら
どんどん
ただ防戦一方が悪いわけではない。
回避に専念しているうちに
10分以上躱し続けていた。クラリスは保護した少女を安全な場所に退避させてきたのか戻ってきており、草むらから隠れて見ている。
恐らく今出て行っても足手まといになると感じたのだろう。
完全に右手が回復したので、俺は徐々に反撃に出る。
攻撃を躱した瞬間にほぼゼロ距離からのウィンドカッターを放つ。
さすがにこの距離からでは躱しきれないらしく、
このまま押し切れると思ったが、そう簡単にはいかなかった。
涎がマントにかかるとマントがシューという音と共に溶けていく。溶解液のようだ。
涎のせいで
くそ、ギリギリで躱せないとウィンドカッターが当たらない。
俺はこのままでは無駄に時間とMPだけが無くなっていくと思った。
先ほどまでの防戦一方とはわけが違う。
そして涎をまき散らしながらまた
俺はウィンドを放ち
この距離があれば今の俺の最大魔法を唱えることが出来る。そう思って俺は集中をし魔法を唱えた。
「ファイアストーム!!!」
☆☆☆
私は少女を馬車へ避難させるとマルスの方へ戻り、マルスと
途中までマルスが優位に戦闘を進めていたが、
私が参戦すると必ずマルスの足を引っ張る……もしも私が参戦するときはしっかり見極めないと……そう思いながら
今また
ただ今回はよほど距離を取りたかったのか、マルスと
マルスは何かを狙っている。
ただ私は何か嫌な予感がした。私は自分でもどうしてか理解できないくらい状況が見えていたし、集中もしていた。
マルスが魔法を唱えると同時に
マルスは魔法に集中をしていて異常なスピードの
そう思うと何故か私は自分の魔力をマルスの周りに浴びせていた……
☆☆☆
ファイアストームを唱えた俺は目の前にいる
50mくらいの距離があったのにもう5mの所まで来ている。
ファイアストームが発現するまであと3秒くらいはかかる。
間違いなくこのままでは嚙み殺されると思った時だった。
綺麗な魔法陣が俺を包んでいく。
その魔法陣の中に
魔法陣は
激しい炎の竜巻が
俺のファイアストームは風魔法9と火魔法1の割合で出来ている。
火魔法は得意ではないが、小さい火を大きくするのは風の役割だ。
そして
そしてついに激しいファイアストームの中で
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