第27話 パワーレベリング

「……そうか……分かった。クラリス、この街の為にしっかり頑張るんだぞ」


 今俺はクラリスと一緒にランパード家でグレイと話している。


 そして冒険者ギルドでビートル伯爵と話した内容をグレイに話した。


 そしたらさっきの返答だ。正直俺は猛反対されると思った。


 自分の子供が……6歳の女の子が、こんなに可愛い女の子が迷宮に潜るなんて理解されないと思った。しかも同行者がいくら強いと言っても6歳の子供だ。


「マルス君、クラリスをよろしく頼む」


「はい。必ずお守り致します。それでは僕は宿を取ってまいりますので、今日は失礼します。明日伺いますので、よろしくお願いします」


「何を言っているの? マルス。うちに泊まりなさいよ。ね? 父さん」


「う、む……そうだな、マルス君には大したお礼もできていない。ランパード家を救ってくれた恩人だからな。狭いところだが泊ってくれ」


 俺はやんわり断ったのだが、押し切られてしまった。


 しかしクラリスの部屋には泊められないと言われた。当然だよね。


 ただ就寝前まで二人でクラリスの部屋で話をした。クラリスの能力と俺の能力だ。


 俺は小さな声で、日本語で話した。


『クラリスに話すことがある。聞いてくれるかい?』


 クラリスは日本語で話をしたことにびっくりしている。


 しかしすぐに特別な事情があると悟ってくれたのであろう。


『ええ。何?』


『まず俺は鑑定というユニークスキルを持っている。クラリスには剣術と弓術と神聖魔法の適性がある。そしてクラリスに与えられたユニークスキルは結界魔法だ』


『弓って私が使うの? 鑑定の儀で弓術の才能がある事は分かっていたけど……それに結界魔法の才能なんて言われなかった……結界魔法ってどうやって使うの?』


『弓はクラリスに使ってもらう。クラリスは剣術よりも弓術の才能の方があるらしい。そして神聖魔法は弓術よりも高い才能だ。あと申し訳ないがユニークスキルはどうやって使うか分からない。迷宮でしっかりレベルを上げて使えるようにしよう』


『分かったわ。あとは何かある?』


『MPは毎日枯渇させた方がいい。最大MPが上がるから。恐らく魔法の才能があるものは意識不明になったり、死んだりはしない。MP欠乏症で寝てしまうだけだ』


『ええ。それはなんとなく分かっていたわ。だから毎日のようにヒールを使っていたもの。でもどうして魔法のことをマルスが?』


『……実は俺は剣士ではない』


『剣聖ってこと?』


『いや魔術師だ。俺は風魔法を主体とする魔術師なんだ』


『!!!!!!!!』


 クラリスはびっくりした声を漏らさないように、必死に抑えていた。


『噓でしょ? あんなに剣術が凄いのに魔術師?でも風魔法って確か一番不遇って聞いた気が……』


『確かにこの世界では土魔法と水魔法が一番優れていると聞いたことがあるけど、風魔法もそれなりに強いと思う。明日迷宮に潜った時に見せるよ。あと俺も神聖魔法が使えるんだ。だからクラリスが傷ついてもヒールで治せる』


『神聖魔法使いって他の魔法が使えないんじゃ……あ、でも私も結界魔法が……なんかびっくりしすぎて疲れちゃった。今日はもう眠いから明日また聞かせて?』


『ああ。分かった。それじゃあおやすみなさい』


『おやすみなさい』


 そう言っても俺はクラリスの部屋から出た。


 ドアの前のグレイが隠れる時間を作ってあげないとね。


 まぁずっと日本語でしかも聞かれないように小さい声で話していたから会話の内容はわかるはずないんだけどね。



 翌朝俺たちはビートル伯爵に弓をもらいに行ってから迷宮に行くことにした。


 念のため回復薬も買っておこうと思ったが、もうすでに品切れだった。


 お店の人に聞いたら回復薬が無くてただでさえ高い回復薬が高騰しているらしい。


 事前に迷宮のことを聞いていたので今日は安全地帯まで行って戻ってくることにした。


 本当であれば安全地帯で泊ってレベル上げをしたいんだけど……下心はもちろんないよ?


 そしてビートル伯爵や騎士団、街の住民たちに見送られながら俺たちは迷宮に入った。


 グランザム迷宮の1層はイルグシア迷宮と同じような構造だった。


 構造は一緒なのだが一つ違うのはゴブリンの数がグランザム迷宮のほうが多い。


 所によっては通路の隙間がないというくらいゴブリン渋滞が起きている。


 俺は剣の腹でゴブリン達を殴っていく。気絶や戦闘不能にするためだ。ゴブリン達が密集していて隙間が無いときはウィンドで吹っ飛ばして気絶させた。気絶させた所でクラリスが止めを刺す。いわゆるパワーレベリングだ。


「なんだか悪いわね。他の冒険者たちは苦労してレベルを上げているのに私はこんなに楽をして……」


 そう言いながらクラリスがでとどめを刺している。


 弓はと言うと6歳の女の子に弓は引けないらしく、レベルが上がって筋力値があがるまでは剣を使う事になった。


「緊急事態だから仕方ないさ」


 構造がイルグシア迷宮と同じなのでイルグシア迷宮の2層に上がる道順で進んでいく。


 すると大部屋に着いた。


 イルグシア迷宮ではこの先が2層に上がる階段なのだが、ここでもイルグシア迷宮と違うところがあった。それは部屋の大きさと魔物の数だ。


 ホブゴブリン20体とゴブリンメイジが10体いるし、部屋も大きい。


 今の俺にとっては何の問題もないのだが、ペーパーから上がりたての冒険者たちにはきついだろう。先ほどと同じように気絶させてからクラリスが止めをさす。


 あっという間に敵を倒しきると部屋の隅に宝箱があった。


 これは幸先がいいなと思って鑑定すると、罠は無いらしい、価値も3だ。


 宝箱を俺が開けると


【名前】神秘の足輪ミステリアスアンクレット

【特殊】魔力+1

【価値】B-

【詳細】装備しながら歩くとHP回復。


 大当たりキター。


 クラリスに効果を説明し装備してもらった。


 クラリスの綺麗な足に綺麗に装飾されたアクセサリーが輝く。


 ディフェンダーと神秘の足輪で少しは安心できるようになった。


 そしてクラリスのレベルも順調に上がっている



【名前】クラリス・ランパード

【称号】-

【身分】人族・平民

【状態】良好

【年齢】6歳

【レベル】3

【HP】10/10

【MP】116/128

【筋力】6

【敏捷】6

【魔力】7

【器用】6

【耐久】5

【運】20

【固有能力】結界魔法(Lv0/A)

【特殊能力】剣術(Lv2/C)

【特殊能力】弓術(Lv0/B)

【特殊能力】神聖魔法(Lv1/A)



 ただやはりパワーレベリングをしているせいかスキルは全く変わらずか……


 そして大部屋の先に進むとに降りる階段があった。


 ここはイルグシア迷宮と違って下っていく迷宮だった。

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