第3話
深山工務店からはバンは快走していた。交通道路は思いの外空いている。バンの中はクーラーは新品だし快適だった。電話で聞いた住所を目指して川岸へと向かう。
「ふふーん。ふーん。おっと、確かここら辺で……。あー、案外近いんだな。あれ?……あれか?」
目的地周辺でバンを脇に寄せると、静かな住宅街のほぼ中央にある一軒家。そこにだけゴミの山ができていた。
「うーん。住所当ってるからなあ。やっぱここだ」
呼び鈴を鳴らすと、ポーンと軽い音が家の内外に力なくなった。
「すいませーん……深山工務店ですー」
静かだった。まるで誰もいないかのような生活音の無さ。
「すいませんー。岩見さんいらっしゃいますーー? 水漏れの修理に来ましたーーー。……?」
しばらくしても、誰もでない。
まさかここで、ずっと立っているわけにもいかない。
さあ、どうする?
「ほんとよねー。あそこの家の人。とても良い人だったのに」
「まあ、仕方ないのよね。だって……」
「あら、そうかしら?」
ミ―ン。ミ―ン。ミ―ン……。
いくら耳をすませても、蝉の鳴き声。電柱の影の近所のおばさんの話し声。
それしか聞こえてこなかった。
もう少し待つか?
うーん。
おや?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます