第2話 B
思い出した。
SNSを見るとダイレクトメッセージに彼からの連絡。
「今日は来てくれてありがとう。 またおいで」
私には気になっている人がいた。同じ職場で働く先輩だ。
彼女がいると分かっていながら、酔った勢いで車で迎えに来てもらった挙句抱きついてしまった人が。
恋人がいる人を好きになってはいけない。
恋人にも申し訳ないし、自分自身にも幻滅してしまう。
お酒に溺れるのは、自分が弱くなるからだろうか。
昨日も連絡をしてしまっていた。
昼の1時過ぎ。後悔し、彼に返事をする。
アカウントを見てみると、彼はバンドマンだった。
共通の知り合いは多くいて、来週私が行く知人の出るライブにも出演するようだった。
顔が整っているバンドマンで、バーテンダー。
数多の女を泣かせてきた男だろうと、私は判断した。
先輩のことを吹っ切るためかなんなのか、私はたまに彼と連絡をとっていた。
ライブ当日。
私は知人の歌を聞きながら涙を流していた。
真っ直ぐと心に届く歌詞と声。時間はあっという間に過ぎた。
知人の出番は終わり、残すところはあと1組。彼のバンドだった。
ふと思い出した。
「絶対に楽しませるから、楽しみにしてて。約束する」
約束通り、楽しませてくれた。
私は、感動しながら夜道を1人で帰った。
危なかった。
たった30分で彼に心を持っていかれそうだった。
彼にも恋人がいるのに。
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