亡骸

@amikosol

第1話  犬

犬みたい。

初めて彼に会った時、私はそう思った。

夜の3時。


友人が働いているバーで朝まで飲んでいた時のことだ。

私は酷く酔っ払っていて、どのようにして自分の家まで帰ってきたかもあまり覚えていない。

昼過ぎに、頭を抱えながら起きると私の手の甲には”コットン”という文字。

蘇る記憶。後悔。気だるさ。

時計の針は、昼の1時。


しばらく横になり、昨日のことを思い出す。

地元から来てくれた友人と、街へ出かけ、初めて行ったバー。

大人になりたての私たちは足踏みしながら時間をかけて店内へと入っていった。

店内は薄暗くというよりかは、明るく、拍子抜けしたのを覚えている。

23時過ぎ。


あの女優に似てるね、なんて言われている友人の隣で私はお酒を飲む。

慣れっこだ。

自分に取り入って友人の連絡先が欲しいと言ってきた男なんて山ほどいる。私が目当てにされたことなど一度もない。

私は、適度に割られたオペレーターを好んだ。

日をまたいだころから店は活気に溢れる。

無論、私たちは初めての場所であったため、そそくさと帰ろうとしたが地元のお姉さんご一向に捕まった。

「ねえ、一緒に飲まない?」


徐々に増えていくグラス。減っていくボトル。過ぎていく時間。

私は泥酔していた。

お姉さんたちは、優しく楽しい人たちで写真を撮りたがった。

私も楽しい気分でいたら、お姉さんの1人が私と写真を撮るのを拒んだ。

どうやらシャイらしい。

仲が良い店員と3人なら写真を撮っていいと言われ、初めて見たのが彼。


白い毛並みの犬。


長身で、ハイトーンで、細身の彼は、大きな口で私に言う。

「初めまして」






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