神のMany Manny
秋乃晃
明日もきっと、いい日になる。
【0日目】
オレの元に一通の封筒が届いた。若草色のその封筒は、郵便受けにねじ込まれた他の手紙とは一線を画していて、そのほかの
「ふーん……?」
で、そんな
「ふふーん?」
小さい頃からうわさには聞いていた。そういうお役目があるのだと。次の地母神さまを育てるための、子守り。この地域に住む中学生から高校生までの男性がくじ引きで無作為に選ばれる。なぜその年代の男性なのかはわからない。女の子を育てるんだったら他にも適任はいそうなものなのに、その年代の男性に限られていた。不思議。大人たちに聞いても「そういう決まりなんだから」と答えるばかりだった。
とはいえ、オレに回ってくるなんて、にわかに信じがたい。オレは生まれも育ちもこの地域ではあるけれど、すんごい頭がいいわけでもなければ運動ができるわけでもなし。お世辞にもかっこいいわけでもなし。バレンタインのチョコレートはかあちゃんからしかもらってないし。
何度も宛先が間違っていないだろうかと確認し、手紙の本文を読み直して、オレはスマートフォンを片手に握りしめて並んでいる一個一個の数字をにらみながら『地母神運営事務局』へと電話をかける。
相手方は三回目の呼び出し音で電話に出てくれた。
「はい。こちら『地母神運営事務局』です」
男性の事務的な声だ。
そう言わなければならないからそう言っているんですよと、言葉の裏に隠れている本音がチラッと見えてしまうような。
「あの、もしもし。
オレが名乗ると、相手方は「はっはー! 御手洗さま!」と態度を急変させてきた。
「ええと、オレん家にそちらからお手紙が届きまして」
「はい! はい、確かに送らせていただきました!」
「明日からオレが子守りだとか書いてあるんですけど、何かの間違いではないかと思って」
「滅相もない! 御手洗さま宛で間違いないですよ!」
そうなんだ。
オレでいいんだ。
「明日からよろしくお願いしますよ!」
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