アサインスティール! 〜神様のミスで異世界に!?仕方ないので異世界で無双します!〜
エミュエール。
序章
第1話 始まり
太陽が消え、闇が街全体を包む午後九時。
俺は家に向かって、重いリュックを背負って足を動かしていた。
耳に付けているイヤホンからは、とあるアニソンの曲が絶え間なく流れ続けている。
曲調は明るくて元気が出るような歌であり、勉強に部活と身体を酷使した俺を少しだけハッピーな気分にさせてくれる。
そんなハッピーな気分の俺は、周りに人がいないか十分に確認した後、スキップをしながら家までの数十メートルを移動し、家の玄関を開け…。
「ゆうきぃ!!お父さんが浮気してるかも!」
玄関から急に飛び出してきた母と頭が接触して激痛が走る。
イヤホンから流れるアニソンが次第にガンガンと頭に響いてくるようになったので…、いや別の理由で頭がガンガンしている気がするがまぁいい。
足にしがみつき、泣きつく母を無理やり部屋に運び、机に座らせて事情を聞くことにする。
「あのね、お父さんがね、浮気をね」
「それは聞いたよ。一旦お茶を飲んで落ち着こうか」
「えぇ、そうね」
「それは醤油だ!」
危うく母の死因が醤油を飲んだことによる塩分過多になるところだったが、何とか阻止して状況を落ち着かせる。
「最近、お父さんが帰ってこない日があるのよ。仕事だ、仕事だって言うけど、寝泊まりを何回もしないといけない仕事ってなによ?彼、料理人よ?」
「それは俺にも分からないよ。料理人だって仕込みとか…?あるだろうし。そんなことよりも母さんはどうしたいんだ?」
「嘘をつかないで欲しいの。何年か前にも家にも帰らず連絡が途絶えた時も私に心配かけさせて、その時も嘘をついていたようだったし…。確かに家族間でも話せないことは私にもあるけれどさ…」
母さんの持つ醤油瓶…、なんでこの人醤油瓶を持っているんだ。
…じゃなくて、母さんの手が震えている。
きっとこの関係が崩れるのが嫌なのだろう。
だから父さんにも言えないし、一人で抱え込んで、息子の俺に泣く泣く相談したのかもしれない。
父さんも父さんで、同じことを繰り返すなよなぁ…、全く。
「…この関係が続くならそれでもいいんじゃないかな」
「そう、思うのね」
母さんの顔が少し暗くなった気がする。
「だが、俺はそうは思わない。探偵を雇って、徹底的に調べあげて、こっちに利益が出るようにやれることは全部やる」
「ふふっ、そうなのね」
少しびっくりした顔をしたが、直ぐに母さんの顔が笑顔に変わってにっこりとした。
俺はそういうのは許せないタチだからなぁ。変なアドバイスをしてしまっただろうか。
…しかし、自分の親が浮気をしていると思ったらいい気分ではないな。と考えを巡らせながら、風呂と食事を終わらせてゲームをすることなく、床についたのだった。
―――
翌日、それは数年に一度の猛暑日だった。
歩くだけで汗は額から流れ落ち、筋肉が痙攣し始め、足元がふらついていた。
その時に気づくべきだったのだ。自分が熱中症になっているということを。
その日も毎度のこと、重いリュックを背負い学校に登校していた。
その時に、いきなりなにかがパンっと弾けたように目の前が真っ暗になり、平衡感覚が分からなくなり、地面に倒れた痛みが身体を襲った。
『あ。これは終わった』
死を悟った時にはもう遅かった。
身体は思うように動かず、次第に意識が遠のいていくのがわかる。
「…しょーもな」
その言葉を最後に俺の意識は完全に途切れたのだった。
―――
「やぁやぁ、おはよう」
誰かに呼びかけられて、目をパッと空けて即座に立ち上がる。
周りは何も無い真っ白な空間で、なんの物音もしない異様な場所だった。
目の前には、見た目男子中学生くらいの人がいて、俺より少し身長が低い。
「おはよう…ございます」
警戒しつつ、俺はこの状況に至った経緯を考察し始める。
「君は死んだのよ」
「は?」
と思ったが、目の前にいる中学生男児くらいの身長の子が意味不明なことを言い始めた。
そういえば俺は熱中症で倒れて死にかけたんだっけか?ということはここは、病院か?
「ここは死後の世界。病院なんかでは無いよ」
…何だこの少年。
まるで俺が頭で考えたことに答えを言っているかのような、見透かされているようなそんな気分だ。
「事実、見透かしてるからね」
「そう、なんですね」
状況が頭の理解の範疇を越えたが、何故か冷静で焦らなかった。
確かにあの倒れた状況からだと、病院に運ばれてギリ助かった、よりも死んで天国行きました、の方が納得は出来る。
あそこは田舎だから、人通りは皆無だ。
「死んだ君に、何か一つ願いを叶えてあげるよ。
最後の願いか、特にはないが…。
あ、なら…。
「射場隼人、射場夏美のその後だね。射場隼人は結局浮気ではなく、射場夏美へのサプライズを同僚と考えて準備していたらしいよ」
まだ俺が言葉で発していないうちに、俺が求めていた答えを言われてしまった。
…あの二人はちゃんと家族に戻れたみたいだな。
それにしても、たった一人の息子の死を悲しんでくれているだろうか。
はぁ、最低な親不孝者になってしまったな。
「まぁ、諸行無常ってことだよ。いつか来る終わりが今来たってだけのこと。さぁ、天国に一丁送っちゃうよ」
「そうかもしれませんね。ではお願いします」
二人には今後も出来ることなら、仲良く幸せに暮らして欲しいな。
俺はそれを天国からでも見守っておくか。
「おkおk!任せな!では、天国に行ってらぁ…。あ、やべ」
「は?おい、今…」
とても嫌な言葉を聞いた気がするが、彼を信じて(とゆうか身体が言う事を聞かない)、俺は謎の流れに身を任せて、目を瞑るのだった。
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