第1話 色の消えた日



私が中学2年生の頃。私は恋をしていた。同じ美術部の3年、千佳先輩に、一目惚れだった。

それから私は先輩と部活動を通して仲良くなり、いろんな話をした。

ゲームの話や好きなお菓子の話。

好きな人のタイプの話。

その中で先輩は「どんな人であれお互いに思い合える人なら私はいいかな。それがたとえ女の人であろうとも」と言ってくれた。


先輩がくれた一言が嬉しかった。

わたしに勇気をくれた。

だから私はあの日、千佳先輩に告白をした。しかしその告白は断られてしまった。

当然すごくショックだったし、辛かった。ただ先輩は友達のままでいようと、新しい恋を一緒に探そうと言ってくれた。

それだけですごくうれしかった。


しかしその次の日。黒板には『めいはレズビアン』と大きく書かれていた。

私はただショックだった。、周りで聞いていた人がいたのか、それとも...。

とにかくショックだった。


それから私の日常は一変した。

クラスからは冷たい視線を向けられ完全に孤立。

さらには近所でも私がレズビアンなのが広まっており、近所のいろんな人に冷たい視線を向けられ、親からも腫物のような扱いをされる日々。


何より一番辛かったのは部活動だ。自分の筆や絵の具などの画材を捨てられたり

コンクールに提出する絵はぐちゃぐちゃにされて捨てられたこともあった。

ただそれだけなら耐えられた。


しかしある日、いじめの主犯格の子に「あんたもばかだねぇあんな人を好きになるなんて」と言われたのだ。

私は言われた言葉の意味がわからなかった、わかりたくなかった。

だから「なんのこと?」と震えながら聞いた。そしたら信じられない、信じたくない答えが返ってきた。


「あれ?気づかなかったの?千佳先輩はあんたのことをの!」

私は只々唖然とするしかなかった。あの千佳先輩がそんなことをするとはとても思えないし思いたくなかった、でも、心のどこかでは千佳先輩が広めたと考えてしまっていた自分もいた。


その日の帰り、いつもの帰り道。

いじめが始まってからの唯一の癒しの時間。

ただそれも終わり。


「先輩、ひとついいですか」

私は覚悟を決め先輩に話しかけた。

「うん?なに?」

「先輩が私のことを言いふらしたって本当ですか?」


私がそう聞くと先輩の雰囲気が変わった。いつも私に向けてくれる優しい笑顔。

ただいつもとは全く違う空気を纏っていた。そして

「ええ、本当よ」

先輩は私の質問を肯定した。

「どうして、どうしてそんなことをしたんですか!」

私はシンプルな疑問と怒りを先輩にぶつけた。

「だって同性愛者が私に告白してきたのよ。いじった方が面白いじゃない」

先輩はさも当たり前のようにそう言った。


それからどうやって帰ったかは覚えていない。ただ気づいたら自分のベットの上で泣いていた。悔しくて、悲しくて、嗚咽混じりにただ泣き叫んだ。どうして、ただすきになっただけなのに、そんな思いが溢れて止まらなかった。

涙が枯れても嗚咽は止まることはなかった。ただひたすらに叫んだ。

それからどれくらい泣いただろうか、気づいたら私は寝ていた。


そして朝、目を覚ますと私は色を感じなくなっていた。

目に映るもの全てが白黒に映った。


しかし、色を感じなくなってからも私の生活はあまり変わらなかった。

ただ学校に行き、いじめられ、帰る。

変わったことといえば大好きだった唯一の支えを無くし、何も感じずにただ日が過ぎるのを待つようになったことだ。

そんな生活を繰り返すうちに自分の感情は無くなった。


そして気がつけば中学を卒業。私は同じ中学校の人が誰もいない高校を選び進学した。


そして高校の入学式、この日を境に私の世界は大きく変わり始める。









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