第2話 ようこそ剣と魔法の世界へ
目を開けるとそこには、果てしない草原と森林が続く大地と、中世ヨーロッパ風の建物が並ぶ小さな街が見えた。
剣と魔法の世界リンデンヘイムだ。
たぶん、この石畳の向こうに見えるのが、ゲームのスタート地点『始まりの街』だろう。
「凄い…………風の音、陽の光、土と草の匂い……まるで現実世界のようだ。最近のゲームは、ここまで再現されているのか」
自分の姿を確認しようと近くの川を覗く。
そこには、元の世界と同じように、黒髪で黒い瞳、少し童顔でお人好しそうな自分の顔が映っていた。
「あれ? 俺のままだ……最強のアバターでカッコいいキャラになれたんじゃないのか……」
自分と違うキャラに憧れていたが仕方がない。後で課金アイテムで容姿変更できるのかもしれないからな。
自分の両腕を見た。
銀河のような
「これが神器級アイテムの
とりあえず、オヤクソクのセリフを言ってみる。
「ステータスオープン!」
ピッ――
ステータス画面を開き、装備メニューから
――――――――――――
【
暗黒皇帝専用武器
五大原初魔力の根源を司る
宝玉
――――――――――――
「うおおおおっ! 超かっけぇ! テンション上がるわ! これは当たりだろ」
いや、落ち着け俺!
とりあえず、レベル上げをしないとな。
せっかく超貴重な
「先ずは、街に入って情報収集だな。何かのクエストがあるかもしれないし」
そうして、ワクワクした気持ちで街へと入ったのだが、俺の思っていた予想とは違い、クエストもなければギルド登録所もなかった。
「きゃっ!」
バタン!
ササっ!
俺が店に近付くと、誰もが逃げたり店を閉じてしまう。NPCなのかプレーヤーなのか知らないが感じが悪い。
「おい、何だよこれ? 買い物もできないしナビゲーションも出ないぞ」
(初期装備も揃ってるし初期ステータスも高いのだから、先にレベル上げをしようかな……)
俺は街での情報収集を諦めて、森に入ってレベル上げをすることにした。
◆ ◇ ◆
「
ワンドの先から火球が飛びモンスターへと命中する。
ドォォン! ブォォォォーッ!
思っていたより激しく火柱が上がり、オオカミのようなモンスターは燃え尽きてしまう。
森の中にはモンスターが多く、URアバターの効果もあってか、倒す度にぐんぐんレベルが上がる。
――――――――――――
レベル10になりました。
スキル
【
アイテム
【オオカミの皮】【ベアウルフの糞】入手!
――――――――――――
「おおっ、強そうな魔法が! レベル10で
俺は、その場にオオカミの皮と糞を捨て、もっと強そうなモンスターがいる場所へと移動することにした。
「
ギュワァァァァーン!
生まれて初めて空を飛んだ。
「うわっ、気持わるっ!」
まるで無重力状態のように体が浮き上がるのが慣れない。ちょっと酔いそうだ。
「まあ、すぐ慣れるだろ。少し森の奥にいってみよう。レベルの高いモンスターがいそうだしな」
ギュゥゥゥゥーン!
少し奥に行くと渓谷のような場所に出た。いかにも何かいそうな雰囲気がする。
少し高度を下げてみると、谷沿いの洞穴から多くの緑色したモンスターが溢れているのが見えた。
「ん? あれは……ゴブリンかっ!」
「キシャアーッ!」
「ギェェーッ!」
空に浮いている俺を見つけたゴブリンどもが、怒りの表情で弓を構えたり槍を投げようとしている。
「丁度いいレベル稼ぎになりそうだ」
「よっしゃぁぁぁぁあ!
ズドォォォォォォォォーン!
「「グギャアァァァァー!」」
爆炎をくらったゴブリンどもは次々と倒されてゆく。数十匹はまとめて燃え尽きてしまった。
哀れなゴブリンの集団と引き換えに、大量の経験値とゴールドが入ったようだ。
「どれどれ、ステータスは?」
――――――――――――
名 前:ジェイド
レベル:21
魔術レベル:1
ステータス
筋 力:380
攻撃力:210
魔攻力:350
防御力:120
素早さ: 80
知 性:510
魅 力:160
スキル
【暗黒神】
【火球】【爆炎地獄】【雷撃】【雷槍】【氷槍】【砂嵐】【風刃】
【抵抗】【反射】【隠密】
【鑑定】【探索】【飛行】【転移】
――――――――――――
「うおおっ! 強くなってる」
自分のステータスが上がったのを喜びながらも、俺は言いようのない違和感に気付く。
「そういえば……何で他のプレーヤーに会わないんだ? サービス開始日なんだから、もっと人が多くて良いはずなんだけど……」
おかしい……。俺が始めたのは夕方だったはず。通常なら人が多くて
「探索スキルも手に入ったし、ちょっと周囲を調べてみるか……よし、
自分を中心として円形に探索魔法有効範囲が広がる。周囲のモンスターやプレイヤーやNPCが分かるはずだ。
「モンスターばかりだな……んっ! なんか凄いスピードで近付いて来るヤツがいるのだが」
ギュワァァァァーン!
信じられないようなスピードで接近する者は、同じプレイヤーのようだ。地形を考慮しないスピードからして、俺のように
「やっとプレイヤーに会えた。これで色々情報を聞けそうだな」
もう視認できるほと近くにきた男は、見るからに高価そうな装飾付き純白のプレートアーマーを装備している。サービス開始日なのに、何処でこんな装備を手に入れたのだろうか?
「ふぁーっはっはっはっ! 正義の勇者ジャスティス
その男は、勝ち誇ったような顔をして、見下すような目で俺を見た。
(うげぇ……変なヤツだな……初めて会ったプレイヤーがコレかよ)
「おい、ちょっと聞きたいのだけど……って、うわぁっ!」
ズザァッ!
俺が話しかけようとすると、その男がいきなり剣を振り回した。
「おっと、おしい」
「おしいじゃねーよ! 危ないだろ!」
変なヤツだと思ったけど、マジにヤバい男かもしれない。荒らし行為でもやってるのだろうか。
「分かってないのはオマエの方だ。悪の
目の前の男が高らかに宣言する。
いきなり現れた変なヤツに絡まれる俺。もう、訳が分からない。とにかく、この変な男を何とかせねば。
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