3日目その2
「あらあら!本がこんなに!」
洗濯をし終えたマリーが室内に戻ってきた時、目に入ったのは机の上の本が崩れベッドになだれ込んでいた状態だった。
赤子はそこから離れたところで元気にしていたので怪我はないようだった。
抱き上げて体を確認するが、怪我はないし泣いてもいない。ホッとしたマリー。
「よかった、あの人の本で怪我されちゃ。またあの人のことを恨まないといけなくなるところだったわ」
ぽかーんとした無垢な赤ん坊の顔に笑顔を見せるマリー。
「あばぁ」
その無垢な赤ん坊は、手でマリーの胸をポンポンと叩く。
「あら、お腹すいたのね。ちょっとまってね」
マリーはするすると上着を緩めた。
(眠気に…勝てない…)
母乳をたらふく飲んだ俺は、胃から全身に行き渡る幸福感に浸っていた。それまでの大量の読書によって疲労していた俺の脳は、お昼寝を求めていた。
ベッドの上でごろりと転がる俺をマリーは楽しげに見ている。彼女の前であられもない姿をしているのはわかっていたが、全身が幸福に酔っているため、股を閉じることすらできない。
ウトウトと半覚醒の状態を俺を置いて、マリーは家事に戻った。
眠い目の中にステータス画面を開く。
「名前 ルーン
*ステータス
体力 1.345
力 0.82311
素早さ 0.9726
賢さ 1.751
魅力 20.62
年齢0歳と3日」
訓練を重ねた力と素早さが1の壁の目前にまで伸びている。今日中に超えるのは間違いない。0から1への劇的進歩が起これば、一気に部屋を出て外部世界に飛び出せるようになるかもしれない。
賢さも読書で世界の基礎知識を入手したことでだいぶ上がっている。
この部屋からおさらばして、世界へ飛び出し悪を倒す英雄の道をゆく。生まれる前に与えられたその使命が実現できるかもしれない。
俺はちまちまと伸びていくステータスの数字をニマニマと眺めていた。
「3日でこれなんだ、30日もあればきっと…」
横になった状態だっため、もう頭の半分は睡魔に抑えられていた。思考がすぅっと消えていくのがわかる。そのぼんやりと、とろんとした眼で家事をしているマリーの背中を見つめている。
日差しの中で家事をする彼女の姿は、幸福をテーマにした絵画のようだ。
彼女のオレンジ色の髪は太陽に光を反射し金色に輝いている。その髪の毛は俺の頭にも薄っすらと生えている。俺の肌は彼女と同じく白く透き通る肌だ。
「もうすぐ…ここともお別れだ…」
眠気は、最後の意識を刈り取り、外部の世界との接続カットした。
赤子はすやすやと眠りに落ちた。
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