星 凛

「ママー、朝顔と夕顔ってどう違うのー?」娘に聞かれ、「確かに見た目は同じね。朝顔はね、朝にだけ花を咲かせるの。それに対して、夕顔は夕方にだけ花を咲かせるのよ。」と説明した。その時ふと思った。


そういえば、私の朝の顔と夕方の顔って…?


朝は起き抜け。寝ぼけ眼で、今日も娘を保育園に預けて、仕事に行って、あれやこれややらなきゃいけないことが山積み。考えるだけで憂鬱だ。ひどい顔をしている。


夕方は仕事終わり。仕事を終えて、娘を保育園から連れ帰って、家に着いてからも夕食を作って。そんなことを考えただけでゲッソリする。ひどい顔をしている。


あ、朝顔と夕顔といえば、確か昼顔と夜顔もあったな。


昼は仕事用の顔を作っている分、一番まともか。いや、作り笑顔こそ、実は一番怖いんだぞ。ひどい顔をしている。


夜こそ、やるべきことから開放されて、活き活きした顔をしているのでは?いや、明日のやるべきを事を考え、ずっと寝ていたい、もう嫌だ、と思っているよな。ひどい顔をしている。


なんだ、私って、いつもひどい顔をしているじゃないか。そう思いながら下を向くと、娘の満面の笑みが広がっていた。


「ママー、このお花、すごいきれいな色してるね!」


はっとした。花がきれい、そんなことでこんなに幸せそうな顔ができるのか。私の心は、いつの間にこんなに汚れてしまったのだろう。


「あれ、ママどうしたの?苦しそうなお顔だよ?…ママ、パパがいなくなってから、よく変な顔してるよ?」


大丈夫。きっと大丈夫。この娘のためならば。


私は大輪の笑顔を咲かせられるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星 凛 @stardust_rinrin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ