第3話

中に入ると……

「わあっ~。」

すごい!

さすが、校長室なだけある。

めちゃくちゃ、豪華。

部屋中、金ピカ。

金の時計に、金の机。

目の前に広がるのは、お菓子、お菓子、お菓子!!

そう、私はこの秘密のパーティーに招待されたのだ。

そして、私は金の椅子に座り、おいしいお菓子を食べる。

マカロンと、フィナンシェに、ドーナッツ。

次は何を食べよう。

う~ん、迷うな~。

「東雲さん。 東雲ゆうりさんっ。」

私の幸せな妄想は校長先生の声によって中断させられた。

「あなたの優秀ぶりはよく聞いています。」

へ?

あ、怒られるんじゃないの?

「あ、ありがとうございます。」

校長先生は「うんうん。」ととびっきりの笑顔で笑った。

「こんなにも、優秀なのは貴方が始めてです。」

やった~!

「ということで、貴方に特別な任務を渡します。」

任務?

どんなのでしょう。

「今日から、ここ如月中学校に入学する男子の世話です。」

つまり、男子達のメイドったこと?

先生が「入ってきて。」と言って手を招いた。

その先にいたのは、

なんと、なんと、

私が水をかけてしまった男子に、クール系男子、ナンパ男子、そして、私の知らない可愛い系の男子ではないですか!

これは、あの男子達の世話をするということなのでは!

私が、ゲッという顔でそちらを見ると、水をかけてしまった男子もゲッという顔をし、ナンパ男子は「ふふっ。」と笑い、眼鏡男子は「あちゃ~。」という感じで額を抑え、可愛い系男子は「にこっと。」笑った。

「この子達の、世話をしてほしいんだ。」

そんなのお断りです!

えっと、こういう時は、

「そのような特別な任務を任された事、とてつもなく嬉しいのですが、そのような特別な任務は私の手には余るものがあります。」

って言えばいい気がする。

でも、それを聞いた校長先生。

「貴方がそう言うのはお見通し。」とでも言うような澄まし顔をした。

「でも、これは東雲さんにしかできない任務なんです。」

「なんでですか?」

「この任務をできる人の条件に満たしているからです。」

条件って、なんでしょう。

「これ、読んでください。」

そういって渡された紙に書いてあったことをまとめると、

【条件1 】友達のいない人

これは秘密の任務なので友達のいない人が好ましい。友達がいなければそもそもしゃべる人がいないため。


【条件2】イケメン嫌い

この男子達はイケメンなので、イケメン嫌いでないと仕事が手につかなくなる。


【条件3】寮暮らし

寮暮らしなら、いくらこき使っても親にバレないため。


という事らしい。

というか、なんなんですか。

この条件とやらは。

超・超・超・ブラックではないですか!

「寮暮らしなら、いくらこき使っても親にバレないため。」

って、どう考えてもおかしい。

まぁ、友達がいないとイケメン嫌いはあってるのか。

実際そうだし。

てか、地味にひどい。

だ・か・ら・ この仕事は絶対にやらん!!

「ダメ、ですか?」

校長先生、そんなウルウルお目目でこっち見てもダメですからね。

「みたらし団子の食べ放題券をあげます。」

みたらし団子!

それは、私の大好物!

少し、私の心がぐらついた。

みたらし団子と男子の世話。

どちらをとるか。

よし!

「先生、私やります!」

あれ?

私、勢いに、任せてとんでも無いこと言ってないか。

言ってる気がする。

「よし、よく言った。では、よろしく。後は頼んだよ。」

私は、はっとした。

あれこそ、校長マジック。

決めたことは何がなんでもやり通すという信念のもとに生まれた技。

私が、あの技はどうやって習得したのだろう。と考えていると、校長先生はバチッと音がしそうなウインクを残して去っていった。

あれ、あのウインクした顔、さっきも見たような……

そして、またもやはっとした。

そうだ!謝らなくては。

かくして、私はこのポーズをする事になったのだ。

そう、それこそ、 土・下・座。

「さっきは、水をかけてしまい、申し訳ございませんでした。」

顔をあげると、全員が大爆笑!

はて、なんででしょう。

でも、私の事を笑ってるのはわかる(怒)

「もう、いいですよ。別に、怒ってないですし。」

水をかけてしまった男子までもが笑っている。

「よし、自己紹介しよう。」

ナンパ男子め、まだ笑っていやがる。

「俺が、神楽廉。よろしくな。」

「僕は、神楽紫苑。よろしくね。」

「僕は、神楽陸です。よろしくお願いします。」

「神楽一樹だ。よろしく。」

えっと、

ナンパ男子が、神楽廉。

可愛い系男子が、神楽紫苑。

水をかけちゃった男子が、神楽陸。

クール系男子が、神楽一樹。

ということらしい。

それなら、私も。と頭をさげる。

顔をあげると…。

!?

目の前には、廉さんの顔が。

しかも、超超至近距離。

「わっ!」

「へぇ~。そこで、赤くなるんだ。ゆうりちゃん可愛いね。」

うう……。

こいつだけは、絶対に許さん。


そんなこんなで、

私の秘密の神楽家メイドの仕事が始まってしまった…。


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