(またか…)


真夜中、外灯が微妙に辺りを照らし出す…バイトからの帰り道。長身の青年…不和ふわ 國将くにまさは、背後に忍び寄る気配に思わず溜め息を漏らした。





果たしては、いつからだったろうか?

國将はうんざりだとばかりに、眉間に皺を作り出す。


頼りない外灯と月明かりから浮かび上がった彼の顔立ちは、なんとも男らしく端整なものであり。

日本人離れした体躯と相成って、二十歳という年齢以上に大人びた色香を解き放つ。



それは流行り言葉で形容するよりも、古風に男前と表現した方がしっくりくるような…そんな重厚さが青年には感じられた。




その整った顔に苛々が募ると。

迫力が生まれ、多少粗暴さが浮き彫りになってしまうのは…それなりにヤンチャな青春時代を過ごしてきた所為もあるのだが…。






それはさておき、こうしてる間にもは、進行形で真後ろに迫っているわけで。

まさかその容姿が原因だとは思ってもいない國将は。

眉を顰め、面倒クセェなと小さくぼやいた。






(こんなことなら単車でくりゃ良かったか…)


バイト先が自宅アパートに近いため、燃料費削減にと徒歩で行き来していたのだが…。等間隔を保って自身について来るソレに、幾分後悔が募る。



昔は不良だなんだで無茶苦茶してたから、怖いもの知らずな性格ではあるのだけど。

さすがにこうも頻繁に且つ、あからさまだと。

誰であれ、気持ちの良いものとは言えないだろう。




…そう、國将はその恵まれた容姿故に。

現在進行形で“ストーカー行為”に見舞われていたのだ。








(まさか家まで来る気か…)


今までは影から見てる程度だったソレ。

ストーカーというのは、徐々にエスカレートするもので。例外なく、國将にも襲い掛かる。



遠目に見たソレが、女だったから。

とか言いながら、例え男だったとしても返り討ちにする自信が、彼にはあったが故に…今まで放置してたのだけども。


ストーカーなんぞに自宅まで暴かれてしまうのかとなれば、ちょいとばかり抵抗が生じる。






(はぁ…しゃあねぇな…)


言い寄って来た女は沢山いた。

寧ろ男だって、少なからずいたくらいだし。

そういった苦労も今まで無かったわけじゃないから。正直、面倒なんだが…。


しかしこれ以上ストーカーをのさばらせる方が、後々厄介だなと結論づけた國将は。

溜め息ひとつ溢し、ピタリとそこで足を止めた。


そのままくるりと振り返る。








「おい、女。」


「!!」


電柱に隠れていた影が、驚いたよう反応を示す。

隠れるといっても、バレバレなのだが…その影はあくまで白を切り通そうとしており。

深夜のバイト終わりに、長々相手するのもうんざりしていたので…


國将は迷うことなく、ストーカーへと近付いた。

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