となりの席のかすみ草
雪蘭
第1話 幼馴染
花なんて嫌いだ。どうして日本人はみんな、花が好きなんだろう。春になったら桜、夏になれば向日葵、秋になると秋桜、冬には梅。年から年中、花・花・花。そんなに好きなら某アニメキャラのように、頭に咲かせば良いじゃないか。俺は、花が好きな理由を両親や同級生に何度も聞いた。だけど答えはいつも決まって同じ。
『そりゃ日本人だもの。』
だ・か・ら!なんで日本人は花が好きなんだよっ!!という心の声は抑え、にっこり笑って『へぇー、そうなんだぁ』と無邪気に躱す。へりくつと言われればそうなのかもしれない。だけど気になるものは気になるのだ。
そんな俺も今日でもう高校一年生になる。人生というものは末恐ろしい速度で過ぎていくものだなぁ。〝入学式〟と書かれた立て札を見てしみじみ思っていると、後ろから思いっきりどーんっ!!と背中を叩かれた。
「おい、それいつまでやるつもりだ、
「ちぇっ。ばれちゃったかー!!おっはよー
溜息を吐きながら後ろを振り返ると、そこには予想通り蒼月がいた。
愛らしい顔立ちをした蒼月は、当然女子からの人気がえげつない。いつも何人かの女子が蒼月の周りを取り囲み、きゃーきゃーと黄色い声をたてていた。高校になったからと言ってそれが変わる訳がない。珍しく空の両サイドを見るに、うまく女子たちを撒いてきたのだろう。
「榛眞はそっけないなぁー。ま、そーいうとこが榛眞のいいとこなんだけどねっ!」
「なんなんだよお前。女子達に囲まれて嬉しそうな顔してるくせに。」
「そりゃあ嬉しいっしょ。榛眞は嬉しくないの?女子に囲まれても。」
「ふんっ。別にー。」
「あーそっ。でも俺だって榛眞と一緒にいる時が一番落ち着くけどね!」
にっこり。
じとり。
「................................................。」
「......っはぁー。お前、ほんと変わんねぇな。」
「そうかなぁ。どうもー!」
ほら、また。いつも俺が負ける。なんだかんだ俺は蒼月の〝にっこり〟に弱いのだろう。我
ながら情けない。
おそらく靴箱だと思われるその場所には、何サイズかも分からないくらいの大きな紙のクラス表がでーんと貼ってあった。それを見て初めて知った事だが、この学校は四クラスに分かれているらしい。中学までは一組、二組と番号を使ったクラス分けだったが、A組、B組とアルファベットを使っているためなかなか新鮮だ。
「榛眞!俺たち同クラだー!!わーい!!やったねっ!!」
目を輝かせてぴょんぴょんと跳ねる様子はまるで子うさぎのようだった。
「そうか。良かったな。」
「榛眞〜!?今、照れたっしょ!」
「はっ!?照れてないっつーのっ!」
「いやいや、俺には分かるんだー。もう!隠さなくていいって〜。」
「うっざっ!!」
「うざくて結構。うむうむ。」
わざとらしく頷いて見せる蒼月はうざいのが通常営業だ。それが古今東西一般常識。今更驚くようなことではない。
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