ワタシが一目惚れしたイケメンは女の子でした。

とりすけ

第1話 一目惚れ

「次何処に行こっか?」

 買ったばかりの春物のワンピースをふわふわと風になびかせながら、ワタシは今幼馴染の芽久美めぐみとウインドーショッピングを楽しんでいる。

「え〜、もうお金ない〜。」

「もうお小遣い使っちゃったの?まだ一軒目だよ?」

「使い果たしてるよ〜。だってもう5月の半ばじゃん。」

 芽久美は少し計画性が無いと言うか、お金の使い方があまり上手くない。

「一体何に使ったのさ。」

「この間買った可愛いバッグがあったじゃん?それが高くてさぁ。」

「だからって使い果たす?」

「仕方ないじゃん、今買わないともう次には売り切れてるかもだしぃ。」

 芽久美はいじけながらクレープ屋を見つめていた。

「……。」

「ねぇ、明楽あきら?」

「クレープなら奢らないよ。」

「そんな図々しいことは言わないよぉ〜。…一口ちょうだい?」

 彼女はいつもこうだ。買い食いするときはいつも「一口ちょうだい」と言ってくる。女子にはありがち・・・・・・・・なのだろうが、ワタシは正直こういう事はしたくない。

「今日はクレープ食べないから。」

「えぇ〜!なんで??」

「だってワタシだけ買って食べても楽しくないし。」

「私は食べたいなぁ。」

「あんたの一口のためになんでワタシが買わなきゃならないのさ!」

「あっ、待ってよぉ!」

 芽久美の甘えん坊には呆れることが多々あるが、今日も例に漏れず。

 お菓子をねだる子供のような芽久美を置いてスタスタと歩いていたその時だった。


 ガッ


「あっ…!」

 ヒールがグレーチングの網目に思いっきり引っかかってしまった。

 グッと力を込めて抜こうとするが、不意に足首に痛みが走ったので動きをとめた。

「いったぁ…。」

 勢いよく歩いていた為、足を捻ってしまったようだ。

 屈んで引っかかったヒールを抜こうとするが、中々取れない。

「明楽、大丈夫?」

「うーん…抜けない。」

 芽久美が代わりに抜こうとするが、力の弱い彼女に抜けるはずがなく、顔を真赤にさせるだけだった。

「駄目、抜けない…!」

「どっかで靴買おうかな…。」

 諦めかけたその時、通りがかりの青年がヒールを抜いてくれた。

「どうぞ。」

「あっ、ありがとう…、ございます。」

 受け取ってお礼を言うと、青年は何も言わずにニコッと笑って会釈し爽やかに去っていった。

「優しい人が通りがかってくれて良かったね。」

「……うん。」

「明楽?」

「…どうしよう。」

「え?」

(イケメンに一目惚れしてしまった…、俺、男なのに・・・・・・…!!)

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