その男世界最弱!! だが呪われたおかげで最強になってしまった!?
MIZAWA
第1話 世界最弱の男
男なら夢見ただろう、冒険者になってゴブリンを倒し、大勢の人たちにきゃーすごーいって言われたい。
男なら夢見ただろう、ダンジョンでボスを倒し、皆にきゃーすごいって言われたい。
だがその男は、真剣に眼の前のモンスターと3時間渡り合っている。
そう、その最強のモンスターはスライムだ。
「くそ、てめー強すぎなんだよ、なんだそのぼよよんは俺のロングソードが効かないぜ」
先程から小さなボールサイズのスライムと死闘を繰り広げているのは、レベル1の俺ことフレンダイサーであった。
俺は命をかけてスライムと戦っている。
ようやく弱り始めてきたのだろう。動きがスローになり始めている。
だがそれは俺も同じことだ。
俺の体力がつきようとしている。
このままではボールサイズのスライムに捕食されてしまうだろう。
「どうすればいいんだ」
スパコーンと頭を何かで殴られた。
俺は後ろを振り返った。
「あんたバカですかー相手はレベル1のスライムですよー」
「何を言うレイファ、俺もレベル1だぞ」
「それは威張る所ではないよーフレンダイサー」
「うむ、そうなのだ。俺は昨日冒険者になった。自分のレベルが1だと言う事は子供の頃から知っている。永遠とレベル1だし、何をやってもダメ、魔法も武術も剣術もあらゆる攻撃技がダメなんだ。冒険者ギルドでははなつまみもの毎回スライム討伐しか与えられない、ああ、なんてこの世界は無常なのだ」
「当たり前でしょあんた昨日冒険者になったんじゃない」
「だがな、レイファ、お主は一週間前じゃないか、今ではレベル15になって、なぜなのだああああああ」
「普通にスライムを倒してゴブリン倒してるからでしょ」
「うむ、そうなのだよな、なぜ俺はスライム如き倒す事ができないんだ」
スライムはこちらに飽きてしまったのか、どこかへといなくなってしまった。
俺はレイファにけらけら笑われてへらへらしていた。
負けた事など気にしない、ようは次頑張ればいいのだ。
それから毎日スライムと戦った。
1ヵ月がすぎ、3か月がすぎ、10か月がすぎ、1年がすぎ、2年がすぎ、5年がたとうとした。
俺はまだスライムと戦っている。
ちなみにレベルは2になった。
「あんたはバカですかあああい」
相変わらずレイファの突っ込みは鋭かった。
酒場でちみちみとお酒を飲む日課になっていた。
今年で25歳になり、おっさんへの道が開かれていた。
レイファはダンジョン攻略で疲れて自宅で眠っている。
一応レイファと同棲しているのだが、彼女を幸せにする為には俺が最強になる必要がる。
「まったく、あいつスライムまだ倒せてないぜ」
「ああ、見たぜ、初心者の草原で一生懸命スライムと戦ってたぜ」
「あいつ5年もスライム倒せてねーんだぜ」
彼等が俺の事についての悪口を言っている事は分かる。
人は疲れるとストレス発散の為に人の悪口を言う。
まぁ彼等のストレス発散になるなら、俺は彼等に悪口を言われるだろう。
「マスターつけといて」
「はやく出世払いしろよフレンダイサー」
「ああ、マスター」
悔しかった。
周りからバカにされる事や悪口を言われる事は耐えて耐えてきた。
それももう5年もたとうとしている。
5年間皆にバカにされ、マスターには料金を出世払いにしてもらっている。
でも、そのつけはいつも俺にばれないように代わりにレイファが払ってくれている。
本当に俺を突っ込みまくるのに俺を励ましてくれる。
外に出たら雨が降っていた。
ぽつりぽつりと空から降り続け、土砂降りになった。
俺は自宅に戻る間涙が流れた。
単純に悲しかった。
いつも怒りの感情で自分自身を奮い立たせていた。
泥の中、膝を折り曲げた。
誰もいなかった。
ここは小さな街なのだから。
冒険者がいっぱいいて賑わう所なのだから。
俺は強くなりたい、もっともっと強くなりたい。
俺は本が好きだった。本をひたすら読みまくった。
魔導書とかは苦手だったが、神話の話が大好きだった。
「俺はこんな所で終わらない」
走り出した。呼吸が荒くなる。
ひたすら走った。走って走って走りまくった。
なぜか自宅の周りを10周してしまった。
それから自宅に入ると、全身が泥まみれだった。
そこにはにへらと笑って疲れた瞳をしているレイファがいた。
「まったくそんなに泣いちゃって」
「これは涙ではない雨粒だ」
「はいはい、風呂沸いてるからはいってきな」
「いつも助かる」
「気にすんなって」
風呂が終わって、寝間着に着替えた。
レイファは自分の部屋でゆっくりと眠りについているようだ。
俺は自分の部屋でベッドに座った。
部屋の中には無数の本がある。
いつも冒険物語や転生物語、男なら夢見る神話の物語ばかりを見ている。
剣術の師範代には才能がないと蹴られ、武闘家の師範代にはお前には無理だと言われ、賢者の学校では追い出された。
俺には何も才能がない、あるのは根性だけだ。
その時ふと一冊の本が窓の近くに落ちている事に気付いた。
ゆっくりと拾って開いた。
その時だ。頭の中に何か叩きつけられるものを感じた。
ありえない景色が頭をよぎった。
無数の光が輝き、神々の戦争が見えた。
これは幻かと気づいて、本から意識を取り戻した。
【神呪いの書に呪われました】
「は?」
意味不明な状況に俺は立ち上がった。
【おめでとうございます、レベルが3になりました】
「は?」
俺は呼吸をして座った。
【おめでとうございます、レベルが4になりました:このベッドの耐久が5/10になりました】
「は?」
俺の中で何かツボにはまったので何回も座ってたってを繰り返した。
【おめでとうございます、レベルが4になりました】
【おめでとうございます、レベルが5になりました】
【おめでとうございます、レベルが6になりました】
【おめでとうございます、レベルが7になりました】
【おめでとうございます、レベルが8になりました。ベッドの耐久が0/10になりましたので、ベッドが消滅します】
「うそーん」
次の瞬間ベッドが消滅した。
「そ、それ高かったんだぞ、てか意味わからねーし5年かけてレベル2になったのに、もうレベル8だぞ、てかあの本」
俺は慌てて先ほどの意味不明の本を開いた。
題名は【神呪いの書】だ。
【この本には沢山の効果があります。その一つとして何かするとレベルが上がるという呪いがあります。レベルが上がる時に関与した物体はレベルが上がる事に耐久が減り0になると消滅します】
【一度呪いにかかると神々に認めてもらうまで呪いは止まりません】
「うそーーーーーーーーん」
俺は一呼吸おいて、理性になろうと努める。とりあえずもう一回風呂に入って頭を冷やそう。
服を脱ぎすて風呂に入る。
【おめでとうございます。レベルが9になりました。風呂桶の耐久が5/6になりました】
【おめでとうございます。レベルが10になりました。風呂桶の耐久が4/6になりました】
「ちょ、まて、ええええ、てかどんどん耐久減るんだが、風呂桶消えたら俺レイファに殺されるぞ」
俺は慌てて風呂桶から出ようとすると、足を滑らして風呂に沈んだ。
「あばばばあっばあ」
【おめでとうございます。レベルが11になりました。風呂桶の耐久が3/6になりました】
「あばばばああ、しぬうううう」
【おめでとうございます。レベル12になりました。風呂桶の耐久が2/6になりました】
【おめでとうございます。レベル13になりました。風呂桶の耐久が1/6になりました】
「俺はレイファに殺されるうううう、てか人が溺れてるのにレベルがあがってくうううう」
【おめでとうございます。レベル14になりました。風呂桶の耐久が0になったので風呂桶が消滅します】
風呂場から結構高かった風呂桶が今消滅した。
俺はある意味悲しくて涙を流す。腹が痛くなったのでトイレに向かう。
「まず、落ち着くんだ。てか俺レベル14だぞ、ふう、すっきり、だめだまだ痛い」
【おめでとうございます。レベル15になりました。トイレの耐久が2/3になりました】
「ちょえええええええええ、ダメだはらがあああああ」
【おめでとうございます。レベルが16になりました。トイレの耐久が1/3になりました】
「ちょ、俺の腹とまってえええええ、とまらないと俺はレイファに殺されるし」
なんとかぎりぎりで腹下しがとまる。
お尻をふきつつ、もちろん水を流す事も忘れない。
ゆっくりと立ち上がると。
【おめでとうございます。レベル17になりました。トイレの耐久が0になったので消滅します】
「終わった。俺はトイレから出ないでおこう」
ある意味人生の終わりを感じていた。
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