12. 『理由』を知るのは悶えた後で
それぞれの
私達は部屋の中心にあった円卓を囲んで今日起った出来事を改めて整理していた。
「今朝の魔王が討伐されたって話は、みんなも聞いていた感じか……」
「ですね、ところで、イルマさんはどうしてあの場所に来たんですか?」
「私は……そうだな、まずは私の
「「ええ!? 潜在能力ッ!?」」と、私とシルクは二人して驚いていた。
この世を生きる人間は、基礎感覚である『視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚』の五つ、そして魔法を扱う者や日々魔物と戦う冒険者であれば、鍛錬や経験を熟せば得ることが可能な熟知感覚と言われる『魔力感覚』の、最大計六つの感覚を有する事が出来る。
しかし、その『
「それは『生命感知』……とだけ言っても伝わり辛いな……要するに、私は生命が宿す命という物を感知する事ができるのだ。私の感じる限りは、魔王に支配され、彼に操られている生命には支配から逃れた人間とは違った『生命の歪み』というのを感じ取れる。対して、私が魔王討伐の話を聞いた時、確かに殆どの魔物からは『歪み』は無くなったのだが、一方で『歪み』を残したままの魔物も多くいた」
「それと農園に来ていたのは何か関係していて、現れた土蛇もその『歪み』を持っていたって事?」
「そうだ。確かに『半ば興味本位で農園に向かった』までは私もお前達と同じだ。しかし、私はあの場所に踏み込んだ時に、確かにあの土蛇の生命と歪みを感じ取ったんだ」
「でも、それだったらどうしてあの場所から一度離れたのさ?」
「それは……」
イルマは答えるのを躊躇った。
「「それは……?」」
私とシルクは机に身を乗り出し、二人してイルマに顔を近付けた。
その期待に満ちた顔を見たイルマは少しばかり苦い顔をした後「はぁ」と、溜息一つ吐いた後に答えた。
「自身が……その確証が無かったからだ」
「「ズコーッ!」」
私とシルクは乗り出した身を引き戻すと同時に、椅子ごと後ろへと倒れ、その拍子に頭を強く打ち付け、痛みに悶える。
「「ッタアアアアアッ!」」
「(仲が良いな……)」
暫く悶えた後、椅子に座り直して改めて話を聞く姿勢を取る。
「で、痛みで忘れたんだけど、なんて?」
「確証を持てなかったんだ」
「エエエエッ!?」と、シルクはまた一人で倒れ、頭を打ち、一人で悶える。
「……『確証を持てなかった』ってどういうこと?」
「私自身、魔物達から感じられる『歪み』が一部とは言え、消える事が初めてで……ほとんどの生物がそうである中、農園で最初に感じ取った『歪み』も『ただの自分の思い過ぎ、歪みが感じ取れない事に慣れていない、気にし過ぎた故での勘違いだ』と、私は思っていたんだ。しかし……」
「そこで私達の悲鳴って訳か……」
「そうだ」
「ふむ……」
イルマの潜在能力がどこまで信用できるかは本人も疑心暗鬼な様だが、この話を聞く限りは、本人だけではなく、私もその能力を信じたほうがこの一件の手掛かりになる気がした。何より、町にばら撒かれた号外よりも、彼女の方が信じられるだろう。
「しかし、どうして寄りにもよって、あの農園に未だに狂暴な魔物が現れたんだろう」
「……なぁ、プレタ」
「ん?」
「私が『あの農園の近くの森のどこかに、あの土蛇の親玉がいる』と言えば、信じるか?」
そしてこの一件があの勇者と何か関係があるなら、たとえ私の傍に彼女がいない今でも、きっとどこかで手助けになると信じたい。
「ふーん、仲間の言う事なら信じたいね」
「実は、私がお前達を助けた後、すぐにその場を去らなかった理由が一つある」
「ほう?」
「その理由というのが『さっき言った事』だ」
そして何より、この二人との出会いは軽い物では無いと思いたいのだ。
「で、私達と一緒に、それをどうしろと?」
「……手伝って欲しいんだ、その親玉から『歪み』を取り除くのを──』
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