第28話 よい子の皆は、人の話はちゃんと聞こう
翌朝、その日の始まりを伝える小鳥たちの心地よい目覚まし代わりの歌声で、俺は目を覚ました。
ああ、やはり街とは良いものだ。
いつもは、ポンコツ号でスヤスヤ気持ちよさそうに眠り呆けている女神の隣で、堅い地面の上で眠らされている俺にとって、このフカフカのベッドは最高だ。
しばらくこの心地よさを味わっていたいが、そういうわけにもいかない。
俺は体を起こし、外で賛美歌を奏でている小鳥たちに笑顔を向けた。
「おはよう。可愛い聖歌隊。勝利のファンファーレをありがとう」
ああ、これが強者の余裕というものだろうか?
いつも俺は運動会などの順位を決める催しの際、憂鬱な気分で目を覚ましていた。
だが今日は違う。心は晴れやかな気分だ。勝てる試合の前ではこうも違うのか。」
クラスのエリート組はいつもこんな気持ちだったのだろう。そりゃ、余裕が表情や行動に出るわけだ。だが、今日は俺もその勝ち組の一人。
俺はそう思い、もう一度小鳥たちに笑顔を向けた。
「何を気持ち悪い顔を外に向けておる?」
いつも通り、ノックもせずに部屋のドアを蹴り開けた女神が、じっとりとした目でこっちを見ている。
「……おはようございます。ベル様」
自分の部屋を出た俺は、朝食を取る為に宿場のラウンジに来た。
そこにはすでにモーニングを食べているベルとヴィディ、そして前日に知り合ったイケメン王子のパラスがいた。
この光景、はたから見れば何処かの貴族の社交界である。
「おい、駄犬。この我より遅いとは、我が僕としての自覚が薄れているのではないか?」
最初からそんな自覚ねーよ。
「おはようございます。幸太さん。この『永遠の愛のモーニングセット』とても美味しいですよ」
何その重そうな朝食? 朝から胃もたれしそう。
「グッドモーニング。愛しのバンビーノ。良い夢は見れたかい?」
うん。俺が女だったら、確実に惚れてるな。
「おはよう、みんな。今日は大切な日だから、力を合わせて協調性を持っていこう」
一応この日はチームで戦うので、俺は結束力を高める為の言葉を言った。
「フッハハハハ。とうとう我の真の力を見せる時が来たのじゃ。皆が我にひれ伏す光景が目に浮かぶわ」
「力を合わせる? それは愛なのですか⁉ 愛なのですね! 初めての共同作業……ああ、なんて良い響き」
「ふっ、幸太。勝利した時のポーズはどれがカッコいいと思う? 僕はこの祝福の光を全身で仰ぐ、このポーズが良いと思うんだ」
よい子の皆は、人の話はちゃんと聞こうね。
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