第24話 ようこそ! 戦いの街へ

 つかの間の休憩をはさみ、俺達は再びラテパルに向けて出発をした。


「幸太さん。ラテパルまではもう少しですよ。頑張ってください」

「はははっ。ヴィディ、心配してくれてありがとう。でも、僕は大丈夫だよ。ははははっ」

「……何じゃ主ら? 何か気持ち悪いぞ」


 俺のぎこちない会話に、ベルはいぶかし気な表情で見てくる。


「そんな事ないわ、ベル。ちょっとした家族会議をしただけよ」

「家族会議? 何じゃそれは?」


 とにかく俺は何処が地雷か分からないので、この話を逸らす為に必死に他の話題を探していた。


「……! あっ! あれ見てくださいよ! ベル様!」


 わざとらしく大きな声でベルの注意を引こうとする。


「ん? 何じゃ?」

「ほら、看板が見えてきましたよ! 『戦いの街 ラテパルにようこそ!』ですって! やりましたよ! とうとう着きました!」

「う、うむ。何故そんなにテンションが高いんじゃ?」

「よーし! 頑張って、今度こそここで神を見つけるぞ!」

「そっ、そうか。まあ、頑張れ」


 そんな話をしながら、俺達はラテパルの入り口に着いた。


 そこにはすでに多くの人々がいて、大いに賑わっている。


 入り口からずらっと様々な売店が立ち並び、遠くでは花火が打ちあがるなど、何かの祭りに来たみたいな気分になった。


「いらっしゃい! いらっしゃい! 腹が減っては、戦は出来ないよ! ラテパル名物『灼熱ケバブ』はいかが!」

「ほらほら。お客さん! そんな防具じゃ、すぐにただの屍になっちゃうよ! うちの頑丈なこの鎧を買っていきなよ!」

「はーい! そこのカップルさん、うちで記念の写真でも撮らないかい? 安くしとくよ!」


 俺は初めて見る光景に周りを見渡しながらその道を進んだ。


 ちなみにポンコツ号は以前の恥ずかしい経験をもとに、どうせ取る奴もいないと思うので、入り口の前で紐をくくって置いていった。


 しばらく歩くと売店の数は減っていくが、代わりに様々な競技場のようなものが増えてくる。


 中にはリングが置いてあり、その上で戦いをしていたり、テニスコートみたいな所で玉を打ち返したりしてスポーツみたいな事をしている所もある。


 本当に色んな種類の競技がそこら中で行われていた。


「ねえ、ベル様。着いたのはいいですけど、何処で神の情報が手に入れられるんですか?」

「ふむ。そうじゃな。何処から探そうかの」

「あら、ベル。あそこに行けばいいじゃない?」


 ヴィディの提案にベルは分かりやすく嫌そうな顔をする。


「あそこって何処なの? ヴィディ」

「ここの神殿です」

「神殿?」

「ええ、ここの様々な運営を統括している所です」

「本当にそこに行くのか?」


 ベルはやはり嫌そうな顔をしながら口を開く。


「何を言ってるの? 情報を手に入れるんだったら、あそこに行くのが手っ取り早いじゃない。それにあの子にも久しぶりに会えるじゃない」

「だから嫌なのじゃ」


 何なんだろうか? ベルの様子から見ると、そこにいる人と会いたくないようだ。


 でも、そこに行けば情報が手に入るからには、行かないという選択肢は無い。


「ベル様。とりあえず神殿に行きましょう。後でケバブ買ってあげますから」


 駄々をこねる子供に飴をちらつかせる様に諭す。


「……何か主の我の扱い方が気に食わんの」

「ほらほら。わがまま言わないでください。行きますよ」


 ベルへの子供扱いに気が付かれないように、急かしながらベルの背中を押して先に行かせようとする。


「ふん! 分かったから急かすな。しょうがないの。あと……」


 少し不機嫌だったベルはくるりと首を回し俺の方に顔を向けると、目を輝かし――


「後でちゃんとケバブは買うのじゃぞ」

「買ってもらうのかよ!」

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