第13話 書店での光明
その体系からは、想像出来ない程の速さで走るオタク君の後ろを追いかけ、俺はなんとか書店にたどり着くことが出来た。
その店には、既にオタク君と同じ様な格好をした男達が並んでいた。
「拙者は並んでくるから、貴殿は好きに店内を回るといいでござるよ」
「うん。わかっ――」
「では!」
オタク君は、瞬間移動をしたのではないかという速さで、列に並んでいた。
その後、俺はとりあえず店内を適当に回る事にした。店内には地上では無い本がたくさんある。
「えーっと。『天国での幸せなセカンドライフ』『くつろぎの天界旅 TOP10』『次はどんな人に? よく考えよう! 転生指南術』へー。色々あるなー」
次に写真集の所に目をやると、そこには美しい女性達の本があり、その中に一際ポップで飾られている写真集があった。
「これは……。ヴィディーテさん? へー、凄いな。女神様はこんな事までするのか。それにしても……本当に綺麗だな」
しばらくその本に見惚れていると、ある事に思考が行く。
まさか……。あのニート女神も写真集も出しているのかな? まあ、あれも見た目だけはピカイチだからな。写真からは性格は見えないし。
そう思い、周りを見渡したが、それらしき物は無かった。
「まあ、そっか。ポーズとか取って、写真を出すタイプじゃないしな」
そう思い、数歩歩いた時に、一冊の本が目に入る。
その本の題名は『働くなかれ 24時間 無駄に楽に過ごす 幸せ生活術 著者 ベル様』と書かれてあった。
「あいつ……こんなもん出してたのか。というか、全然売れてねーじゃねーか」
俺はその本の内容を読む気にもなれずに、溜息を吐きながらそのコーナーを後にした。
その後、店内を適当に回っていると、俺は一つのコーナーにたどり着いた。
「魔界特集コーナー? へー。天界なのに、魔界の本もあるのか。まあ、とりあえず入ってみるか」
そのコーナーに入ると人は全然いなく、俺しか居なかった。
「黒魔術に人の呪い方……地獄の罰の種類。なるほど、こんなのマニアしか買わないな」
しばらく周りを見回しながら歩くと、俺は一冊の本の前で立ち止まった。
「こっ、これは……」
その本は見た目からして、うざったらしいオーラを放っていた。何故なら、その本の表紙にはキザな格好でポーズを取っている、アスモがでかでかと載っていたからである。
俺は、その今まで誰にも手に取られなかったであろう本を手に取った。
「えーっと。『㊙ 愛の狩人 アスモ様の隠されたプライベート 吾輩の事を知りたければ、この本を手にしろ!』か……。一生秘密のままなんだろうな」
たいした興味もなく、ペラペラと本のページを流し読みしていると、あるページで俺の手は止まった。
「おっ、こんな所におられたのか。拙者、探し回ったでござる。まあ、それよりこれを見てほしいでござる。ちゃんと観賞用、保存用、実用用と手に入れたでござるよ! もし見たかったら表紙だけなら――」
「ゴメン! 俺ちょっと急用が出来た!」
俺はそう言うと、本屋を走って出て行った。
「アルティメット・ラブマスター殿……。ん? これは……」
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