第4話 顔
ザッザーー
画面に如月が映りだした。
今日もまたこの男による一人語りが始まる。
如月は今日もまた、お馴染みの全身真っ黒な服である。
「 あー、どうも如月です。
今回も見て頂きありがとうございます。
今日語るのは「会うな」です。
……では始めます。」
【会うな】
「あら、ようちゃん、お久しぶりねぇ」
「うん、おばちゃん、お久しぶり!」
俺は今日、おばちゃん家に来ている。
「みない間に、大きくなったねぇ。
前はこんなんだったのに」
そう言うとおばちゃんは豆粒くらいの大きさを指で表した。
「おばちゃん、俺そんなにちっちゃくないよ!
もう……あっおばちゃん!記念に写真撮ろう!」
俺は手にスマホを持った。
「ようちゃん、それなんだい?」
「スマホって言うんだよ、おばちゃん。
これがあれば、色々な事ができるんだ。」
おばちゃんスマホ知らないんだ?。
「例えば?」
「うーんとねー、欲しいものをネットで買えたり
写真を投稿したり、いろんなことができるよ!」
「それは便利だねぇ。」
「じゃあ、写真撮るよ……ハイチーズ!」
カシャ
うん。上手く撮れた。
「今のものは凄いねぇ。」
まぁ、東京は凄い所だし、田舎に住んでいるおばちゃんが知らなくてもしょうがないか。
ピロン
「あっ、おばちゃん行って来まーす。」
「あい、夕飯までは帰って来てね。」
「はーい」
トコトコ
それにしても、ここ、何もないなぁ
目に見えるのは田んぼ田んぼカカシくらいだし……
まぁ、自然豊かで空気が美味しくていいけどね。
あっ、ここばえるんじゃ?
俺はスマホを開き、カメラモードにし、写真を撮った。
カシャ
「うん!上出来じゃねぇかな?俺にしてわ…」
俺が撮った写真は川の写真だ、川沿いにある水仙の花と川がマッチしてとっても綺麗だ。写真も上手く撮れて良かった。
さっそく、写真を投稿するか!俺は人身のSNSに写真を載せた。元々、趣味で写真を撮っていたが、SNSで投稿してみたら、色々な写真好きと繋がれてとても嬉しいし、褒められる事が嬉しいから腕も上がる。
俺はしばらく自分の今まで投稿してきた写真を見た。
【橋】、【お地蔵様】、【東京タワー】、【展望台】【家の窓から見える雪景色】色々撮ってきたなぁ。
ピロン
誰かからメッセージが来たようだ。
「やった。紫陽花さんから返信来てるぞ!」
紫陽花さんはSNSで知り合った女性だ。
お互い、顔は知らないが仲良くなってる。
いつも、丁寧に返信してくれる紫陽花さんに……
俺は片想いしている。
ちなみ、俺のユーザー名は「よっちゃん」だ。
俺は紫陽花さんからの返信を見た。
「えっ紫陽花さんもここら辺に住んでんの!?」
以外な事にすぐ近くに住んでいるらしい。
マジか。んじゃ会えるかも!
[せっかくだし今から会いませんか?]
「えっ良いの!?あっちゃって!」
マジで!嬉しい、好きな人(片思いの人)に会える事で喜ばない男なんていないだろう!!
[ハイ、いいですよ。]
と返信した。
やっぱ、余裕のある男の方がカッコいいだろう!
紫陽花さんどんな人だろう?黒髪ロング?ショート?
多分顔は美人系だな!
ピロン
また、返信が来た。
[すみません、少し用事があるので先にいっててくれませんか?待ち合わせ場所は、四条橋です。]
ん、なになに、四条橋で待ち合わせ?
そこに行けば会えるのか。
俺は楽しみだったので、全力で走った。
まだかなぁ、紫陽花さん。
そう言えば、俺今まで紫陽花さんのSNS見てなかったな……
「せっかくだし見よう」
俺は紫陽花さんのSNSを見始めた。
んーと、古い投稿はーえっと……あ、あった!
「へぇー、紫陽花も写真撮るんだ!」
趣味がいっしょで気が合うってこれ運命じゃないか!?
紫陽花さんの撮っていた写真は【橋】の写真だった。
次にとっていた写真は【お地蔵様、【東京タワー】
あれ?俺が撮った写真と同じものを撮って…る?
気のせい、気のせい。写真がたまたま似たようなのになってしまっただけだろうきっと。それに、東京タワーって有名なスポットだし……
一番新しい投稿は……
「え」
一番新しい投稿の写真は……窓からの景色だった。
確かに、窓の写真ならいっぱいある……だが問題は……
この写真は【俺の部屋の内側から取れる写真】なのだ。
俺は、自分の家の俺の部屋から写真を撮り投稿した。
確か投稿した季節は冬……紫陽花さんの写真は春に撮られたものだ。でも、何年も住んでいる家からの景色は絶対に見間違えない……どう言う事だ……紫陽花さんは俺の家を知っていた?しかも家の中に入って写真を撮っている……
俺は肝が冷えた。
ピロン
……新しい投稿だ。写真は【川と川沿いに咲く水仙の花】だ。もうここまで来たら確信犯だ……何か、何かやばい紫陽花さんは……何で…俺の行ったことのある所が全て分かるんだ?どうして……
『よっちゃんですか?』
後ろから声がした。
多分、紫陽花さんだ!
俺は後ろを振り返った……が俺は全力でその場を去った。
はぁはぁ
逃げなくちゃ!紫陽花さんから……
とにかくおばあちゃん家まで走ろう……ここからおばあちゃん家までは距離があるからさすがに来ないだろう。
はぁはぁ
俺は死に物狂いで走った。
周りはもう真っ暗でどこに何があるかわからない。
家の明かりがついている!
絶対おばあちゃん家だ!!
見えてきたおばあちゃん家に向かって全力で走った。
はぁはぁ……
外に誰かいる……おばあちゃんか!遅かったから心配して外で待っててくれたのか……俺はさらに走るスピードを上げ、おばあちゃんの元に着いた。おばあちゃんはずっと下を向いている。 遅く帰って来たから怒っているのか……?
だが、こちらも生命の危機なのだ、一刻も喋らないといけない。
「おばあちゃん!助けて!おばあちゃんあのね!
ヤバい、女の人が……」
俺が喋ろうとした時おばあちゃんは顔を上げた。
『ハじメマしテェ、よっちゃん』
「ぎゃあああああああああああああああああああああ」
「……以上で終わります。短いって?そんな時もありますよ。なぜ、片想いの人にせっかく会えたのに逃げたかって?……お互い顔が見えない者同士 どんな方が会うまで分かりませんよね?
《顔が見えない者》ですから、もしかしたら、あなた方が気づいていないだけで人じゃない者も混ざっているかも知れませんね。
……さてその後彼は無事逃げれたのでしょうか?
フフッ、無事逃げれるといいですね。
ではまた会いましょう。」
ブッ
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