農民だった私が王宮に入る話

ニチカ

第1話 私が王女??

「エミリー、外へ来て」

古い家の外から畑仕事をする母親の声が聞こえた。

「はーい」

エミリーは明るい声で返事をし、家の掃除をやめ、外へ出た。エミリーがドアを開け、母親が目に入る前に王宮の馬車が目に入った。母親は腰を低くして頭を垂れていた。エミリーは急いで母の元へ駆け寄り、頭を下げた。馬車のドアが開く音がして、人が近寄ってくるのが分かった。エミリーは破裂しそうな程に心臓がバクバクと高鳴っていた。

「エミリー・ディリーというのはお前か」

低く響く声をしていた声であった。エミリーは「はい…」と小さく答えた。

「母親はお前か」

「そうでございます」

男は「ふむ」と言ってから「頭を上げろ」と一言言った。2人はゆっくりと頭を上げた。男はまじまじと2人を見比べた。

「エミリー・ディリー、国王の血縁関係者であるため徴集がかけられました。王宮にお越しくださいませ」

「えぇ!?」

エミリーは思わず声が出た。母親は目をうるうるさせて、また頭を下げ「かしこまりました」と震える声で言った。

「お母さん!?」

エミリーは目を大きくして頭を下げる母親を見た。

「では、今日、準備をしてください。明日、また迎えにあがります。」

エミリーはぽかんとしていた。男は馬車に乗り、来た道を戻っていって閉まった。

「お母さん!なんであんなこと言ったの!?あんなの嘘でしょ!!」

エミリーは母親の肩を揺さぶった。

「あなたは…私の子じゃないの…訳あって王宮から預かっていたの…」

母親は涙を堪えながら言った。

「そんな…」

「街へ連れて行かなかったのもそれで、ごめんなさい。」

エミリーは泣き崩れた。そして母親と家に入り、カバンに荷物を詰め始めた。



次の日の朝、昨日と同じ馬車が来た。エミリーはカバンを持ち、馬車に乗り込んだ。母親は綺麗な姿勢を保ったまま、エミリーをみおくっていた。すると、大きな袋に入った何かを渡したのがかすかに見えた。母親は全く喜ぶ様子もなく、静かに受け取った。エミリーは泣き崩れたいのをこらえ、小さくため息をついた。前に男が1人すわりって、馬車が走り出した。

「私はなんなんですか?」

男に尋ねた。

「国王陛下であるルーカス・ベルクト陛下とエルフのハーフです」

エミリーはぽかんと口を開けた。

「エルフ?…エルフって隣国のエルベミエル魔道帝国の?…」

「そうです。その上流階級のエルフです。そのため、目立たせることなくあの家で保護してもらっていました。」

エミリーは頭がパンクしそうになっていた。エルフと国王の子でありハーフ。

「そうですか…」

馬車に揺られて数十分走ってから白く長い橋を渡ると、豪華な門が見えてきた。エミリーは門を窓から覗いていた。門を過ぎ、噴水が真ん中にあった。そこで馬車は止まった。馬車のドアが開けられると金髪のまだ若そうなメイドがニコニコと立っていた。

「カバンお持ち致します。」

「い…いいです。これくらい」

エミリーはカバンを持って言った。

「エミリーお嬢様が持たなくて良いのです。」

近くにいた執事らしき人が言った。エミリーはメイドにカバンを預けた。

「こちらでございます」

執事に案内され、歩いて行った。お城はそれはそれは豪勢なもので、エミリーは色々な物に目を奪われた。城の扉が開かれ、中へ入った。白の中ではせっせと侍女やら侍従などが働いていた。

「準備が整いましたら、王族方に挨拶していただきます。」

執事はそう言ってどこかへ行ってしまった。

「お部屋へご案内致します。」

メイドの行く背中をエミリーはただただついて行った。

「たくさんの方が働いていますね。」

「私に敬語はおやめ下さい。」

メイドが笑って言った。

「あ…ごめんなさい。あの、王族ってどれぐらいいるの?」

「王族と言っても陛下の血筋がある御家族だけですよ。」

エミリーはそれを聞きすこし安堵した。

「あ…あなた、名前は?」

「私はフィニーと言います。お嬢様の身の回りのお手伝いをさせていただきます。」

明るい声でフィニーが言った。

「いくつ?」

エミリーが首を傾げた。

「18です!」

「私より年上か。私は15」

「そうだったんですね。それにしてもエルフとのハーフということもあってとても綺麗な容姿をしてらっしゃいますね」

「そうかな」

「そうですよ!」

そう言ってからフィニーは大きなドアの前で足を止めた。

「お部屋はこちらでございます。」

その部屋の前にはフィニーとエミリーを待っていたかのように侍女が立っていた。

「この子は侍女のリリです。私と一緒にお嬢様のお手伝いをさせていただきます」

そしてドアを開けた。部屋はとても広く、窓がひとつ着いていた。ベッドも大きく、勉強机も置いてあった。

「大きな部屋」

そしてエミリーが1番目を引いたのは山のように置いてあるプレゼントであった。

「このプレゼントは誰から?」

「陛下からです!」

フィニーが嬉しそうにしていた。

「なんだか印象が違うな。もっと怖い人かと思ってた。」

「とっても怖いですよ、でもとっても優しいです!」

フィニーは自信満々であった。

「そうなんだ。陛下には会ったことが無いから、どんな人か全く分からないの」

エミリーはベッドの上に座った。

「そうですね。陛下はあまり顔をお出しになりませんから。でもすっごくイケメンですよ!メイドの中でも有名なんです!」

「イケメンってどんな男性を指すのか私よく分からないの。周りは人が住んでなかったし、街にも連れていったことがほとんどないから」

エミリーはベッドに腕を広げて寝転がった。

「そうなんですね。あ!お嬢様、お着替えなさりましょう。ドレスルームはこちらです。」

フィニーは部屋の一角にある扉を開けた。エミリーはベッドから起き上がり、中を覗くと、たくさんのドレスが入っていた。

「この中から選ぶの大変そう」

「大丈夫です!私達がお嬢様に似合うものを選ばせていただきます!」

リリはドレスルームに入り、フィニーはポケットから採寸用の巻尺を取り出した。

「失礼します」

巻尺をエミリーの腹部に一まきした。

「とってもウエスト細いですね」

「そう?」

「身長約165cm、ウエスト61cmです!」

ドレスルームにいるリリにフィニーが言った。するとドレスをいくつか持ってきた。出てきたのは青色のドレスであった。

「こちらはいかがでしょう。お嬢様の目の色とも合います」

リリがエミリーにドレスを見せた。

「とても綺麗な青ね。気に入った」

「ではこちらで」





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