第18話 ランチタイム

さんさんと日が照る中、真祐の提案で外で昼食をとることになった2人は中庭に来ていた。

先程のこともあってか、彼はあまり教室にいたくないらしい。

「あれ、神野かみのとなゆくんがここにくるなんて珍しいね?」

「こんにちは、今日は真祐が中庭で食べようて言ったから来たんだ。」

「げっ」

「ちょっと!なんなのその顔は!」

彼らがどこか場所が空いていないか探していると、見慣れた声が聞こえそちらに目線を向ける。

すると、結愛と花凜が涼しげな木陰の近くのベンチに座ってお弁当を食べ始める頃だった。

真祐が結愛を見るなり声を漏らせば、彼女もその表情をみては頬を膨らませ怒る。

「どうせクラスの女子の嫌がることとかしたんじゃない?」

「は?んなことしてねぇよ!」

十和が2人をなだめるも言い争いが続く為、相変わらず関係は良好ではないようだ。

「僕たちは先にお昼食べちゃおうか。」

「うん。」

これはどうにもできないと察したのか、彼は空いた横のベンチに座ると自身の弁当箱を開けながら花凜に話す。

「でも神野くん、ほんとに何かしちゃったの?」

「あー実は…」

彼女は相手の言葉に頷くも、真祐が焦っているように見えたのか不思議そうに彼へ訊ねる。

十和は結愛に聞こえないようにこっそり耳打ちすれば、姫海さんには内緒だからねと付け加えた。

花凜は彼を意識しているせいか、聞きながら顔はみるみる真っ赤になっていく。

「あれ、宮森さん顔赤いけど大丈夫?」

「え、だ大丈夫だよ!」

話し終えてから彼女の表情に気づいたのか、十和が心配そうに顔を覗き込むと花凜は慌てたように返事をする。

そして彼に心の内がバレないように、それよりも早く食べようと相手に伝えればいただきますと言ってお弁当を食べ始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る