第15話 実は
「ほら、そろそろ帰るぞ。」
結愛と二人残された真祐は、泣き続ける相手にどう対応していいか分からず声をかける。
前にも似たような状況に出くわしたことがあるが、どうにも慣れないのだ。
少し待っても返事がないので、自身も彼女と同じようにしゃがみ込むとおもむろに結愛が口を開いた。
俯いていた顔をあげ、不貞腐れたように言葉を投げかける。
「どうせアンタも変だって思ってるんでしょ。」
「んなことねぇよ。」
「嘘だ!同情しなくていいから。」
そして彼の返答を聞けば納得がいかないのか、急に立ち上がると相手へ強く言い放つ。
「同情じゃねぇって。なんつーか…俺の両親は母親2人だから。」
「え…?」
その発言に対し真祐は少し話すのを躊躇うも、自身の両親が同性愛者だと伝える。
カミングアウトするには勇気のいることだが、相手が結愛だから話すことが出来たのかもしれない。
「確かにお前の気持ちは理解できないかもしれねぇけど、俺も昔父親がいないのは変だとか母親2人なんておかしいって散々言われてきたからさ。」
「そうだったんだ…ごめん。」
結愛は彼の話を黙って聞き終えると、知らずに強く言ってしまったことを謝罪した。
いつの間にか彼女の涙も枯れ、落ち着いたようだ。
まさか真祐にこんな過去があるとは思ってもみなかったのだろう。
「落ち着いたなら帰ろーぜ。」
「ありがと。でもごめん、今日は1人で帰りたい。」
彼は結愛が普段通りになったのを見れば、肩の荷が降りたようにほっと息を吐く。
そして花凜と十和に頼まれていたため、送って行こうと声をかけるも彼女はお礼を言って断った。
振られてしまったことがあり、しばらく1人になりたいのかもしれない。
真祐もその気持ちを汲んでか、それ以上は追求せずそれぞれ別れて帰路につく。
2人が帰る頃にはすでにオレンジ色の夕日は沈み始めていた。
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