【書籍化・コミカライズ決定】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜
第48話 ローガン様とジュエリーショップ
第48話 ローガン様とジュエリーショップ
「はわあああああああああ…………」
ローガンに手を引かれて入店した宝石店。
目の前に広がる光景に、アメリアは感嘆の声を漏らした。
「さっきも見たようなリアクションだな」
「だってだって……どこもかしらもキラキラですよ……!?」
高級感を意識して白を基調とした店内は、宝石を加工した指輪やペンダント、ブレスレットが余裕ある間隔で並べられている。
アメリア以外のお客さんは皆、見たことのないようなドレスや装飾を身につけていた。
落ち着きのあるセレブ御用達の一店、といった雰囲気であった。
「このブランドは……確かに有名なものであるな」
「ご存知で?」
「ああ。以前、懐中時計を見繕って貰った際、ここのブランドを紹介された記憶がある」
「へええ、そうなのですね」
アメリアは知る由もなかったが、入店したこの店は王都の中でも歴史のある、トップクラスの高級店であった。
ジュエリーショップなど足を踏み入れたことのないアメリアには、この店がどのくらいのランクに位置するかわからない。
どの商品もすごく高そう、というふわりとした感覚のみである。
一方ローガンに至っては元々ブランド物にさほど興味がないし、ジュエリーの一つや二つの値段を気にするような身分でもないため、この店に対してこれといった感想は持っていない。
キラキラとした店内を前にしてジュエリーのように目を輝かせるアメリアの方が興味の対象であった。
「俺のことは気にせず、好きなように見て回ってきていいぞ」
うずうずと身体を揺らすアメリアに、ローガンが言う。
「あ、ありがとうございます! では、お言葉に甘えて……」
どこか恐る恐るといった感じで店内を歩き始めるアメリアだったが、すぐに足取りが軽くなった。
輝かしいゴールドのダイヤの指輪に「はわああ……」となったり、翡翠色のネックレスにうっとりしたり、握り拳大のダイヤに「!?」となったり。
どれもモノを見た後に値札を目にしてビックリ仰天するまでがセットであった。
親指と人差し指で挟めるくらいの小さなダイヤひとつで、庶民が一年暮らせるような値段なぞザラだ。
元々自然の産物に目がないアメリアは、今まで見たことのないジュエリー類とお値段の数々に種々様々な反応を見せた。
その様子を、ローガンは時たま頷きながら眺めている。
「とても可愛らしいお嬢様ですね」
勘定場にいた店主が、いつの間にかローガンの隣に来て言う。
そのコメントには反応せず、ローガンは尋ねる。
「彼女に似合う品は、何がある? あまり派手じゃないものが良い」
「そう、ですね……。派手じゃないものだと、指輪やイヤリングなどでしょうか? ちょうど、なかなか市場に出回らないアメジライトの一点ものがございます。あと、お嬢様はとてもお美しい赤髪をしてらっしゃるので……」
一通り説明を聞いた後、ローガンは「わかった、ありがとう」と礼を口にする。
店主は微笑み「ごゆっくり」と恭しく礼をして勘定場に戻って行った。
ちょうどそのタイミングで、アメリアがとことこと戻ってくる。
「楽しんでいるか?」
「はい、とっても! どれも綺麗で、可愛くて、素敵としか言いようがありません」
「良いことだ。何か、気になるものは見つかったか?」
「うーーーん……正直どれもいいなー、いいなーって思って、甲乙つけ難いのですが……」
今思い出してもうっとり、といった様子でアメリアは言う。
「すごくいいな、と思ったものはありました」
「ほう、どれだ?」
「こちらです!」
アメリアの後ろを、ローガンはゆっくりと着いていった。
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